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燃える鹿児島・加速する知事選候補者レース

2019年11月20日 08:35

20120702_h01-01t.jpg 来年夏に予定される鹿児島県知事選挙を巡り、関係者の駆け引きが激化している。
 現職の三反園訓知事は先月初旬、県選出国会議員に再選への意欲を示したとされ、出馬は決定的。対抗馬に、2016年の選挙で敗れた伊藤祐一郎前知事や国会議員など複数の名前が取り沙汰される状況となっており、本人の意向を無視した足の引っ張り合いまで始まっている。
 
■三反園の不人気
 反原発派を騙して知事の座を手中にした三反園氏の評判は、決して良いものではない。知事就任後、「原発停止」や「指宿スカイラインの無料化」といった主要な公約を反故にし、自分本位の県政運営を続けてきたのだから当然だろう。

 ラグビーワールドカップに国内が沸いた10月には、裏ルートで無償のチケットを入手し、準々決勝の日本対南アフリカ戦を観戦していたことが判明。表面上は“公務”とされているが、実態は「個人的な娯楽」(県関係者)だったとみられている。

 気に入らない会合を直前にドタキャンすることもしばしば、弱い立場の相手を怒鳴りちらし、責任を部下に押し付ける知事の姑息な姿勢に「早く辞めてほしい」「次の知事選で落選させるのが県のためだ」などと県庁内部から怨嗟の声が上がる始末だ。「歴代最低の県知事」(自民党県議)との評に、うなずく県民は少なくない。
 
■右往左往 
 三反園県政の実態を知る県関係者の危機感は募るばかり。来年の知事選における対抗馬の擁立に向けて、それぞれの思惑が交錯する。同県はよほど人材が豊富らしく、これまで噂になった名前を思い出すのも大変だ。伊藤祐一郎前知事、金子万寿夫衆議院議員、森博幸鹿児島市長、宇都隆史参議院議員、経済産業省の官僚S氏、総務省の官僚A氏……。いずれも本人の意思が明確に示されぬまま、周辺の動きだけが加速する。

 そうした中、関係者が注視しているのが県政界最大の実力者である森山裕国会対策委員長の動向である。自民党県連の代表者でもある森山氏が、誰を担ぐかで流れが決まるとみられているからだ。ただし、同氏は口が堅く、だんまりを決め込んだまま。秘書を務める長女の発言内容に、皆が右往左往する状況なのだという。面目丸つぶれの薩摩隼人だが、現状を冷ややかな目で見つめる関係者もいる。ある経済人の話。
「実力者の娘だか何だが知らないが、秘書が県知事選に口出しするのは僭越というものだ。森山代議士本人の言葉で事が動くのならまだいいが、現状はそうなっていない。森山さんは寝業師。わざと娘にしゃべらせているのかもしれないが、褒められた話ではない。
 森山さんは、まず県議団で知事選対応策をまとめるよう話しているが、実際は自分がキングメーカーだと自認している。おそらく意中の人物がいるはずだ。つい最近、霞が関の役所に手を突っ込んで、鹿児島出身の有力官僚が知事選に出ないように圧力をかけたのも思惑あってのこと。ただ、森山さんの選択肢の中に伊藤前知事は入っていない。それだけは確かだ」

 森山国対委員長が気にしている霞が関官僚とは、三反園知事が自分の対抗馬として意識している人物だ。何度も物議を醸してきた知事の会合ドタキャンは、その霞が関官僚の出席している会合に限ってのこと。報道関係者も、両者の動きを見守っている状況だという。

 滑稽なのは、正式な立候補表明もしていないその霞が関官僚の周辺に、出馬断念を工作する連中がいることだ。「○○に出馬を思いとどまるよう説得してくれ」「出馬しても無駄だと話せ」――。担ぎたい人物がいて、反三反園票が割れないようにとの身勝手な思いからなのだろうが、動きのない相手を怖がって右往左往するなど、みっともない話である。

 「桜を見る会」を巡る問題で追及される安倍晋三首相同様、土・日の休みを返上し、税金を使った選挙運動に精を出す三反園知事。「知事様が来てくれた」と喜ぶ県民もいるというが、鹿児島市内など情報に敏感な地域の有権者はペテン師知事に冷淡だ。取材で利用するタクシーの運転手さんに聞くと、10人中8人程度は「1期で終わりでしょう」「原発で嘘をついた」「県民を騙した」「ただでラグビー観戦はいけんな」などと的確な県知事評を披露してくれる。こうした三反園批判票の受け皿になるのは誰か――。知事選の候補者レースが、鹿児島を熱くしそうだ。
   
 
 



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