原中誠志福岡県議会副議長を巡って噴き出した政治資金疑惑が、拡大の一途をたどる展開となっている。
当初HUNTERが追及したのは、同氏の資金管理団体「原中誠志後援会」による献金偽装。原中氏側が、自治労福岡県本部から受けた献金を「政治資金パーティー」の収入と偽っていた疑いがあることを報じたが、この取材過程で実際に開かれた4件もの政治資金パーティーの収入が隠されていたことが判明。次から次へと新たな疑問が浮上する事態となった。今度は……。
■「差額買収」の疑いも
原中後援会の平成27年と28年分の政治資金収支報告書には、それぞ2回、計4回の政治資金パーティー「原中まさし県政報告会」における収入が未記載となっていた。下の表に実際の収入と支出についてまとめたが、不可解なことにいずれの県政報告会も支出が収入を上回っており、原中氏側が差額を支払った形だ。
政治家側が主催する催し物で支出が収入を大きく上回れば、差額を買収したとして公職選挙法違反に問われる場合がある。いわゆる「差額買収」といわれるもので、「桜を見る会」を巡る問題で、安倍首相側にかかった嫌疑がこれだ。桜を見る会の前日に、都内のホテルで行われた夕食会費用の半分以上を、安倍首相側が支払っていたのではないかと疑われている。
原中氏の場合、差額が少ないためただちに買収とは言い切れないが、それは原中氏がHUNTERに回答した県政報告会の収入額に間違いがなければの話。原中後援会の収支報告書が、まったく信用できないものであることは、献金偽装や収入未記載があったことでも明らかで、追及されて出てきた数字に信憑性はない。隠されていた県政報告会の実際の収入額はもっと少なく、じつは上掲の表以上の差額があったのではないかという疑念は消えない。
ちなみに、政治資金規正法が定義する「政治資金パーティー」とは、《対価を徴収して行われる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動に関し支出することとされているもの》。収支報告書に未記載となっていた原中後援会の県政報告会は、「収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額」が赤字で、政治資金パーティーの体をなしていなかったと言わざるを得ない。
■政務活動費からも県政報告会の費用を支出
原中氏の政治活動の軸が、出身母体である労働組合「自治労福岡県本部」に置かれているのは確かだ。自治労の本拠地である自治労会館で“架空”の疑いが濃い「県政報告会」を開くたびに、100万、150万という大金をもらっていたことでも分かる通り、同氏の金づるは自治労。当然、自治労に対しては、細かい対応を行っていた。
原中氏が県議会に提出した「政務活動費」の収支報告及び領収書を確認したところ、同氏は平成27年2月19日、9月3日、平成28年2月24日の計3回、福岡自治労会館で県政報告会を開き、会場費としてそれぞれ5,000円、18,000円、5,000円を払っていた。両年に自治労会館で開かれたとされる3回の有料県政報告会の他に、別の3回の県政報告会が行われていたということだ。偽装献金の背景に、自治労べったりの政治活動がある。
■辞職勧告
原中氏は県議会副議長という要職にあり、さらには国民民主党福岡県連の幹事長という役職にも就いている。いわば他の地方議員の模範となるべき立場だ。その彼が、“自治労の建物内で自治労向けの政治資金パーティーを行い、収入のすべてを自治労からのもらった”と主張する。こんなことがまかり通れば、誰もが禁止された企業団体献金を受けられることになるのだが、どうやら原中氏はその理屈が理解できていない。つまりは政治家失格。政治資金収支報告書のデタラメぶりが明らかになった以上、副議長はもちろん、県会議員も辞職すべきである。