公設秘書が地元の有権者に香典を渡したとして、公職選挙法違反(買収)の疑いが指摘された菅原一秀経済産業大臣が辞任。その6日後には、今夏の参院選広島選挙区で初当選した河合案里氏の陣営が、ウグイス嬢に法定額を超える人件費を支払っていたことが発覚し、案里氏の夫で衆議院議員の河井克行氏が法務大臣を辞めた。
第4次安倍再改造内閣が発足して2か月も経たぬ中での、事実上の更迭劇。いずれのケースも、週刊誌に犯罪行為を告発したのは「秘書」だった。
■2件の事件、告発したのは「秘書」
河井陣営の買収疑惑を報じた週刊誌に、2枚に分けられたウグイス嬢への領収書や裏帳簿の写真が掲載されているところを見ると、河井夫妻とスタッフの関係が崩壊していたことは明らか。河井氏の事務所を辞めた秘書らが、仕えた議員の犯罪行為を告発したということだろう。
菅原前経産相の買収行為を初めに告発したのも、秘書だったことが明らかとなっている。立件には至らなかったが、もともとの疑惑はメロンやカニを支持者に配ったというもの。この件は時効になっていたことでうやむやになったが、公設秘書が地元の有権者に香典を渡す場面を撮影され、公選法違反が指摘されて大臣を辞任した。
菅原氏と河井氏には、共通項が多い。いずれも菅義偉官房長官の側近だが、何かと黒い噂が囁かれてきた政治家でもある。事務所における秘書の離職率が高いことも、共通していた。結果として、犯罪行為をやらせた秘書に、手痛いしっぺ返しを受けたという顛末も同じだ。古参の議員秘書は、こう嘆く。
「議員と秘書の関係が変わったということでしょう。師弟あるいは親分・子分の関係から、雇用主と社員といった具合に変わってしまった。もちろん、原因は政治家のレベル低下。モラルも能力も低いから、尊敬されることがない。平気で犯罪行為を強要してくるようなバカ殿ばかりだから、秘書にバカにされる。結果、秘書に罪状を明かされ転落するという構図だ。情けない」
■親分・子分からドライな関係に
たしかに、昔の政治家と秘書は、固い絆で結ばれていたものだ。大方の秘書は、仕える議員のことを「おやじ」と呼んだ。しかし今はドライ。「このハゲー!」で有名になった豊田真由子元衆院議員や秘書に対する暴行・傷害の容疑で書類送検された石崎徹衆院議員のような人間性に問題がある議員が増えたため、信頼関係が作れないのだという。政界全体の質が落ちてきたということだ。
前術した通り、河井氏や菅原氏の事務所は、以前から「秘書が頻繁に変わる」と言われており、ブラックな職場として知られていた。原因が議員本人にあるのは言うまでもない。とくに河井氏については、地元である岡山のタクシー会社も被害に遭っていたらしく、同社の役員は「うちは河井事務所から配車の要請があっても、一切お断りしています。河井先生が乗務員の運転席を蹴るわ、人を人とも思わないような暴言を吐くからです。『もっと速く走れ!』と法定速度以上を出すよう要求され、危うくスピード違反に加担させられそうになった乗務員もいました。もうコリゴリですわ」と表情を硬くする。身内の秘書だけでなく、タクシーの運転手さんまで使用人扱いしていたということ。政治家である前に、人として最低というべきだろう。
秘書との信頼関係が崩壊したことで墓穴を掘った二人の議員――。政治家の劣化が、加速するばかりだ。