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法相辞任で注目される「ウグイス嬢」の報酬

2019年11月 5日 09:40

eb44786e3bafd17f75a06c2b521b3e3d57f91853-thumb-210x137-28076---2.jpg 7月の参院選で初当選した河井案里氏(広島選挙区)の陣営に、公職選挙法で定められた上限を超える報酬を運動員に支払ったとされる疑惑が浮上、案里氏の夫である河井克行衆院議員が法務大臣を辞任した。
 公職選挙法が定めた選挙運動に関する報酬の上限額は、事務員や労務者が1万円で車上運動員(いわゆるウグイス嬢など)は1万5千円。河井陣営はウグイス嬢に3万円の日当を支払っていたとされ、買収が疑われる事態となっている。
 3万円の日当と聞いて多くの有権者は驚いたことだろうが、永田町では「河井陣営は運が悪かった」程度の話。ウグイス嬢への報酬に関する選挙の実態について、関係者に話を聞いた。

■1万5千円を超えると「買収」だが……
 公選法が、選挙に関する人件費の支出先として認めているのは、事前に選挙管理委員会に届けが出された事務員と車上運動員、手話通訳など。他の選挙運動員に報酬を支払えば「買収」とみなされることになる。

 同じく買収となるのが、上限額を超えた報酬だ。人件費の上限額は仕事の内容によって分かれており、ウグイス嬢がもらえるのは1万5千円まで。過去には、運動員に上限を超える報酬を支払ったとして、候補者本人や選対責任者、出納責任者などが逮捕・起訴されたケースが多数ある。候補者本人が直接関わっていない場合でも、出納責任者や総括責任者に「連座制」が適用されれば、当選自体が無効となる。

 河井前法相は「今回の一件は妻も私も全くあずかり知らない」と記者団に話しているが、国会関係者でそれを信じる人はいない。立憲民主党や国民民主党は、主要閣僚の相次ぐ交代に「内閣総辞職に値する異常事態だ」と気勢を上げているが、選挙の人件費について追及できるのは共産党と公明党だけだろう。下手をすれば、ブーメランになって我が身を傷つけることになりかねないからだ。

 「日当報酬1万5千円越え」を問題にしすぎると、野党側に跳ね返ってくるのは必定。この問題を長引かせたくないと考えている議員が与野党ともに大勢いる。

■2万、3万当たり前 「時短」で対応する陣営も
 法相辞任のニュースが流れた日、某国会議員の妻が「今どき1万5千円でウグイスやってくれる人なんていないわよ」と語気を強めたという。東京都では10月から最低時給が1,013円になったが、ウグイス嬢の仕事は過酷。その程度の時給で働くプロのウグイスは、皆無と言ってもよいだろう。朝の8時から午後8時までマイクを持って叫び続けて1万5千円では、受けてくれるウグイスがいないのが現実なのだ。「日当2万、3万は当たり前」と断言するウグイス嬢もいる。

 九州地方のある県の選挙関係者は、こう話す。
「野党議員の陣営でも、法の上限を超える人件費を支払っている陣営は少なくない。1日フルに選挙カーに乗って、1万5千円で済むウグイスはめったにいない。何らかの形で、それ以上のカネが出ているのは実情で、そうでない場合は、時短で納得してもらっている」

 「時短」については、別の選挙関係者がこう解説する。
「選挙運動ができるのは、朝8時から夜8時までの12時間。これに対し、日当は1万5千円までとなっています。国政選挙では何人ものウグイスが必要になりますが、この額ではウグイスが集まらない。かつては2万、3万が当たり前だったんですが、ある陣営の違反行為が問題になってから、候補者陣営とウグイス側の両方が納得できる形の支払い方法が定着しました。半日で1万5千円――つまり、働く時間を短くして、一人に対する支払額を抑えているんです。ウグイスにとっては、いい商売ですが、候補者側は残りの6時間を選挙カーに乗ったウグイスに1万5千円を払わなくちゃいけません。出費自体は減らないということですね。それでも違法ではないわけです」

 ウグイスへの報酬が高止まりしているのには、別の理由もあるという。
「国政選挙になってウグイスを手配する場合、結婚式やイベントの司会などをやる、いわゆるMCが登録している事務所などに頼むか、ウグイス専門の手配役に頼むかのどちらか。そうなると、事務所や手配役の人間が報酬の何割かを抜くことになります。つまり、1万5千円に、なにがしかがプラスされるというわけです。その分は、ばれないように別の形で支払われます。企画料とか何とか……。もちろん、経験が浅いウグイスさんへの報酬は低くなりますが、支払われる日当は同じで1万5千円。MCの所属事務所や手配役が、その分多くをはねるんです。事務所は1万5千円払ったのに、ウグイス本人は8千円しかもらっていなかった、なんてケースはざらですから。ウグイスの手配を頼んでる限り、日当は安くならないでしょうね」

 法律順守にこだわる陣営も存在するが、数は少ないのが実情。河井陣営のように、領収書を何枚かに分けたり、偽りの日にちを記載して上限を超える報酬を渡している陣営は少なくないという。表に出てこないのは、違法な報酬を支払った方も、もらった方も罰せられるからに他ならない。




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