政府が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(タッチアンドゴー)に供することを決めている「馬毛島」(鹿児島県西之表市)の買収交渉が、よくやくまとまる方向となった。
関係者の話によれば、島の大半を所有する「タストン・エアポート」と防衛省との間で合意に達した契約金額は160億円。島の土地のうち、細かく区分されている部分についての整理などに時間がかかっているものの、早ければ今月中にも「仮契約」を結ぶ見通しだという。
■タストン社と防衛省、攻防に終止符
馬毛島は、種子島の西方約12㎞に浮かぶ周囲16.5km(南北4.50km、東西:3.03km)、面積820ヘクタール(東京ドーム175個分)の島。鹿児島出身の立石勲氏が創業した立石建設のグループ企業「タストン・エアポート」(旧社名:馬毛島開発)が大半の土地を所有し、従業員を常駐させ滑走路を整備するなどして長年、維持管理を行ってきていた。
馬上島の基地化が米国との約束事項になったのは2011年6月。日米安全保障委員会(2プラス2)における共同文書に、硫黄島で行っている陸上離着陸訓練の移転先として明記されたことから、同島は「国防の島」として注目を集める存在となっていく。
こうした中、タストン社と防衛省は2016年11月に、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意。あとは金額の詰めを待つだけの状態となっていたが、現在滑走路となっている部分の造成費やこれまでの維持管理にかかった経費を上乗せして4百億円超の契約金額を提示したタストン社と、44億6,000万円を主張する防衛省側との溝が埋まらず、両者の駆け引きが続く状況となっていた。
事を急ぐ必要があった防衛省は、タストン社の債権者を煽って破産申し立てをさせ、同社を破綻に追い込もうと画策したが失敗。今年に入って別の債権者が強引にタストンの役員を変更して防衛省との仮契約にこぎつけたが、追放された格好となっていた立石勲・立石建設会長らが反撃に転じ、代表に復帰して契約を白紙に戻す事態となっていた。その後もゴタゴタが続いたが、関係者の努力もあって先月から打開に向けた動きが加速していた。
関係者によれば、タストン社と防衛省との間で合意に達した契約金額は160億円。いったん仮契約を結び、島の土地に設定された抵当権などを抹消したのち、本契約になる予定だという。抵当権抹消に要する費用は、いったん政府が貸し付ける形になるものとみられている。