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五輪マラソン札幌開催でほくそ笑む北海道知事とカジノ関係者 

2019年11月 1日 08:35

publicdomainq-0023706sfdpuh.jpg IOC(国際オリンピック委員会)が、マラソンと競歩の会場を札幌に変更する方針を示したことで大揺れとなった東京オリンピック。小池百合子都知事をはじめとする東京都の関係者が猛反発する一方で、北海道開催にほくそ笑む人たちがいる。カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)を北海道に誘致しようとしている鈴木直道北海道知事や橋本聖子五輪担当相、菅義偉官房長官らである。
 五輪の開催地変更と結び付く“カジノ利権”の現状を追った。

■加速するカジノ誘致への動き
 28日、苫小牧市議会は臨時議会で、自民党系の会派が提出したカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の市内誘致を推進する決議案を、賛成多数で可決した。賛成19、反対8。反対意見がある中、強引に決議を行った格好だ。

 この動きを誘導しているとみられているのは、鈴木知事と知事の後ろ盾といわれる菅官房長官。道は高橋はるみ前知事時代の今年4月、苫小牧市をIR誘致の優先候補地とする基本方針を公表していたが、同月の知事選で高橋氏の後継として出馬し初当選した鈴木前夕張市長は、「誘致に挑戦するかしないかは年内に判断する」としながら、水面下でIR誘致への動きを加速させているという。

 知事を支援するかのような動きは、他でも。北海道経済連合会などの道内経済8団体は来月5日、北海道議会の自民系議員で構成するIRの検討会議に対し、誘致表明に向けた取り組みを推進するよう要望する予定となっている。

 現在、IR誘致を表明しているのは大阪、和歌山、長崎、横浜の4都市。北海道は出遅れていたが、マラソン開催を契機に一気に先頭に躍り出ようという算段だ。IR利権の中心にいると目されているのは菅官房長官。その菅氏が育ててきた鈴木知事は、拙速な誘致表明を避けながら、周到に着地点を探っている状況だ。橋本五輪担当相は、以前からカジノ誘致推進派として知られている人物である。

 IR事業者を選定するのは苫小牧市だが、2018年1月以降、同市にはカジノオペレーター大手の「ハードロック」「モヒガン・ゲーミング・&・エンターテインメント」「クレアベストニームベンチャーズ」「ラッシュ・ストリート・ジャパン」などの4社が、事務所を開設している。

 中でもハードロックの日本法人であるハードロック・ジャパンは、今年4月に苫小牧支店を開設。5月には、時事通信の取材に答えたハードロック・インターナショナルのジェームズ・アレン会長が、苫小牧市のIR計画に、道庁が決めた苫小牧市IRの投資規模である2,800~3,800億円をはるかに上回る50億ドル(約5,500億円)を投じる考えを明らかにしている。(*下の画像は、同社の公表データより。左が“ギター型ホテル”を核にした苫小牧IRの予想図)

ハードロック.png 95080.jpg

■政治家を動かす「思惑と利権」
 カジノ利権に絡む絶好の機会と捉えたのか、北海道へのIR誘致に熱心とされてきた橋本聖子五輪担当相は、マラソン開催地を札幌にするというIOC(国際オリンピック委員会)の唐突な決定に、異議を唱えるどころか即座に賛同してみせた。橋本氏の親分である東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長も、IOCの札幌開催案に賛成だ。

 前述した通り、鈴木知事を引き立ててきたのが菅官房長官。関係者によれば、その“鈴木―菅ライン”で描いているのが、五輪マラソンと競歩の開催で「北海道」を売り込み、IR=カジノ誘致を有利に進めようというシナリオなのだという。五輪のマラソン開催地変更の裏に、菅官房長官、鈴木北海道知事、橋本五輪相それぞれの「思惑」と「利権」が横たわっている。



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