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受験生を愚弄する櫻井よしこ氏の「身の丈発言」擁護論 

2019年11月13日 08:55

DSCN1252--2.jpg 萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言で、2020年度から始まる予定だった大学入学共通テストへの民間英語試験導入が見送られることになった。
 萩生田氏の主張は“経済格差”と“地域格差”を助長し、「貧乏人や田舎者はそれなりの暮らしをしろ」と言ったも同然のもの。大臣辞任が当然の暴言だったが、同氏を擁護するだけでなく褒めたたえる言説まであることに驚いた。萩生田氏に助け船を出したのは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と田崎史郎氏。ともに安倍晋三首相のシンパで、右に傾いた方々である。

■田崎史郎氏の幼稚な萩生田擁護論
 大学入試の英語に民間試験を導入する方針が見送られることになったきっかけは、政府側がどう否定しようが萩生田氏の「身の丈」発言だ。受験生の間で高まっていた不満や不信が、文科大臣の一言で爆発したのは確かだろう。

 差別や格差をなくすことは政治家の重要な使命のはずだが、何かと黒い噂の絶えない安倍の側近代議士は、「身の丈」という言葉を使って田舎と貧困を見下す姿勢を露わにした。どうみても庇いようのない暴言なのに、こんな最低の議員を擁護する人がいる。

 政権の犬と呼ばれる田崎史郎氏の文科相擁護は、極めて幼稚なものだった。テレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』にコメンテーターとして出演していた田崎氏は、「身の丈」発言があったからこそ英語民間試験導入の問題点が浮き彫りになったのであり、それは萩生田氏の功績だと言い張ったのである。こじつけもここまでになると、論評に値しない。

■暴走する櫻井コラム
 田崎氏の萩生田擁護をはるかに超える暴論を展開したのは、「週刊新潮」11月14日号に掲載された櫻井よしこ氏のコラムだった。櫻井氏は、あろうことか萩生田氏を褒め称えたのである。(*下が新潮の誌面)

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 冒頭は、右派の論客にお決まりの朝日新聞批判だ。同紙のコラム「天声人語」が、萩生田氏の身の丈発言を「グロテスク」という語を用いて批判したことを取り上げ、「剥き出しの敵意」と表現。次いで、こう述べている。

 改めて萩生田氏の「身の丈」発言の全文を読んだ。一体この発言の何が問題なのか、わからない

 つまり櫻井氏は、この萩生田氏の身の丈発言が、何も悪くないというのだ。正気を疑わざるを得ない。

 ここで、民放のテレビ番組における萩生田発言の中で、問題になった箇所を振り返っておきたい。“住む場所や家庭の経済状況などによって不公平が生じないか”と聞かれ、こう答えていた。
裕福な家庭の子が回数受けて、ウォーミングアップができるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれない。そこは、自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば。できるだけ近くに会場を作れるように今、業者や団体の皆さんにはお願いしています
 
 櫻井氏の理屈はこうだ。萩生田氏は“平等のチャンスを与えられる社会の構築を目指す大人”(櫻井氏)として、「できるだけ近くに会場を作れるように今、業者や団体の皆さんにお願い」しており、さらにはこの後に「できるだけ負担がないようにいろいろ知恵をだしていきたい」「離島なんかはもうすでに予算措置しました」と明言しているから、大臣を“上から目線だと非難するのは間違い”なのだという。普段は冷静な櫻井氏が、熱くなりすぎて暴走したとしか思えない。

 萩生田氏が「近くに会場を作れるよう」と話していたのは確かだが、国内の僻地や離島は多すぎて、一体“どこの近くに”会場を作ると言っているのか全く分からない。この点が不明であるからこそ、離島・僻地の受験生や高校の校長会が新制度移行の延期を訴えているのだが、櫻井氏は、感情に走るあまり不都合な真実から目を背けている。

 英語試験のためにだけ離島や僻地に対する予算措置をしなければならない事態は、やはり歪んだ試験制度のせいであり、受験生やその親たちはもちろん国民の大多数から批判が起きるのは当然のことだろう。試験実施までのカウントダウンが始まっているのに、会場や受験料といった問題が積み残されている現状こそ問題なのであって、「業者や団体にお願い」したり、「知恵」を出したりしている場合ではなかろう。いかに櫻井氏がりきもうと、屁理屈で身の丈発言を正当化することはできない。

 そもそも、萩生田発言への批判は、テレビ番組の中における「身の丈に応じて試験を受けろ」という格差助長の態度を問題視されたからなのだ。録画された番組を通しで見たが、どう割り引いても萩生田発言はアウト。報道が、発言の一部を切り取って騒ぎ立てたわけではない。

■愛国者に共通する「無反省」
 櫻井氏は、無理な反論のあと、レベルの低い人情話を持ち出す。“恵まれない国民に対する(萩生田)氏の目線は決して「上から」でも「グロテスク」でもない。むしろ非常に心優しい。”(櫻井氏)と最大限萩生田氏を持ち上げ、彼が地盤・看板・鞄を持たない中から市議、都議、衆議院議員へと登り詰めてきたとしてその歩みを絶賛、最後は“萩生田氏には果敢に働き続けてほしい。”で稿を閉じていた。気持ちの悪い「贔屓の引き倒し」だが、朝日批判を装った櫻井氏のコラムは、身の丈発言に怒りをぶつけた多くの受験生とその親、そして国民を愚弄するものでしかない。
 
 “萩生田文科相は悪くない。悪いのは萩生田氏を非難する側だ”――この考え方は“日本は悪くなかった。従軍慰安婦も南京大虐殺もなかった。悪いのは韓国・中国だ”という安倍首相をはじめとする右派の歪んだ歴史観に通底している。憲法改正を叫ぶおかしな愛国者たちは、やっぱり「反省」という言葉を知らない。



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