「ラグビーの試合が見たい」と駄々をこねたバカ殿の面倒をみるために、普通なら手に入れることのできないチケットを裏ルートでもらい、事が露見するや隠蔽に走らされる――。鹿児島県職員のため息が聞こえてきそうな話だが、一番被害を被っているのは県民。バカ殿の私的な試合観戦を公務に仕立てたため、無駄な経費が血税で賄われていた。
三反園訓鹿児島県知事が不正としか思えない手口でチケットを入手し、今月20日に東京スタジアム(東京都調布市)で行われたラグビーワールドカップ準々決勝「日本対南アフリカ」の試合を観戦していた問題が波紋を広げている。
(右の写真は、元政府関係者のフェイスブック投稿より)
■県がすがる「ご招待」の実態
三反園知事が、県職員に命じて南アフリカ戦のチケットを入手させ、観戦していたことが分かった。チケット入手は完全な裏ルート。しかも、20万円近くするというチケットは「ただでもらった」(県関係者)ものだった(参照記事⇒「三反園鹿児島県知事 裏ルートチケットでラグビーW杯観戦」)。知事が試合を楽しんだのは特別な席で、決して一般席ではない。
21日午前、改めて県の担当課にチケット入手の経緯について確認を求めたところ、午後になって連絡してきた課長の答えは「ご招待です」。招待状でもあるのかと突っ込むと、「ありますよ」と断言する。どうやら、「ご招待だから問題ない」という筋書きらしい。だが、残念ながら、この言い訳は通用しない。
県の職員が、三反園知事から「チケットを準備しろ」という命令を受けたのは10月5日以降。すでに一般席が完売していた時期で、正規ルートでのチケット入手は不可能だったという。
困った職員らは、県の諮問組織「かごしま幸せプロジェクト委員会」で委員を務めている元政府関係者にチケット入手を依頼。元政府関係者は、W杯のスポンサーで鹿児島市内に営業所を構える東京の民間企業H社の代表を県に紹介し、県はH社の代表からチケット1枚を無償でもらっていた。
県が主張するように、H社側が、三反園氏を招待するという主旨のペーパーを添えてチケットを提供したのは確かだろう。だが、それは形だけのこと。きっかけが“知事のおねだり”だったのは、報じてきた通りだ。県側の「チケットが欲しい」という依頼があったのが事の始まりで、常識のある大人なら、H社の「ご招待」が儀礼上のものだと気付くはずだ。H社側は、自発的にチケットを提供したわけではない。「ご招待」とはつまり、“ただでもらった”ということなのである。
■飲食してはしゃいでいた知事
そもそも、知事であれ職員であれ、公務員が20万円近い額のプラチナチケットを無償でもらっていいはずがない。「鹿児島県職員倫理規程」は、利害関係者の費用負担による『飲食等の供応接待』や『ゴルフ、釣り、旅行、マージャン、スポーツ観戦その他これらに類する遊技等の接待又は招待』禁じており、職員なら一発アウトのケースなのだ。
「知事は職員ではない」という強弁が聞こえてきそうだが、規範になるべき県政トップが、堂々とこの規定を破っていては示しがつくまい。まずいことに、問題のチケットは飲食接待付きのセレブ向け商品なのだ。
じつは、ここに来て知事がもらったチケットの種類と購入価格が分かってきた。下は、日本対南アフリカ戦以外の準々決勝の、知事がもらったものと同じ観戦チケット。「170,000円から(消費税抜き))」とある。
知事がもらったチケットは、「ホスピタリティパッケージ」という特別なものだった。スポーツホスピタリティは欧米ではよく知られている観戦方法で、観戦チケットの他に専用空間での試合前後の飲食、エンターテインメントなどが提供される商品なのだという。従って、価格も特別。知事は最低でも17万円(消費税抜き)はするセレブ向きのチケットを、ただでもらったということだ。
知事は、よほど嬉しかったらしく、飲酒に及んではしゃいでいた証拠が残っている。下は、知事のホスピタリティパッケージチケットを仲介した元政府関係者が、フェイスブックに投稿した写真。20日の試合観戦終了後、ホスピタリティーラウンジで談笑する鈴木大地スポーツ庁長官らとともに、赤ら顔の三反園知事が写り込んでいた。
「ご招待」(県側説明)であれ“おねだり”であれ、県知事ともあろうものが、ただで高額なチケットをもらい、はしゃいで飲酒までしていたというのだから呆れるしかない。まさにバカ殿の所業だろう。前代未聞の“事件”といえそうだが、問題はこれだけではない。
(以下、次稿)