鹿児島県の三反園訓知事が3日、永田町の議員会館で県選出国会議員を訪問。来年夏の知事選で再選を目指すことを明言し、事実上の協力要請を行っていたことが分かった。
一党一派に属さない「県民党」を掲げて初当選した知事が、県民ではなく自民党の組織力にすり寄った形。政策合意で反原発派を騙したペテン師知事は、県民を欺く変節を恥とも思っていない。
(右は2016年の知事選で、「県民党」を標榜して選挙運動を行う三反園陣営の写真。読者提供)
■自民党にすり寄る三反園氏
県政界関係者によれば、三反園知事は3日、「行財政折衝」と称して東京に出張。複数の自民党国会議員を訪問していた。
県職員を伴って訪れた議員への用件は豚コレラ対策予算などへの御礼挨拶だったが、一人で出向いた先の議員には再選出馬に向けての意思を示し、現状認識を語っていた。
知事はその中で、「自民党県議団のほとんどが私を支持している」「出水市の市長も私を応援する」などと具体的な支持の広がりを誇示。事実上の協力要請を行ったという。
反原発派との「政策合意」を反故にした政治姿勢や、知事選の支援団体「県民党」についての議会答弁で「存じあげない」と虚偽答弁を続けてきた三反園知事。前回知事選の支援者が次々に離反する状況で、自民党の組織力に頼るしかなくなったということだ。ただし、県会議員や県内の首長らの実際の動向は、知事の認識とはかけ離れている。
自民党県議団の中で公然と三反園支持で動いているのは議長の外薗勝蔵氏ら少数。同県議団所属38人のうち、三分の一程度が知事寄りで、残りは中立か「反三反園」だとされる。首長にしても、三反園氏を支援するとみられているのは、彼の出身地である指宿の市長くらいだ。
ある自民党関係者は、こう話す。
「前回の知事選で、自民党は伊藤さん(祐一郎・前知事)を『公認並み』という扱いで支援した。三反園知事は、共産党を含む反原発派と政策合意を結び伊藤さんを破った。自民党の議員なら筋を通して三反園と対峙すべきなのに、権力にすり寄って甘い汁を吸おうとする愚かな連中が少なからずいる。情けない。しかし、それは少数。わが党の県議団が、まとまって三反園支持にまわることは100%ない」
■問われる「公費出張」の実態
知事の東京出張の目的は、公式には「行財政折衝」。訪問先は霞が関の関係官庁になるはずだ。一方、県選出国会議員を訪れた目的が“折衝”ではなかったことは明らかで、むしろ知事選に向けた地ならしとみるのが普通だろう。公費出張を利用した政治活動だったとすれば、知事の行為は悪質なルール違反となる。
知事はこれまで、休庁日を使って県内視察を名目に各地を訪問、支持拡大に努めてきた。県内の公立高校を無理やり訪問し、貴重な授業時間を削らせて自分の話を聞かせるという愚行も重ねている。いずれも、公費による事実上の選挙運動だ。選挙に出るのは自由だが、公私の区別をつけることができない人間に、行政のトップを務める資格はあるまい。行財政折衝と称して公費出張し、国会議員に出馬の挨拶や支援要請を行うのは目的外の動きなのである。
■「変節」に怒りの声
周知の通り、三反園氏は2016年の知事選で反原発派と「政策合意」を結び、候補者一本化を実現させて初当選を果たした。熊本地震で川内原発の危険性に注目が集まっていた時期、さらには伊藤前知事の傲慢な姿勢に批判が出ていたこともあり、三反園票は自民党の組織力を上回った。
この時の選挙で三反園氏を支えたのは、手弁当で走り回った後援会関係者と反原発派。しかし選挙後、知事の座についた三反園氏は、後援会長をはじめとする主要な支援者たちを自ら追放し、反原発派との一切の連絡を絶った。人間として最低の行為を平然と行った三反園氏が接近したのは、自民党の県議団だった。
知事就任から1年も経たない時期の自民党県議団への説明の席で、知事は「再生エネルギーへの転換や原発に頼らない社会を目指す自分の考えは、自民党の方向性と同じ」と発言したのである。原発を重要なベースロード電源と位置付ける政府・自民党と同じ立場だということは、「本気で原発を止めるつもりなどない」と同義。ある三反園陣営の元幹部は、次のように憤る。
「初めから、当選したら自民党にすり寄るつもりだったんですよ。だから、必要のなくなった後援会の主要メンバーや反原発派を切り捨てた。いずれも自民党とは相容れない人たちばかり。じゃまだから、切ったんです。変節というより詐欺行為でしょう。人間としては最低の男ですが、今度は権力の座に就いたその最低の男に、自民党一部がすり寄っている。目的が利権であることは明らか。とくに総合体育館の整備計画などは、金のなる木なんでしょう。知事も議長も、熱心なようですが……」
前回知事選で「県民党」を自称した知事の、支援団体の名称も「県民党」。当時の三反園氏の名もなき支援者たちは、手弁当で県内を走り回り、自民党が担いだ現職の厚い壁を突き崩した。しかし知事は県民を裏切り、県議会では一貫して県民党を「存じあげない」と虚偽答弁を繰り返す。当然、県内各地で「反三反園」の火が燃え上がる寸前だ。もちろん自民党も、ペテン師に肩入れするほど落ちぶれてはいまい。