三反園訓鹿児島県知事が裏ルートでチケットを入手し、ラグビーワールドカップ準々決勝「日本対南アフリカ」の試合を観戦していた問題を巡り、県がチケットを斡旋した溝畑宏氏の特別顧問就任を非公表にしていたことが分かった。
溝畑氏の他に特別顧問が4人、参与が3人いるというが、一人の特別顧問を除いて、いずれも氏名さえ公表されていない。
溝畑氏については知事の人脈から選任されており、県関係者の間から「お友達」同士での便宜供与を疑う声が上がっている。
(*右の写真は、チケットを仲介した鹿児島県特別顧問・溝畑宏氏(左端)のフェイスブック投稿より)
■人知れず特別顧問5人、参与3人
県の担当課に確認したところ、鹿児島県が特別顧問に任命しているのは5人。いずれも非常勤で、月額報酬10万円が支給されている。
特別顧問を任命するようになったのは伊藤祐一郎前知事時代の2009年度で、前年の08年には「参与」を制度化していた。県の参与には現在、3人が就いているという。
県は17年に元総務相の増田寛也氏を地方創生担当の特別顧問に任命したことを公表したが、他の特別顧問については未公表で、県議会にも報告していなかった。
特別顧問や参与の顔ぶれを非公表としていることについて県は、「特別な理由はない」と説明。「尋ねられればお教えします」としている。
ある県議会関係者は、
「人件費の予算だけ承認させておいて、内容の報告はすっ飛ばしたということだ。議会軽視も甚だしい。特別顧問や参与には、県費から報酬が出ている。県は、どんな人が、どのような活動をしているのかについて県民に知らせる義務がある。『聞かれたら教える』なんていう態度は言語道断。そもそも、県議会も県民も、鹿児島県の顧問や参与とやらが何人いるのかさえ知らされていない。大分トリニータをぐちゃぐちゃにした人程度の認識しかなかった溝畑さんが、我が県の特別顧問になっていたなんて、少なくとも私は知らなかった。次の議会で、しっかりと追及させてもらう」
■チケット斡旋で表面化した溝畑特別顧問のお仕事ぶり
溝畑氏の特別顧問就任は今年4月。県の特別顧問としてどのような活躍をしてきたのか全く分からないが、ラグビーW杯のセレブ向けチケット斡旋という仕事をしたのは確かだ。同氏は、今月20日に行われた準々決勝「日本対南アフリカ戦」のチケット確保ができずに困っていた県に、県内に営業所を持つ東京の人材派遣業者を紹介。W杯のスポンサーだった業者は、飲食などの特別なサービスが付く「ホスピタリティパッケージチケット」を知事に贈呈し、当日は溝畑氏と知事が一緒に試合観戦と飲食を楽しんでいた。毎月10万円の捨扶持を与えたお友達が、恩ある知事に特別な時間をプレゼントした格好だ。
(*下の写真は、チケットを仲介した鹿児島県特別顧問・溝畑宏氏(左端)のフェイスブック投稿より)
28日の定例会見で同氏の選任理由について聞かれた三反園知事は、次のように説明している。
「ご承知の通り、溝畑さんというのは観光の業界では様々面で活躍している方です。これは、知っている人はほとんど知っている、観光庁長官に大抜擢されて、非常に活躍されている方であります。そういう方と、当然のことながら私も人間関係たくさんありますので、その人間関係の中でお知り合いになり、そして特別顧問をお願いして、むこうも非常にお忙しい立場であるけれども、鹿児島のために私であれば、役に立つことがあれば、頑張りますと、温かい言葉をいただきまして、そして特別顧問に就任していただいて、かごしましあわせプロジェクトの委員とか、様々な面でご助言をいただいたりとか、ご講演(ご後援?)をいただいたりだとか、こういうこともしていただいてるわけであります」
文字にすれば句読点の少ない酷い答弁だったが、溝畑氏に毎月10万円を支払う理由にはなっていない。観光庁長官を務めたからといって必ずしも有能というわけではないし、なにより溝畑氏は、特別顧問として毎月鹿児島に来ているのではないという。電話やメールでご意見を聞くだけの相手に毎月10万円というのでは、県民の納得は得られまい。
ある県の関係者は、こう批判する。
「知事がお友達を特別顧問にして月10万円の報酬を与え、そのお友達が一般人は絶対に入手できない特別なチケットを斡旋して一緒に試合観戦を楽しんだ――。知事にチケットを贈ったのは、どうやら特別顧問のお友達。“お友達の輪”の中に生じたなれ合いの結果が今回の“事件”ということだ。何らかの便宜供与が疑われてもおかしくない。(特別顧問や参与は)伊藤知事時代から続いていることではあるが、県庁職員も知らない間に県の顧問が何人も増えること自体が間違いだ」
県は、5人の特別顧問と3人の参与について、氏名と経歴、選任理由、報酬額を明らかにすべきである。もちろん、働きぶりについてもだ。