三反園訓鹿児島県知事が裏ルートでチケットを入手し、今月20日に東京スタジアム(東京都調布市)で行われたラグビーワールドカップ準々決勝「日本対南アフリカ」の試合を観戦していた件を巡り、真相をねじ曲げて問題を矮小化しようとする県側の姑息な姿勢が露わとなっている。
県の担当課は、知事主導の試合観戦だったことを否定した上で、「招待だから、チケットの価格を調べなかった」と強弁。違法性が問われかねない高額チケットの無償譲渡を、なかったことにする構えだ。
(写真は、チケットを仲介した鹿児島県顧問・溝畑宏氏(左端)のフェイスブック投稿より)
■真相ゆがめて知事擁護
知事のラグビー観戦について、これまでの経緯を説明してほしい――。24日、HUNTERの問いに応えた県スポーツ振興課長は、一連の流れについて次のように回答した。
・南アフリカチームが事前キャンプに来ていた頃から同チームの応援に行くという話があった。
・関係先から「南アフリカ対ニュージーランド」と「南アフリカ対イタリア」のチケットが届いていたが、知事が行けないので東京事務所の所長に行ってもらった。
・県の顧問である溝畑宏氏からも、南アフリカチームの応援に行くべきだとの誘いがあったが、日程が合わなかった。
・10月になって20日ならなんとか応援に行けそうだということになり、溝畑氏にその旨を伝えた。
・溝畑氏から大会スポンサーの企業を紹介してもらい、そこから招待された。
・チケット代金については、招待なので調べなかった。オフィシャルスポンサーの枠チケットだと考えている。
一方、HUNTERが入手した県関係者の告発内容はこうだ。
・10月に入って、知事から南ア戦のチケットを準備するよう、急な指示が出た。
・入手困難な時期だったため、困ったスポーツ振興課が、溝畑氏が委員を務める県の諮問組織「かごしま幸せプロジェクト委員会」を所管する企画課に相談した。
・溝畑氏から大会のスポンサー企業を紹介され、1枚だけの入手が決まった。
担当課長の話は肝心なところで脚色されている。県側の主張は、南アフリカチームの試合観戦は早くから検討していたことで、知事の発案あるいは指示ではないとする筋立てだ。この点について、ある県関係者はこう解説する。
「南アフリカチーム側から観戦の誘いがあったのは確かですが、それは断っているんです。その時点では、まだ日本チームが勝ち進むとは思われていなかったからです。9月28日に行われた初戦の相手は、世界ランク2位のアイルランド。大方の人は負けを覚悟してたんじゃないですか。それが勝って、決勝トーナメント進出に希望が出てきた。知事は、(日本チームが)10月5日にサモアにも勝ったことで、とたんに目の色が変わった。そこで『チケットを3枚用意しろ』という指示を出したんです。1枚は自分のもので、残りは東京事務所長と秘書の分。役所の人間を連れていき、公務になるよう仕組んだんです。せこい話ですが、それが真相ですよ。スポーツ振興課は知事に忖度しているだけ。“おねだり”の色を薄めるため、懸命にごまかしているだけです」
役所として“知事のおねだり”を否定するしかない苦しい事情は理解できるが、そこを強調するあまり、課長は問題の本質を見落としている。
知事の主導か否かにかかわらず、チケット入手を溝畑氏に頼んだ形になっているのは事実。その甲斐あって、知事は特別なチケットを無償でもらい、溝畑氏らとともに優雅な時を過ごしていた。その証拠が、溝畑氏自身がフェイスブックに投稿した下の写真である。20日の試合観戦終了後、特別なチケットを入手した人だけが集まる「ホスピタリティーラウンジ」で鈴木大地スポーツ庁長官(中央)らとともに、三反園知事と溝畑氏が写っている。
■チケット代「調べなかった」と強弁
“知事主導”の否定に余念のない県だが、一番のこだわりを見せているのは、“チケット代金については、招待なので調べなかった”という点。高額なチケットを「ただでもらった」(県関係者)ことをごまかしたいらしく、調べなかったことを「別におかしくない」と言い張る。
記者:チケットの代金を調べなかったのは何故か?
課長:招待だから、調べなかった。
記者:招待なら、チケット代が100万円だろうが200万だろうが1,000万円だろうが、問題ないということか?県はいつもそんなことをやっているのか?
課長:それは、ちょっと極端でしょう。
記者:極端ではない。課長が言っているのは、そういうことだ。
課長:だって、招待なんですから。
国の役所も他の自治体も、民間からの贈り物には厳しい対応をするのが当たり前になっている。霞が関官僚なら、一定額以上のもらいものなら届け出る義務があるほどだ。県の課長がいう「招待だから、チケットの金額は調べる必要がない」がまかり通れば、鹿児島では賄賂が横行することになる。そんなバカな話が、通用するはずがない。
■県民からは厳しい批判
知事のW杯観戦問題は、HUNTERの記事配信後、地元紙の報道もあって波紋が広がる一方だ。事情を知ったある財界関係者は、次のように話している。
「私は仕事柄、県の歴史文化関係者とよく話を致しますが、昨年の明治維新150年絡みでは、本来、歴史研究や文化財補修維持などに使われるべき歴史文化予算が、仮装パレードや西郷さんそっくりさんコンテストなどのパフォーマンスに使われてしまったそうです。
仮装パレードなんか5月の雨で中止になったのに、三反園知事がどうしてもやりたいと言って当日朝まで引っ張り、キャンセル料金が発生したと聞いています。パレードは11月にやり直しになったので、実質2回分の費用がかかってしまったそうです。
今回のラグビー観戦の話も、公私混同ということでは同じ。三反園さんは、知事失格です。鹿児島の政治・経済に明るい人は皆、『三反園が2期やったら鹿児島は財政も行政も崩壊する』と心配しております。
鹿児島市在住の40代公務員男性は、三反園県政の酷さに憤る。
「ここまで私欲にまみれた知事がいただろうか?普通に考えれば、公務員がこのような形でチケットを手に入れれば、“便宜供与”あるいは“利益供与”として、厳しく罰せられるはずだ。金額の多寡ではない。
もともと知事は、目立ちたい、手柄にしたいという気持がミエミエで、言葉にも行動にも中身がない。挙句の果てに、権力を使ってラグビーのプラチナチケットを手に入れ、酒を飲みながら観戦しようとは……。情けないと言うしかない。
政治理念なし。信念なし。人を平気で裏切る。厚顔無恥。三反園氏の頭の中にあるのは、損得勘定だけだろう」
40代の会社経営者も、呆れ顔だ。
「ブラジルでの添乗員イジメ、自分勝手な会合ドタキャン、今回のラグビー観戦――。それらは、氷山の一角なのかもしれません。こうした異常事態が繰り返されてるのが、三反園県政なんですね。そのことは付き合いのある多数の県庁関係者からも聞いております。鹿児島県の財政と行政が崩壊する前に、三反園さんは分不相応な地位から降りて欲しいものです」
別の会社社長も、呆れ顔で語る。
「知事のラグビー観戦は、公務ではない。日本が上位進出したということで、無理矢理チケットを手に入れて行っただけ。自分が楽しみたかったということだ。お子ちゃま。駄々っ子。知事の器ではない」
■県庁内部からも怒りの声
就任から3年を経て、三反園氏への評価は下がりっ放し。ついには、県党内部からも怒りの声が上がり始めている。
「知事の豪遊を尻目に、今日、人事課から超過勤務、いわゆる残業をするなと通知があったそうな。血税なのだそうだ。残業しないと仕事は終わらない状況なのに、どこを向いて人事課も仕事してるのか呆れます」(匿名)
「鹿児島県知事を掘り下げていただきありがとうございます。内部関係者ですが、知事は外面が良い反面、日頃の内部への横柄な態度には執行部も、もう我慢ならないと思っている人は沢山いると思います。土日を返上しての選挙活動など、目に余る行為は知事としての資質がないと思われます」(匿名)
■やっぱり嘘つき
知事は、試合観戦についての報道機関の取材に対し「一般席だった」と明言し、問題はないとの見解を示したという。特別な飲食などのサービスが付く「ホスピタリティパッケージ」が付いた高額チケットの席を、「一般席」と呼ぶのか――。三反園訓は、やっぱり嘘つきだ。