鹿児島県南大隅町で森田俊彦町長が主導した県立高校の生徒寮整備事業を巡り、数々の疑惑が浮上した。
事業の実施過程で、当然残されているはずの「方針決裁文書」は作成されておらず不存在。いつ、誰が起案し決裁したのか分からない形で、いまだに「入寮者ゼロ」の女子寮まで建設されていた。
HUNTERは7月からこの問題を追い続けてきたが、開示されるべき文書が度々隠され、町が疑惑の実態解明を阻む格好となっている。(写真、円内が森田町長)
■完結しない情報公開
他の自治体の2.5倍にもなる1枚25円という高額な手数料をとりながら、情報公開制度の恣意的な運用で、開示すべき文書を平気で隠す鹿児島県南大隅町。7月の開示請求から、もうじき2か月になろうかというのに、本来なら1回で終わる文書開示がいまだに終わっていない。
交付文書が送られてくるたび、事業を所管する町教育委員会に、あるべき別の文書の存在を指摘すること2回。追及すると「あります」と文書の存在を認めるものの、強く催促するまで事が進まない。町教委が、開示文書を自己都合で選別するなどして情報公開制度を恣意的に運用しているのは確かだ。
■問われる情報公開の本気度
南大隅町の情報公開条例には、その目的についてこう規定されている。
《この条例は、南大隅町の保有する行政情報の開示を求める権利について必要な事項を定めること等により、町民の知る権利を保障し、町政運営の公開性の向上を図るとともに、本町の諸活動を町民に説明する責務を全うし、もって地方自治の本旨に即した町民参加による公正で開かれた町政を一層推進することを目的とする。》
公費支出を伴う事業なら、当然作成・保存されていなければならない“決裁文書”がないのだから、「町民の知る権利」が保障されるわけはないし、「町政運営の公開性の向上」は到底図れない。もちろん「諸活動を町民に説明する責務を全う」することはできないだろうし、「開かれた町政」など夢のまた夢。嘘とでっち上げで町民を騙し続けてきた森田町政の、それが実態なのである。
そもそも、本気で情報公開をやる意思があるのなら、高額な開示手数料を徴取するはずがない。同町の開示手数料は、情報公開条例を制定した2005年(平成17年)から、下の表のままとなっている。
多くの自治体が「手数料なし。白黒コピー1枚10円」を実現している中、南大隅町は「手数料300円、白黒コピー1枚25円」。隣接する錦江町や肝付町も白黒コピーは1枚25円だが、手数料の徴収は行っていない。
情報公開の費用が1枚10円だとしても、知りたいと思う案件によっては枚数が増える。数百枚、あるいは千単位の枚数になることもある。請求者の負担はばかにならない。それが1枚25円なら、とんでもない高額になるのだ。県庁なら1,000円で済む費用が、南大隅町では「300円+2,500円」になるのだから、制度の利用者はたまったものではあるまい。
費用負担の重さを知った住民が、情報公開請求を控えるケースを年度も見てきた。高額な費用が、情報公開制度を利用する機会を住民から奪っているということだ。南大隅町のように情報公開に不熱心な首長がいる限り、住民の知る権利は保障されない。
県立南大隅高校の生徒寮整備事業に関する情報開示は、町教委が制度を恣意的に運用して文書の存在を隠そうとするため、2か月経っても終わらない状況だ。役場が疑惑の実態解明を阻んでいるのは、寮の整備が、デリヘル接待や金銭スキャンダルで知られる森田町長が主導した“不適切な事業”だからだろう。