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道警・首相ヤジ排除問題に新事実 「接近を阻止」は警察庁指示

2019年9月18日 08:40

0419_police-thumb-200xauto-24283.jpg 参院選期間中に北海道・札幌で首相演説ヤジ排除問題が起きてから約2カ月。一般市民の表現の自由を侵害し、各方面から法的根拠の説明などを求められている北海道警察が今なお「事実関係を確認中」としている中、全国の警察組織を統括する警察庁が選挙に際し、道警を含む各地の警察本部に通達していた警備方針の内容が明らかになった。
 通達には、首相など要人への「接近を阻止」する対応の必要性などが記されており、道警はこれに従って市民を排除した可能性が高い。

■「排除」の根拠となった2通の警察庁局長通達
 安倍首相の街頭演説中に、「安倍辞めろ」「増税反対」などと声を上げた一般市民を拘束・排除した北海道警。組織的に行われた異常な“警備”の原因を探るため、筆者が「第25回参議院議員選挙の警備について、北海道警察が作成または取得した文書すべて」を開示するよう求めていた。

 これに対し、道警は9月5日付で8種の文書計35枚を一部開示。具体的な警備部隊の編成などを記した箇所は「今後の警察活動に支障が生ずるおそれがある」との理由で大部分が墨塗り処理されていたが、警備方針を現場に指示する文言は一定程度開示され、選挙期間が始まる前の段階で警察庁から道警へ、さらには道警から各所属、警察署などへ宛てられた通達の内容が確認できた。

 開示された文書の中で、まず注目したのが6月26日付で「警察庁」から発出された2種類の通達。管区警察局長・都道府県警察の長・方面本部長に、刑事局長からは選挙違反取締りに関する留意事項が、警備局長からは警備対策についての指示が示されていた。

 刑事局長通達には、「要人等に対するテロ等を未然に防止するため、右翼等に対する対策を強化する」とのくだりがあり、警察が当初「右翼」の選挙妨害を想定していたことが窺える。このあと、「内閣総理大臣や閣僚を始めとする要人、候補者等の警護及び警戒警備に万全を期すこと」と続いており、とりわけ首相などの警護が至上命令とされていた状況がうかがえる。

 問題は、警備局長の通達で、「警護対象者や候補者等に対する違法行為の発生も懸念される」と現場に危機感を促し、次のような対応を指示していた。

警護対象者等に対する接近を阻止するための各種諸対策を徹底すること
(*下が警察庁警備局長の通達。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

通達警備局長.jpg

 通達では「右翼以外」のケースも想定し、相手が誰であろうと「要人」へのアプローチを阻止するよう命ずる指示もあった。

右翼以外であっても、社会に対する不満・不安感を鬱積させた者が、警護対象者や候補者等を標的にした重大な違法事案を引き起こすことも懸念させることから、現場の配置員には、固定観念を払拭させ、緊張感を保持させてこの種事案の未然防止を図ること
 警察庁が出した2つの通達を受け取った道警は6月26日、本部長名で刑事局長通達と同じ内容の通達を警察署など道警の関係部署に発出。28日には、道警警備部長が上掲の警察庁警備局長通達をなぞる形で通達を出していた。

■無視された「人権」への配慮
 ヤジ排除の法的根拠を問われ「事実関係を確認中」としている道警だが、少なくとも上のような「根拠」は存在していたことになる。首相演説から排除された人たちはいずれも「右翼」として活動していたわけではないが、現場では「固定観念を払拭」した警察官たちが彼らの「警護対象者等に対する接近を阻止」したわけだ。

 問題は、過剰警備などで批判を受けないよう警備局長通達で示された「いやしくも人権侵害や選挙運動等に対する不当干渉との批判を受けることのないよう、その方法の妥当性に十分配意すること」という一文が、読みとばされていた点にある。言うまでもなく、ヤジを飛ばしたりプラカードを掲げたりする行為は「違法行為」ではない。あまつさえ、当日は“何もしなかった人”までもが警察官によって行動を制限されていた。

 排除問題が発生したのは、選挙期間中の7月15日。それから2カ月が経とうとしていた今月13日、北海道議会本会議で改めて排除の根拠を問われた道警の山岸直人本部長は、これまでと同様「事実確認を継続しているところ」と答弁した。道警は、事案の発生から2カ月間を費やしても「事実」を特定できない捜査機関であるらしい。(*下は、道議会で答弁する山岸道警本部長)

本部長議会答弁(9月13日午後) (1).jpg

                                                         (小笠原 淳)


【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。




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