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麻生太郎の落日 ― 最大の政敵が初入閣 

2019年9月12日 10:10

麻生太郎.png 11日、第4次安倍再改造内閣が発足した。留任は麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官だけ。茂木敏充経済再生担当相が外相に、河野太郎外相が防衛相にそれぞれ横滑りした他、総務相に高市早苗氏が厚生労働相に加藤勝信氏が再登板し、残る13のポストを初入閣組が占めた。
 電撃結婚で世間をあっと言わせた小泉進次郎氏の環境相就任や、メダリストでもある橋本聖子参院議員の五輪担当相など話題には事欠かない新内閣だが、組閣人事が固まった直後から、麻生氏の影響力低下を指摘する声が上がっている。

■崩れたパワーバランス
 総理大臣経験者である麻生が、政権の柱として安倍首相を支えてきたのは周知の事実。派閥の領袖でもある麻生の協力がなければ、安倍の長期政権はなかったと言っても過言ではあるまい。

 「セクハラ罪という罪はない」「子どもを産まなかったほうが問題」「医療費を、健康に努力している俺が払うのはあほらしくてやってられん」――麻生の失言、暴言が度々政権の足を引っ張ったが、お咎めは一切なし。財務省の文書偽造や事務次官のセクハラは、当然大臣が責任を取るべき“事件”だったにもかかわらず、安倍は麻生を更迭できなかった。麻生が閣外に去れば、政権の土台が揺らぐからに他ならない。
 
 官邸を菅が、党を幹事長の二階俊博が掌握することによって築かれた長期政権にあって、麻生は政府の重しであり続けてきた。3人の実力者が時に協力し合い、牽制もするというパワーバランスで成り立っていたのが安倍政権なのだが、ここに来て、その構図が崩れかけているのだという。

 ある自民党の国会議員は、次のように解説する。
「総理は、これまで支えてもらった麻生さんに感謝はしているが、傲慢な態度に辟易しているのも事実だ。春の福岡県知事選挙で麻生さんのメンツをたてて新人に推薦を出したが、結果は惨敗。夏の参議院選挙に、マイナスの影響しか与えなかった。普通に勝てたはずの新潟で議席を失ったのも、麻生さんの子分の参議院議員が知事選の応援でバカな忖度発言をしたからだ。懲りないというか、自覚が足りないというか、失言・暴言が止まらない。参議院が(憲法改正の発議に必要な)3分の2を割った責任の一端は、間違いなく麻生さんにある。『いい加減にしてくれ』というのが総理の本音だろう。だから、麻生さんとしては認められない人事が、まかり通った。菅さんや二階さんの力がまさった結果とも言える」

■武田氏初入閣の意味
 自民党議員が言う「麻生さんとしては認められない人事」とは、福岡県選出で二階派の武田良太衆院議員が初入閣したことと、麻生派の河野太郎氏が外相から防衛相に横滑りし閣内に残ったことだという。

 武田氏と麻生氏は、誰もが知る犬猿の仲。中選挙区時代の旧福岡4区でぶつかり合っていた2人は、小選挙区制になって戦場が分かれた後も、事あるごとに対立してきた。それぞれの選挙区内における首長選や地方議員の選挙では、両陣営が候補者をたてての激しい争い。2016年に行われた衆院福岡6区の補選でも、麻生と武田が代理戦争を繰り広げた。決着を見たのが、今年4月の福岡県知事選挙である。

 事前調査で、圧倒的有利との結果を得ていたのは現職の小川洋知事。自民党推薦は小川氏で決まるとみられていた。その小川知事を支援する態度を鮮明にしていたのが武田であり、麻生と距離を置いてきた山崎拓元自民党副総裁だった。常識的には「現職推薦」で決まるところを、反小川で動いていた麻生が力業で覆す。

 小川の県政運営を批判してきた麻生は、「推薦が取れなければ閣僚を辞める」と首相に直談判して官僚出身の新人に党の推薦を取り付けたのだ。県連幹部も驚く逆転劇だったが、福岡の有権者は麻生の理不尽な手法に猛反発する。

 結果、麻生が推した新人の知事候補は、小川に約95万票もの差をつけられて惨敗。あまりの票差に責任を問う声も上がったが、麻生は党県連最高顧問を辞任するという「痛くも痒くもない責任の取り方」(自民党関係者)でお茶を濁した。国政の場でも無責任、地元でも無責任――。麻生に対する評価は、下がる一方だ。

 そんな麻生だが、プライドだけは人一倍ある。知事選で現職勝利を主導した武田を、許すはずがない。もちろん、入閣などもってのほか。これまでも麻生は、武田の入閣を阻んできたと言われており、当選6回を数える二階幹事長側近も、大臣の椅子は遠いとみられていた。ところが、その武田が国家公安委員長として初入閣したのである。ある自民党の関係者は、驚き顔でこう話す。  
「これまで、武田氏の入閣を阻んできたのは麻生さんだ。武田氏への憎悪で凝り固まっている麻生さんが、武田氏の入閣を容認するはずがない。その武田氏が国家公安委員長――。武田氏を推した二階さんや菅さんが勝ったとも言えるが、むしろ麻生さんの力が落ちた、というべきだろう。知事選の惨敗で、(麻生氏の)福岡県内での求心力も確実に低下した。永田町でも、ということになれば、麻生さんの晩年は暗いな」

■衰えた麻生の力 
 今回、麻生派から入閣したのは麻生本人を含め3人。そのうちの一人が外相から防衛相に横滑りした河野太郎だ。喜んでいいはずだが、この人事も麻生にとっては心外なものだったらしい。

 衆参合わせて50人を超える勢力の麻生派(正式名称は「志公会」)の悩みの種は、次の総理・総裁候補が育っていないこと。当選13回の麻生の次に位置するのは12回の大島理森衆院議長(派閥離脱中)と甘利明元経済再生担当相で、若返りは到底無理だ。次の世代で知名度があるのは河野ということになるのだが、いかんせん派内での人望がない。麻生としては、いったん河野を閣外に出して“閥務”に専念させたい意向だったという。ところが、麻生の願いを無視した形で安倍が河野を一本釣りし、防衛相に就任させてしまった。永田町の古参秘書は、「麻生さんの力が落ちた証拠」と断言する。

 安倍と麻生は組閣を前にした今月8日、安倍の私邸で1時間半にわたって話し合ったという。麻生は当然、武田の入閣阻止を強く主張し、河野の起用も考えなおすように迫ったはずだ。しかし、武田は国家公安委員長兼防災担当相として念願の初入閣。河野は防衛相として閣内にとどまった。元総理の力に、衰えが見えているのは確かだ。



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