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福岡県警、理不尽「職質」の一部始終
暴走する警察権力(下)

2019年9月 4日 09:20

0419_police-thumb-200xauto-24283.jpg 罪もない市民を強制的に排除したり、杜撰な捜査で誤認逮捕したりと、劣化が懸念される警察組織――。何もしていない市民が、突然犯罪者として不当な扱いを受けるのだから、たまったものではない。
 なくならない「冤罪」――。北海道や愛媛で起きた“事件”は、決して他人ごとではない。つい最近、HUNTERの記者も福岡県警警ら隊の理不尽な職務質問を受けていた。

■悪夢のはじまり
 数週間前の夜のこと。社会人1年生の娘が帰宅したとたん、「スーパーに買い物に行く」と言い出した。時計を見ると9時半。夜道は危ないと思い、原稿執筆の手を止めて車を走らせた。

 スパーマーケットがあるのは、車で5分ほどの大通り沿い。その大通りに交差する細い道を走ってきて、信号で停車していたところ、右手からやってきた1台のパトカーが徐行する。こちらを見つめる、助手席の警察官の目……。嫌な感じだ。

 すると、目の前を通り過ぎたパトカーが、突然信号脇にあるコンビニの駐車場に入ってぐるりと回り、記者の車の後ろにつく。警察車両が、わざわざ民間の土地に入って転回するなど見たことがない。不自然な動きが、記者の車に目をつけてのことだということは、ピンときた。

県警.png

 案の定、信号が青になったのを確認して大通りを右折したとたん、パトカーから停車を命じられた。“やっぱりか……”とうんざりしたが、仕方がない。警察官もお仕事だ。免許証を提示するのは、市民の義務とあきらめよう。協力するしかない。

■言いがかり
 車を止めてポケットから免許証を取り出し、ウィンドウを下げた記者だったが、パトカーから出てきた制服警官に思いがけない言葉を投げつけられる。よくある「免許証見せて下さい」ではなく「降りろ」――。むっとくる。

 何の要件か伝えもせずに、いきなり「降りろ」は、いくらなんでも乱暴だ。昭和の時代に絶滅した表現で申し訳ないが、記者は「瞬間湯沸かし器」。同乗していた娘によれば、バックミラーに映った記者の表情は、この段階で怒りのそれに変わっていたらしい。

 車を降りた記者に対し、警察官の第一声は「あのへこみは、何の事故ですか」。後部右バンパーにあったへこみを指さして、記者の顔を睨んでくる。たしかにへこみがあるのだが、いつ、どのようにキズがついたのか、あるいはつけられたのか、まるで覚えがない。「分かりませんね」とぶっきらぼうに答えたのがいけなかったのか、警察官は「何の事故か分からないなんて、おかしいでしょう」とほざく。

 分からないから分からないと答えているのに、それがおかしいと言われれば、これはもうケンカを売られているということだ。そもそも、コンビニの駐車場横で信号待ちしていた記者の車に目を付けた段階では、警察官から右後部のへこみは見えていなかったはず。停車させた理由が別にあることは、子供でも分かる。つまり記者は、警官にいんねんをつけられたのである。気にいらない。

 “一体これは何のマネだ!”――名刺を渡しながら怒る記者に、「職務質問」だとうそぶく警察官。“職質ですからご協力くださいといえば済むことだろう。いきなり降りろでは筋が通らんだろう”と怒鳴ったが、警察官はどこ吹く風。こちらの問いには答えない。

 逆に、「なんで大声を出すのか?」と記者に迫る警官。態度の悪さに「その物言いはなんだ。歳はいくつだ!」といきり立つ記者。“警察に協力することはあっても、世話になるようなことをしたことはない”と言えば、バカにしたように「どんな協力をしたのか」。こうなると、会話は成り立たない。ここで恐怖にかられた娘が、泣きながら110番通報してしまった。“なんで110番?ああ、またややこしくなる……”

■いきなり身体検査を要求
 そうこうするうちに、警察官が記者の身体を調べさせろと言い出した。どこまでも容疑者扱いだ。“断る!”というと、「調べられたらまずいことでもあるのか」という、テレビの警察応援番組「警察24時」に出てくるような決まり文句が返ってきた。

 まずくはないが、嫌なものは嫌。娘の前で、身体検査までやられるおぼえはない。こんな理不尽に、仕事の時間が削られていくことも我慢がならない。“いい加減にしろ!身体に触れるな”と拒否したら、今度は車の中を調べさせろという。何が何でも罪に問う材料が欲しいらしい。めんどくさくなった記者が、“どうぞ”と妥協したところ、トランクまで開けさせられて、次のインネンが始まった。

 トランクに入っていたのは「鍬(くわ)」。たまにしか行けない先祖の墓所は、すぐ雑草に占領されるため、鍬は帰省時の必需品なのだ。いつでも使えるようにトランクに積んでいるのだが、これに難癖をつけてくる。「これは何に使うのか」――。警察官が、鍬の使い方を知らないはずはあるまい。鍬は、土を掘り返す道具に決まっている。ばかばかしくて話す気にもならない。頭の中で“車に娘を乗っけたTシャツ姿の中年男が、人を襲うために鍬を持ち歩いているとでも思ったのか、このバカ!”と毒ついて、警察官の問いを無視する。

 ここまでで約20分。娘の110番通報を受けた別のパトカーが到着し、別の警官から改めて事情を聴かれる。職質をやるにしても手順があるはずで、免許証の確認もせず、いきなり「降りろ」は承服できない。無礼だ。顛末を話したところで、ようやく「免許証を出してください」ということになった。

■明かされなかった職質の理由
 およそ3分後、記者に難癖をつけてきた警ら隊の警察官が、記者に免許証を返しながら「娘さんに嫌な思いをさせてしまったようで、申し訳ありませんでした」といきなりのご挨拶。しかし、記者に対する詫びの言葉はない。娘に「ごめんね」と謝っていたところをみると、110番通報した娘にだけ配慮したのだろう。一般社会では、「犯罪者扱いして申し訳ありませんでした」か「見立て違いでした。謝ります」が当たり前の顛末だが、最後まで記者への謝罪はなかった。
 
 警ら隊の警察官は記者に対し、なぜ車を止めて職務質問に及んだのかという「理由」=「嫌疑」を最後まで明かさなかった。怪しいと感じたからこその職質だったはずだが、それならどこが疑わしいのか示すべきだろう。任意である以上、わけもなく一般市民の身体を検査したり、車を検索することが許されるとは思えない。拒否すれば「都合が悪いことがあるのか」という警察の常套文句が返ってくるが、身に覚えのない疑いをかけられた方が、気分良く職質に協力するはずがない。

 記者は気が荒い。認める。だが、それは理不尽に遭遇した場合だけだ。いきなり車を止めて「降りろ」という理不尽が、まともな職質であるはずがない。当然、噛みつく。

 福岡県警には、尊敬するOBの方や現役もいる。だが、間違いは見逃せない。テレビ番組の「警察24時」は、警察と仲良くしておきたい民放によって、都合よく切り取られた一場面に過ぎない。



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