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鹿児島・南大隅町 需要無視して女子寮整備
“入寮者ゼロ” 情報開示は意図的に延引

2019年8月22日 08:10

女子寮前表札--2.jpg 鹿児島県南大隅町が整備した県立高校の女子寮が、竣工後4か月経っても入寮者がいない状態になっていることが分かった。
 需要を確認せずに箱モノ建設に走ったのは明らか。事業経過を巡る“疑惑”も噂されており、税金投入の正当性が問われる事態だが、同町はHUNTERの情報公開請求に対し開示すべき文書を隠すなどして真相究明を阻害する姿勢を露わにしている。

■入寮者「0」 ― 需要無視の証明
 7月中旬に開示請求した文書が、1か月過ぎてもそろわない――。「南大隅高校の生徒寮整備に関する全ての文書」の写しの交付を求めたHUNTERの情報公開請求に対し、いったん開示決定を出した南大隅町。しかし、公共事業を行うにあたって最も重要な文書が欠落していることを指摘したとたん、ズルズルと対応を引き延ばすなど、事業を所管する教育委員会が迷走を始めた。疑惑を抱えた時の、役所特有の動きである。

 疑惑が浮上したのは、県立南大隅高校自転車部の女子生徒を対象にした女子寮整備事業。2016年(平成28年)に男子寮が先行整備されたことを受けて、昨年度の事業として定員6名の女子寮を建設していた。設計費や工事費などの内訳と、事業費総額は次のとおりだ。

南大隅町 女子寮.png

 約3,300万円もの公費を投入して建設された女子寮だが、現在までの入寮者は「0」。つまり南大隅町は、需要の確認もせず、税金を使った事業を進めたということになる。

前女子寮・奥男子寮.JPG 念のため同町に対し、女子寮開所以来の利用状況が分かる文書を開示請求したところ、出てきた答えは次のようなものだった。

002--2.jpg

 やはり入寮者は「0」。ムダな事業であることを隠すためだろう、今年度は部活動の合宿や中学生の体験入学などに活用せざるを得ない状況となっている。

 一方、平成28年に開所した定員16名の男子寮の方は、初年度に11名、29年度16名、30年度15名が入寮していたが、今年度は10名へと激減している。

002--3.jpg

■情報開示を延引 背景に「癒着」
 では、なぜ県立高校の生徒寮を県教委ではなく南大隅町が整備しなければならなかったのか――。そうした疑問に答える「公文書」が存在しているはずなのだが、同町が開示した資料には、肝心のものがない。意図的に関連文書を隠した可能性があると判断して町教委を追及したところ、担当課長ははじめから逃げ腰。一部の文書を省いて開示したことを認めたものの、「あとの対応は、私ではなく部下がやることになるかもしれない」と無責任な伏線を張って連絡を絶ってしまった。

 HUNTERが、当初の開示決定通知に従って所定の手数料を振り込んだのが8月5日。情報公開制度の恣意的な運用で、文書送付を翌週まで遅らせ、ようやく送られてきた資料は、肝心なものが欠けているというふざけた対応だ。追加の開示資料も、「用意する」と言ったまま1週間あまり放置されており、催促しても反応がない。故意に文書開示を遅らせ、内部で対策を練っているとしか思えない状況となっている。

 一体何を隠しているのか?町内を取材するなか、生徒寮整備を巡る町長と関係者の「癒着の構図」が浮かび上がってきた。
                                                     (以下、次稿)



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