事前に談合情報が流れたため延期された鹿児島県出水市の支所庁舎建設工事の入札が、業者への事情聴取を経て2日後に実施された。予想された通り「談合はなかった」との結論で、改めて官民癒着の強固さを印象付けた格好だ。
入札の執行状況を確認したところ、案の定、納税者である市民をなめ切った業者と税金支出に無頓着な市役所の姿勢を露呈させる酷い結果だった。事前情報と実際の入札結果を明らかにし、出水市民にその是非を問いたい。
■詳細極めた談合情報
問題の工事は、「出水市高尾野支所庁舎建築工事(1工区)」「出水市高尾野支所庁舎建築工事(2工区)」「出水市野田支所庁舎建築工事(1工区)」「出水市野田支所庁舎建築工事(2工区)」の4件。入札公告によれば、Aランク(公式には「A級」)の業者がBランク(同「B級」)または別のAランク業者と建設共同企業体(JV)を組んで応札し、今月19日に入札が行われる予定となっていた。
HUNTERに談合情報が寄せられたのは16日金曜日の午後。それによると、出水市のAランク業者だけでJVの組み合わせ、工区割り、出資比率などを決めた経緯が明かされており、談合が行われた時期と場所も示されていた。(*下は、HUNTERが入手した談合を告発する文書の一部)
談合を主導した業者の実名など、当日の様子まで詳述されていたため、出水市の入札を所管する政策経営部契約検査課に事実関係の確認を要請。同課は、「談合情報が寄せられた場合のマニュアルに従って対応する」としていったん19日の入札を延期したが、業者への事情聴取を行って「談合なし」の結論を出し、21日に入札を実施していた。
■市民を愚弄する入札結果
役所に談合情報が寄せられた場合のお決まりの流れだが、HUNTERが得た事前情報と実際の落札状況を見比べると、出水市のAランク業者に“反省”の色はなく、市には税金支出と厳しく向き合う姿勢が欠如していることが分かる。下が、その比較表。市民を愚弄しているとしか思えない。
市役所もずいぶんなめられたもので、「高尾野支所庁舎建築工事(2工区)」と「野田支所庁舎建築工事(2工区)」を落札したのは、談合情報通りのJV。「高尾野支所庁舎建築工事(1工区)」と「野田支所庁舎建築工事(1工区)」は、落札JVを入れ替えただけだった。各JVの組み合わせも、事前情報通り。「談合はなかった」という出水市や業者の主張を、信じる市民は皆無に近いだろう。
ちなみに、各工区の落札金額は次の通りだ。
「高尾野支所庁舎建築工事(1工区)」:1億8,260万円設計費など他の支出を加え10億円を越そうかという大型事業の原資は、言うまでもなく市民の税金だ。談合は、その血税を貪る犯罪行為であり、市民への背信に他ならない。市役所と業者が“なあなあ”で公共事業を進めた場合、泣きを見るのは市民なのである。
「高尾野支所庁舎建築工事(2工区)」:2億6,070万円
「野田支所庁舎建築工事(1工区)」 :2億5,488万800円
「野田支所庁舎建築工事(2工区)」 :1億8,865万円
疑惑の発端となった談合情報の内容は、前述した通り時期や場所、首謀者、JVの組み合わせ、落札する工事や落札率まで詳述したもの。「なかった」ことにされてしまったが、もし“録音データ”が残っていた場合、業者や市はどう対応するのだろう……。