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いきなり決まった整備地 持ち主は町長の親しい知人
鹿児島県南大隅町 県立高「生徒寮」整備事業に重大疑惑(2)

2019年8月27日 09:15

南大隅町.jpg 鹿児島県南大隅町が7,000万円以上の公費をかけ整備した県立南大隅高校自転車部の寮。「開店休業状態だった」(地元住民)という旅館の建物を転用して平成28年に完成した男子寮には入寮者が絶えないが、今年になって新築された女子寮は、開所から4か月経っても無人のままだ。
 需要を確認せずに箱モノ建設に走った証拠だが、同町への情報公開請求で入手した資料によれば、公的事業の節目ごとに作成されるはずの「決裁文書」がないなど寮整備事業の経過自体が不透明極まりないものだった。
 なぜかくも杜撰な事業への税金投入が認められたのか?別に町有地を保有していながら、なぜ民間の旅館を買い取り、借地契約を結ばなければならなかったのか?疑問に対する答えは、簡単に見つかった。
(写真、円内が森田町長)

■不正の証拠? ― 議会議事録に残った町長の“裏話”
 興味深い町側と町会議員のやり取りが、同町議会の議事録に残されていた。平成27年6月11日の南大隅町議会。県立南大隅高校の存続策について質問したある議員が、自転車部の「寮」を整備する必要性について町側の意向を質したのに対し、まず教育長が次のように答弁する。(*以下、議事録の赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

森田答弁2.png

 事業を所管する教育長は、寮の整備地について「学校の廃校跡地の校舎利用等を考えながら、含めて検討」と答えている。ところが、同じ内容の質問を振られた森田町長は数分後、教育長の答弁とはまったく違う内容の“裏話”を披露する。

森田答弁.png

 寮の整備地について、教育長が「学校の廃校跡地の校舎」と言った直後に町長は「民間の方々の所」――。教育事業を所管する組織のトップが公有地利用を示唆しているのに、町長は民間の所有物件を「お借り」できるよう「内々」に話を進めているというのだ。不透明というより、不適切な交渉の裏話だろう。

 繰り返すが、わずか数分の間に述べられた教育長と町長の答弁は、まるで方向性が違うものなのだ。

教育長.jpg

森田.jpg 「内々ではございますけれども、民間の方々の所をお借りしてやれないかとか、そういうような事も今進めておる最中」――“内々”とは「秘密裏」「うちわ」「ないしょで」の意、“民間の方々の所”とは町有地以外の場所を指す。つまり町長は、民間所有の物件を借りて寮を整備するつもりで、自ら裏交渉を行っていたということだ。

■隠蔽文書が語る不適切事業の実態
 実はこの段階で、寮の整備地は、ほぼ決まっていたと言っても過言ではない。それを証明するのが、「誰が、いつ作成したのか分からないが、関連書類に重ねられていた」(町教委の説明)という議会説明用の文書。HUNTERの情報公開請求に対し、当初南大隅町が隠していた下の「南大隅高等学校寮整備経過報告」(付箋は南大隅町)である。
 001.jpg

 経過報告の記述内容を見れば、この文書を隠蔽したかった理由は容易に分かる。町教委が、「寮整備事業のスタート地点」だと説明するのが、整備地について教育長と町長が違う内容の話をした平成27年「6月11日」の議会答弁。それからの動きは、通常の役所仕事では考えられないスピードで、あっという間にすべてが決まる。もちろん、6月11日に森田氏が自慢げに語った“裏の筋書き”通りに、だ。

 議会答弁から8日後の19日には「根占荘」という旅館の名称が登場し、寮整備について、いきなり「基本合意」。6日後の25日には、議事録が残らない議会の全員協議会で、「根占荘を寮として整備する方針」を説明していた。反対意見は出なかったとされ、森田町長が内々で進めていた「民間の方々の所をお借りして」生徒寮を整備するという計画が、事実上決定する。

 他の自治体では当然行われている“他の候補地との比較”もなければ、“なぜ根占荘なのか”という理由が記された文書もなし。あるべきはずの用地選定過程に関する決裁文書が残らなかったのは、町長の独断で寮の整備地が決まった証なのである。

■背景に生徒寮用地の持ち主と町長の関係
 問題は森田氏がなぜ「根占荘」を選んだのかだが、理由は簡単に分かった。実は、根占荘の建物と土地を所有していたのは森田町長と親しい間柄の人物。つい最近まで森田氏の支持者だったという住民男性は「町長と根占荘の持ち主は昵懇。関係が深いことは誰でも知っている」と話す。

 複数の町民に話を聞いたが「根占荘の元の持ち主と町長は、昔から親しい関係。議長の大村(明夫)さんとも親しい。生徒寮(の整備地)は、はじめから根占荘に決まっていたんだろう」(60代男性・農業)、「根占荘は開店休業状態でした。町長が、仲良しのお荷物を税金で引き取ったということでしょう」(70代男性・会社社長)などと厳しい声ばかりだった。

 実際、町は候補地選定についての議論をすることなく、わずか数日の交渉で根占荘の建物を買い取り、土地だけ借りる形で寮を整備していた。自治体が民間の施設を取得する際、営業実態に応じた移転補償などがなされるのが通例だが、南大隅の生徒寮整備事業では、補償について協議された形跡はない。町民が言う通り、根占荘の営業実態はなかったものとみられる。

 “教育を利用した便宜供与ではなかったのか”という疑念は膨らむばかり。疑惑の生徒寮整備について、さらに検証を進めてみたい。
                                                            
                                                            (つづく)



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