自民党の上野宏史衆議院議員(比例南関東:当選2回。参院1期)が、根本匠厚労相に厚生労働政務官の辞表を提出した。上野氏は先週発売された週刊誌で、外国人労働者の在留資格取得について口利きを行う見返りに、企業に金銭を求めていたと報じられている。
疑惑について報じた週刊文春によると、全国の飲食店やドラッグストアなどに外国人を派遣している人材派遣会社「ネオキャリア」(東京都新宿区)が、外国人の在留資格を取るため、各地方の法務省外局「出入国在留管理局」に大量の交付申請を行っており、上野事務所にはネオキャリア社側から在留資格申請中の外国人187人分のリストが渡され、そのリストを基に法務省に問い合わせを行っていたという。
永田町関係者に取材した。(写真が上野議員。自民党HPより)
■詐欺的手法でカネ集め
文春が入手したという証拠の音声データによると、この申請を巡り今年6月、上野議員は秘書に対し、次のような発言をしていた。
「早くしたっていう実績をウチが作ってあげて、その分ウチは交渉して、これを党費にあてようと思って。100人だから、200万円」――つまり一人頭2万円の報酬を得ようとしていることになる。
また、秘書が「これあっせん利得になっちゃいますよ、代議士」とたしなめる場面も含まれており、この音声は秘書自身がスマートフォンで録音したものだという。主従の間で“もめ事”があったことは容易に想像がつくが、それにしても程度が低すぎるカネ儲けの手口だ。
どんな経歴なのか調べてみたが、東大から通産省(現・経済産業省)に入り、政治家に転身。「みんなの党」、「日本維新の会」、「次世代の党」と渡り歩き、現在は自民党という忙しい御仁だった。義父は上野公成元官房副長官。住宅メーカーから、不正な手段で多額の献金を受けていた疑いのあった方である。
野党のヒアリングに対し法務省は、「個別の申請について答えは差し控える」としているが、実際にはどのような対応をとっていたのだろう。
霞ヶ関の官僚の中でも、法務省は政治家のいうことを聞かない役所として有名だ。総理官邸が各役所の幹部を呼べば、ほとんどの役所は事務次官クラスまですぐにやってくるが、法務省は違う。自分たちの都合に合わせて動くのだ。法務省のキャリア官僚は司法試験に合格している人材も多く、弁護士への転向も容易なため、政治家に媚びへつらう必要がないのだという。
ある永田町関係者によれば、国会議員や秘書が、法務省に在留資格や入国審査を早くしてほしいと要望するケースは少なくないという。しかし、要請したからといって審査が早まるわけではなく、事務処理に関する“連絡”が来るだけ。帰化申請などいついて国会議員が法務省に問い合わせた場合だと、数ヶ月後「本日、許可の通知を申請者に送りますので、明日かあさってには届きます」などと、そっけない知らせが来る程度なのだそうだ。さすが法務省と言いたいところだが、正式通知の前に連絡することが「犯罪行為」を誘発する。
役所から連絡が来ればすぐに当事者に連絡して、さも「国会議員の力で役所が動いた」かのように見せつけて感謝させるのが永田町の手法。無理難題は後援会の幹部から持ち込まれることが多いので、そうした場合は金銭が動くことはないが、見境なく“カネ”に結び付ける、上野氏のような低俗な議員もいる。
■浮き彫りになった党員集めの実態
ところで、公表された秘書とのやり取りを聞いていると「党費に充てようと思って」という言葉が出てくる。自民党は衆参の所属議員に1,000人の党員集めを義務付けているが、党費は年間4,000円。議員の後援会に所属している人でも、4,000円払ってまで党員になってくれる人はほとんどいない。「このくらいの党員を集められないような候補者なら、選挙に勝てる見込みがない」との自民党本部の判断なのだが、実際に1,000人の党員を集めるのは至難の業。ある参議院議員の秘書は、「議員側が党費を肩代わりして体裁を整えている」のが実情だと打ち明ける。
上野議員のケースは、法務省からの認可が当事者に届く前に業者に連絡し、あたかも自分の力で申請が通ったかのように見せかけ、業者から金銭を受け取るという方法。悪質なカネ集めの動機が過大な党費負担にあったとすれば、自民党としても見過ごしていい話ではあるまい。