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首相ヤジで暴走の北海道警察 「何もしていない人」も“排除”していた

2019年7月29日 07:40

0419_police-thumb-200xauto-24283.jpg 参院選の応援演説に立った安倍晋三首相に「辞めろ」などとヤジを飛ばした市民らが北海道警察に排除された問題で、現場にいただけで、とくに何もしていなかった市民までもが事実上拘束され、行動制限を受けていたことがわかった。
 政権の犬となった警察権力が、罪のない一般市民に牙をむいた形。民主主義や自由主義を踏みにじる暴挙に、抗議の声が広がりそうだ。


■友人に同行しただけで“排除”
 当事者の男性はヤジを飛ばした人と友人同士で、それを察知したとみられる現場の警察官たちにマークされることになったという。男性は「恐かった」とその日を振り返り、今も「逮捕されるかも」という恐怖を抱えている。 

IMG_4674 (2)--2.jpg 7月15日夕にJR札幌駅前で警察に取り囲まれたのは、札幌市のアルバイト職員・石井孝之さん(31)=仮名。ツイッターで参院選与党候補の演説予定を知り、友人の男性にその情報を伝えたところ、もう1人の女性を含む3人で札幌駅前へ足を運ぶことになった。当日はとくに何か行動を起こそうと思っていたわけではなく、すぐそばにいた友人が突然「安倍辞めろ」と叫んだ時はとても驚いたという。
「彼がたちまちその場から引っ張られて行ったので、警察を止めようかとも思いましたが、結果的には遠巻きに見ていることしかできませんでした」

 演説の場から排除されていく友人を見やり、近くにいた警察官に「何が悪かったの」と尋ねると、「訊かれたら言わなきゃならなくなる」との返事。これを聞き、言外に「その気になれば適用できる法令違反がある」という意味を読み取ってますます恐くなった。友人と一緒に警察に引っ張られて行った女性は必死に抵抗していたが、石井さんは身体が固まってしまい、何もできなかったと振り返る。

 行動を制限されながらも叫び続けていた友人は、ほどなく現場を離れ、札幌駅から500mほど離れた大通公園のほうへ移動し始める。ついていくと、石井さんを含めた3人が警察官たちに取り囲まれ、大名行列のように札幌の中心部を行進することになった。途中でベンチに腰掛けて休憩した時は、10人ほどの警察官がつかず離れずの距離で目を光らせていたという。

■消えない恐怖、沈黙する道警
 ベンチを立った友人と女性は、タクシーを止めて後部座席に乗り込んだ。石井さんはこれに同乗せず、ひとり徒歩で移動を続けることを選ぶ。以降、大通の百貨店まで移動する間、前後を2人ずつの警察官に固められながら歩き続けることとなった。ヤジを飛ばさず、プラカードも掲げず、文字通り何もしなかった市民が、公然と警察に監視され、行動を制限され続けたわけだ。

 実家の両親が創価学会の信仰に熱心だという石井さんは、自宅に配達される「聖教新聞」を通じて学会の平和主義に触れ、素直に共感した。だが、両親の支持する公明党の今の姿勢には共感できない。とりわけ同党が自民党とともに連立与党を構成し始めてからは、違和感が増すばかりだった。首相演説に足を運んだのは、もちろん支持者としてではなかったが、さりとて積極的に抗議の声を挙げるほどの行動力は持ち合わせていなかった。にもかかわらず、思いを態度で示した友人の近くにいたというだけで、警察について回られることになるとは――。
「その後、喫茶店に入ろうとした時も警察に見張られ続けました。正直、最初に大声を挙げた友人にもビビりましたが、そのぐらいのことで追い回されるのかと思うと、それも恐怖です。逮捕されたわけではなく、名前や住所も訊かれませんでしたけど、少しだけ身体を掴まれた記憶はあります」

 警察には事実をはっきり説明して欲しいと、石井さんは言う。“被害者”の受けた恐怖を知ってか知らずか、北海道警察は今も「事実関係を調査中」とするのみだ。


                                                         (小笠原 淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。




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