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レオパレス救済にチラつく自民党の影

2019年7月16日 08:55

レオパレス21.jpg 長崎県壱岐市出身の創業者・深山祐助元会長が一代で築いたレオパレス21。建築不正が企業ぐるみで行われた結果、6月末時点で1万9,689棟に施工不良がみつかり、そのうち267棟は各戸を隔てるため天井裏に施工される「界壁」がないなど消防法に違反する建物であることも確認されている。
 補修と入居者の入退去問題で倒産危機説まで流れる状況だが、厳しく対応すべき国はなぜか腰砕け。救済策の裏には、自民党の影がチラついている。

■存在感増す創業者
 創業者である深山祐助氏は、2006年に私的流用が発覚しレオパレス21の代表を辞任。表面上、同社との関係を絶った形になっているが、その影響力はいまだに消えていない。2008年には親族と、レオパレス21の前身と同じ社名である不動産会社「株式会社MDI」を設立。レオパレス同じビジネスモデルの企業を一族経営で残しており、レオパレス本体へのバックアップをするため、MDIの上場を画策しているという噂もある。上場益で本体を助けるという目論見だ。ちなみに、MDIは深山祐助氏の資産管理会社である「将軍」が大株主。今期の新入社員募集をストップして銀行への支払いも一時停止しており、これがレオパレス救済や上場への整理・地ならしだという観測も流れている。

 界壁の補修工事期間、入居者は一時退去を余儀なくされ、工事終了後に再入居となる。引越し代金は、補修費以上にレオパレスの負担に見通しだが、そこにも深山祐助氏の影が見え隠れする。祐助氏とと同じ拓大出身者が代表を務める企業が、優遇価格で引越しを請負う予定だからだ。
「決して大きいとは言えない『天草引越センター』(天草運送株式会社:東京都)がレオパレス関係で抜擢された。天草運送は九州出身の右翼が創業し、深山氏と同じ拓大のOBが前社長だった会社。レオパレス創業者の力が働いたのは確かだ」(大手引越し業関係者)
 
 天草引越センターといえば旧一万円札の聖徳太子のマークと「家財と一緒に〔 金運 〕〔 開運 〕〔 招福 〕を運ぶ」という怪しげなうたい文句で知られる会社。しかし、この知名度はもちろん全国区ではない。にも拘わらずレオパレス物件での優先・優遇価格の引越し請負は、深山元会長の意向があってのことだと引越し業関係者は言う。天草運送に問い合わせると「レオパレスの界壁補修工事の間、一時退去から再入居までを優先的に特別価格でやらせてもらっています」と認めている。

■国交省、SMBCの裏には……
 深山祐助氏の影響力は底が知れない。国土交通省は当初、潜在的な不正をさらにみつけようと徹底追及の姿勢を見せていたが、ここに来て一転、レオパレスが存続できる方向へと舵を取り始めた様子なのだ。

 その反応は、旧村上ファンド系の投資会社「レノ」(東京都)のレオパレス株買収に表れているのだと関係者はいう。レノの株式買収は18%を超え、レオパレスの株価も上昇しているからだ。「ターニングポイントは5月31日です。それまでレオパレス救済に海外投資ファンドが救済するというスキームがあった。ローンスター、インテグラルの2社が2018年末にはインテグラルに絞られ、ほぼ決まりという状況でした。しかし、新体制の役員人事を見てファンドは救済の姿勢から、一斉に撤退の構えを見せました。役員に三井住友銀行(SMBC)の岡本誠司氏が入っていたからです」(ローンスター関係者)

 岡本氏は、SMBCでリテール部門を仕切っていた実力者で、企業投資のいわば監督のような存在だと金融専門家は解説する。「救済の仕切りはSMBCで決まり。彼らがよそのファンドにウマミを渡すはずがない。下請けでもウマミは少ないでしょう」。

 救済に挙手して救世主となれば再生のイニシアティブを握れると思いきや、ローンスター、インテグラル2社に対してレオパレスが提示していきた条件は詳細にわたり、「やらせてやるから」的な高圧的姿勢だったようだ。「うちは早々と手を引き、インテグラルが細かな条件を飲んで、ほぼ決まりだったところにSMBCです。自民党が動いた、ということですよ」(ローンスタ―関係者)。別の金融情報通も、SMBCが出てくるのは自民党が動いている証拠だと断言する。創業者深山祐助氏の影響力は絶大で、政府自民党の中にもレオパレスを無視できない政治家が少なくないのだという。

 自民党も動かせる深山氏の資金力。投資家も、そこを重視する。「彼(深山祐助氏)の資産は莫大です。レノは、界壁の補修工事は500億円を超えないと試算しており、深山一族の資産も考慮に入れて株式買収に入ったという情報もあります。レノの調査力は投資業界では群を抜いており、信用があるんです。資金も出光株を売却したため潤沢にある。これは買わなきゃということで投資家は動き、レオパレスの株価は上昇した。深山一族はレオパレスの経営から外れても、再び顧問とか相談役で戻ってくるでしょう。彼らの資産を担保的に当て込んでいるわけですから」(証券関係者の話)

 企業ぐるみの建築不正であるにもかかわらず、国交省は追及の力を緩め、一部オーナーたちが追及自体を躊躇するという不可解な状況。そこに、SMBCの采配でレスキューが動いているということだ。同じビジネスモデルの兄弟会社MDIが上場すれば、一般投資家の金が、不正を行った企業の救済に回されるという呆れた展開となる。



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