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大阪城エレベーター発言を生んだ安倍自民党の体質

2019年7月 3日 09:30

ミス.png 参議院選挙を前に、弱者に冷たい安倍晋三首相らしい発言が飛び出した。
 舞台は、先月28日に開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の夕食会。挨拶に立った首相は、復元された大阪城にエレベーターが設置されたことを「大きなミス」と発言し、「障害者への配慮が足りない」などと批判が相次ぐ事態となった。
 一強の驕りが生んだ“大きなミス”となりそうだが……。
(右はG20夕食会で挨拶する安倍首相。官邸HPより)

■弱者への配慮を欠いたエレベーター発言
 G20サミットの夕食会、冒頭の挨拶で首相はこう発言した(以下、官邸ホームページより)。 

 皆様、改めてようこそ大阪にいらっしゃいました。ここ大阪は、4世紀頃に仁徳(にんとく)天皇により都に定められ、その後商業の町として発展してきました。大阪のシンボルである大阪城は、最初に16世紀に築城されました。石垣全体や、車列が通った大手門は、17世紀始めのものです。150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に16世紀のものが忠実に復元されました。しかし、一つだけ大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまで付けてしまいました。

 その大阪城を間近に望むこの場所で、先ほど日本が誇る3名の演者が、皆様のために心を込めてそれぞれ舞い、演奏、そして歌を披露していただきました。

 皆様、すっかりお腹を空かせているのではないかと思いますので、挨拶は短ければ短い方が良いとは思いますが、少しだけ夕食について説明をさせていただきます。今晩の夕食は、持続可能性と美食を融合させるとの考え方の下、里山コンセプトに構成しています。詳しくはお手元のブックレットを是非御覧ください。

 私たちは、今日一日充分もう仕事をしましたので、この後は皆様どうかゆっくり食事を楽しんでいただきたいと思います。私が、乾杯、と日本語で言いますので、その後通訳を待たずに杯を上げてください。平らな杯でこぼれやすいので、どうか着席のまま乾杯をしていただきたいと思います。

 それでは、G20大阪サミットの成功、そして世界の平和と繁栄、お集まりの皆様のますますの御健勝を祈念して、乾杯。

 まず、発言の前提となった「天守閣は今から約90年前に16世紀のものが忠実に復元されました」が間違い。外観の基になったのは『大坂夏の陣図屏風』と言われているが、豊臣政権時代の天守と徳川時代の天守が混在する姿となっており、「16世紀のもの」とはかなり違っているからだ。そもそも、忠実に復元していれば、鉄筋コンクリートの城にはなっていなかっただろう。

 付け焼刃の知識をひけらかす首相にウンザリしたが、一番の問題はこの後の発言――「しかし、ひとつだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまで付けてしまいました」――だった。

 “せっかく忠実に復元したのに、16世紀にはないはずのエレベーターまで付けた”というジョークのつもりだったのだろうが、まったくウケなかった。首相官邸のホームページで公表されている夕食会の動画を確認してみたが、首相発言を聞いた会場の各国首脳たちは一様にシラケ顔。笑いは一切起きていない。「こいつ、何言ってるの?」が本音だったのではないか。(*下が大阪城発言直後の夕食会場の様子。官邸HPより

ミス2.png

 なぜエレベーター設置が「大きなミス」なのか――。各国首脳はもちろん、挨拶の模様を見た多くの人が、この首相発言には疑問を抱いたはずだ。『五体不満足』で知られる作家の乙武洋匡氏は、ツイッターに「とっても悲しい気持ちになる」と投稿。これを機に「障害者への配慮が足りない」「バリアフリーの現状を理解していない」などと批判が続出し、「単なるジョーク」と擁護する意見もあって、波紋は広がった。

 批判と擁護の両論があるのはたしかだが、やはり「大きなミス」という言葉は不適切である。大阪城を訪れる人の中には、当然車椅子の人もいるだろう。お年寄りもいれば、小さな子供もいる。ベビーカーに乗った赤ちゃんもいるはずだ。バリアフリーの観点から言えば、やはりエレベーターがあった方がいいに決まっている。

 エレベーター利用に頼らざるを得ない弱い立場の人たちを前に、「エレベーター設置はミスだ」と言えるのか?まともな神経の持ち主なら、絶対口にはしない一言だろう。安倍首相のG20サミット夕食会での発言は、「弱者への配慮を欠く暴言」と受け取られてもおかしくあるまい。

 ちなみに、築城当時の姿をそのまま残す「現存天守」は全国に12カ所。それ以外に20ほどある各地の天守閣は、すべて復元されたものだ。いずれも地域のシンボルとして整備されたが、復元にあたっての考え方は様々。昭和の時代に整備された天守は鉄筋コンクリート造りが多かったというが、木造にこだわった城もある。復興天守にエレベーターを設置している城は岡山など少数だが、地震で大きな被害を受けた熊本城は、復旧計画の中でエレベーター設置を決めている。

■一強に驕る自民党
 安倍首相の「エレベーターは大きなミス」が問題視されるのは、この発言が「弱者」に冷たい安倍自民党の象徴ととらえられたからではないのだろうか。近年、一強に驕る自民党の議員たちによる暴言、失言が相次いでいるのは周知の通り。とくに、被災地の住民や女性といった弱い立場の人には容赦ない。選挙前に、もう一度そういった事例を振り返っておくべきだろう。
 
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