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「牽強付会」も過ぎれば滑稽 聞いて呆れる「改憲が民意」

2019年7月24日 08:50

安倍会見.png 参院選を戦い終えた安倍晋三首相が、議席を減らした選挙を「勝った」と強弁し、憲法改正について有権者が「審判を下した」と言い出した。牽強付会もここまで来れば滑稽。ただし、度が過ぎれば“独裁”につながるだけに、見過ごすわけにはいかない。(右は22日の総裁会見。自民党HPより)

牽強付会(けんきょうふかい):自分の都合のいいように、強引に理屈をこじつけること。道理に合わないことを、自分に都合のよいように無理にこじつけること〕
 
■総裁会見での発言
 参院選の投開票から一夜明けた22日、安倍首相が自民党総裁としての記者会見を開き、今後の政権運営について思いを語った。この中で首相は、憲法改正について次のように述べている。

この選挙では、憲法改正も、大きな争点となりました。

憲法改正を最終的に決めるのは、国民投票。すなわち国民の皆様です。そして、その案を議論するのは、私たち国会議員の責任です。

しかし、その改正原案を審査すべき憲法審査会は、野党の協力が得られず、この1年間、衆議院ではわずか2時時間余り、参議院ではたった3分しか開かれていません。

街頭演説のたび、議論を前に進める政党を選ぶのか、それとも、議論すら拒否する政党を選ぶのか?今回の参議院選挙は、それを問う選挙だと、私は、繰り返し申し上げてきました。

少なくとも「議論は行うべきである」。これが国民の審判であります。野党の皆様には、この民意を正面から受け止めていただきたい。今後は、憲法審査会において、与野党の枠を超えて、真剣な議論が行われるものと確信しています。

 わが党はすでに、自衛隊の明記、教育無償化など4項目について、憲法改正のたたき台を提示しています。

 立憲民主党をはじめ、野党の皆さんにも、是非、それぞれの案を持ち寄っていただきたい。そして、憲法審査会の場で、憲法のあるべき姿について、是非、活発な議論をさせて頂きたいと考えます。

 衆参両院で3分の2というハードルは極めて高いものでありますが、そうした議論を深める中で、与野党の枠を超えて、3分の2の賛同が得られる改正案を練り上げていきたい。

 私たちのたたき台は、最善と考えるものを提案させて頂いていますが、この案だけにとらわれることなく、柔軟な議論を行っていく考えです。

 令和の時代にふさわしい、憲法改正案の策定に向かって、衆参両院の第一党として、わが党は、今後、強いリーダーシップを発揮していく決意であります。

 「少なくとも『議論は行うべきである』。これが国民の審判」――このフレーズは、選挙戦の“勝利”を前提としたものだが、下の結果を見ても本当に自民党は勝ったと言えるのか?

選挙結果.png

■じつは「敗北」 ― 失った単独過半数と3分の2
 自民党の改選議席は66だったが、当選したのは57人。9議席も減らした結果、非改選(56)と合わせて113議席となった。参院の定数は245。自民党は単独過半数の123を、10議席も割り込んだ形だ。改憲勢力にカウントされる公明と日本維新の会は、ともに3議席増と踏ん張ったが、自民・公明・維新を合わせても81議席がやっとで、参議院で改憲発議が可能となる3分の2(164議席)を維持するために必要な85議席には届かなかった。

 かつての自民党なら、単独で過半数をとるか否かが勝負の分かれ目だったはず。そうした意味においては、自民党の得た57議席は事実上の敗北だ。さらに、改憲勢力は国会発議に必要な3分の2を失っており、これはむしろ『改憲は必要ない』という審判が下ったとみるべきだろう。安倍首相の「『議論は行うべきである』。これが国民の審判」は妄言と言っても過言ではない。

 下は、選挙後に行われた共同通信の緊急世論調査結果を伝える24日朝刊の紙面だが、安倍首相の下での憲法改正に「反対」と答えた人は56%。「賛成」は32.2%に過ぎなかったことが報じられている。

共同調査.jpg

 ついでながら会見で首相は、自らのご都合主義を見事に証明してみせた。“国民の審判”に続く「野党の皆様には、この民意を正面から受け止めていただきたい」というフレーズだ。

 沖縄では2度の知事選で辺野古移設反対派が圧勝し、国政選挙でも度々移設反対派が勝利してきた。今回の参院選も、移設反対派が大差で自民党の候補をくだしている。民意は明らかに「辺野古移設反対」で、明確な意思が示されているにもかかわらず、首相は辺野古の工事を見直そうともしていない。改憲に関して、でっち上げの審判=民意を平気で創作する一方、自分にとって都合の悪い“沖縄の民意”は無視――。牽強付会もここまで来ると見苦しい。

■産経、読売の牽強付会
 ところで、開票結果を報じる新聞各紙の紙面には、政権との距離感、憲法との向き合い方が如実に表れていた。下の写真、上段が西日本・朝日の22日朝刊の紙面。下段が、産経・読売の同じ日の紙面である。西日本や朝日は、改憲勢力が「3分の2」に届かなかったことを重く受け止める見出し。一方、産経と読売は与党の勝利を強く印象付けることを狙った見出しの付け方だ。

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 極右の御用新聞である産経は、開票途中での締め切りをいいことに、見出しでは「3分の2」に一切触れずじまい。記事の中で、《憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会発議に必要な3分の2(非改選議席と合わせて164議席)を下回る可能性がある》と書くにとどめている。

 同じ御用新聞でも、読売にはわずかながら報道機関としての矜持が残っているらしく、自民党が単独過半数を失ったことをきちんと記事にし、申し訳程度ではあるが「与党・改憲勢力3分の2割れ」という見出しを使っていた。

 報道の使命は、権力の監視にある。伝えなければならないのは、首相を中心とする改憲勢力が、改憲の必要性を訴えながら3分の2を割り込んだという事実であり、じつは自民党が単独過半数を維持出来なくなっているという現実だろう。産経や読売の「与党大勝」的な報道は、それこそ牽強付会。どの新聞がまともな「報道機関」であるかは、一目瞭然と言えるだろう。 




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