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「改憲」を認めるつもりですか?

2019年7月 8日 09:50

senkyo_img-thumb-270xauto-25080.jpg 参院選の公示からたったの2日で、序盤戦の情勢をさぐる報道各社の調査結果が出そろった。予想通り、自民・公明で「改選過半数」を超える勢い。有権者の4~5割が投票先を決めていない状況ではあるが、野党が大勝する見込みはなくなった。
 安倍内閣が4割超、自民党も3割前後の支持を得ている現状では当然の結果なのかもしれないが、この国の有権者は本当に「改憲」を認めるつもりなのだろうか?

■微妙な「3分の2」維持
 朝日新聞と毎日新聞は、自公が改選124議席の過半数を占める勢いだとする一方、日本維新の会などを加えた「改憲勢力」が憲法改正の発議に必要な3分の2に届くかは微妙との見通しを報じている。
(下は、朝日、毎日のデジタル版画面)

毎日.png

朝日.png

 改選定数は124(選挙区74、比例区50)。首相は勝敗ラインを、非改選70と合わせ自民・公明で参院全体の過半数(123)を得ることになる53議席に、二階俊博幹事長らは改選過半数の63議席に設定している。いずれも前々回や前回の選挙結果を大きく下回る数字であり、政権側が、厳しい状況を考慮して低い目標を掲げた格好だ。(*下の表参照)

改選非改選.png

 32の1人区で選挙協力を実現させたとはいえ、野党が擁立したにわか仕立ての候補者たちが、知名度で劣るのは事実。不甲斐なさが目立つ野党の現状、さらには高い内閣支持率や自民党支持基盤の厚さからいって、与党が「改選過半数」を得るのは当然だろう。焦点は、「改憲勢力」が3分の2を維持できる85議席をとれるか否かである。

 そこをどう見るかだが、朝日は“中心値”で自民が59議席、公明を14議席と分析(与党だけで73)。毎日も同じような調査結果を報じている。前掲の表にあるとおり、自公の改選議席は77。今回、日本維新の会が大阪ダブル選以来の勢いそのままに8議席とり、与党が77を維持すれば、安倍首相は悲願の憲法改正に向けて衆参両院での「発議」を強行する可能性が高い。有権者は、本当に改憲を認めるのだろうか?

 安倍首相は、参院選の争点の一つとして「憲法改正」をあげている。政策集の隅に、小さく書いているわけでない。自公が勝てば、3分の2を割り込んでも「改憲が容認された」と主張するだろうし、自公+維新で85を超えれば、当たり前のように改憲発議へと進むはずだ。そうなってから「改憲を認めたつもりはない」と抗議しても遅いということを、有権者は十分に自覚して投票すべきだろう。

■安倍の狭量と「悪夢」の6年半
 参院選前後に各報道機関が行った党首討論を見たが、象徴的だったのがTBSの報道番組での一幕。 進行役が、自民党本部が所属議員に配布した「フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」というインチキ冊子を取り上げた瞬間、安倍首相が色をなして野党攻撃を始めたのである。

 冊子の内容には一切触れず、興奮して野党が統一候補を立てたことを「無責任」などと批判。進行役の制止を無視して、野党を罵り続けた。一国の宰相とは到底思えぬ狭量――。嘘とでっち上げと“恫喝”を政権運営の柱にしてきた首相らしい振る舞いだった。

 首相は、民主党政権の時代を「悪夢」だったと罵倒する。たしかに、旧民主党は政治経験に乏しく、幼稚な政権運営が目立った。しかし、民主党政権時代に起きた本当の「悪夢」は、東日本大震災であり、その後に日本が陥った混乱だろう。「自民党ならうまくやれた」という主張もあるが、それなら当時、立派な対案が出せていたはずだ。記者は、「自民党案の方がすばらしい」という声など聞いた記憶がない。

 私事で恐縮だが、記者は旧民主党政権に大変感謝している。高校の授業料無償化を実現してくれたおかげで、2人の子供を無事に大学まで通わすことができたからだ。その政策は安倍政権下でも引き継がれ、多くの過程が恩恵に浴している。少なくとも記者にとっては、民主主義を平然と踏みにじる安倍政権の6年半が「悪夢」であり、旧民主党政権は感謝の対象でしかない。

■大人の責任
 現在の野党は、たしかにふがいない。旧民主党は国民民主と立憲民主に分かれ、主導権争いに明け暮れてきた。憲法や原発といった主要政策に関する主張もまちまちだ。だが、野党を育てなければ、この国の民主主義は機能不全となるし、現に安倍独裁政権下では「民主主義」が死語になりつつある。それは、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法、森友・加計、老後2,000万円問題での政権の対応を振り返ってみれば分かることだ。今回の参院選で問われているのは、6年半も続く安倍政治と「改憲」の是非。不満は残るが、育てる意味でも野党に力を貸すべきだろう。

 憲法は権力側を縛るための規定である。ならば改憲は、大多数の国民が必要性を訴えた時にこそ踏み出すべき道であって、政権が誘導すべきものではあるまい。首相は「自衛隊のために憲法を変える」と明言しているが、憲法が自衛隊のためにあるのではないことぐらい、子供でも知っている。戦争好きの安倍による改憲を止めるのは、大人である私たちの責任だと思うのだが……。



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