国会終盤でようやく実現した党首討論も、盛り上がりを欠いたまま終了。安倍晋三首相と野党党首らの論戦は、見ていてイライラが募る低調なものだった。
立憲民主・枝野幸男代表の腰が引けた質問に、国民民主・玉木雄一郎代表による目立たんがための演説、論点をすり替えるために長広舌をふるう安倍首相――。与野党の政治家たちが、揃いもそろって“税金泥棒”であることを再認識させられた45分間だった。
この国の政治は、どこまで堕ちるのか。
(右は19日の党首討論。衆議院のHPより)
■あそばれる野党
党首討論が終わった19日の夕方、永田町関係者の間に「国会延長」の噂が駆け巡った。自民党筋の話という解説もあれば、公明党関係者から聞いたとする説まで様々。対決法案がないこの時期の国会延長は、衆参ダブル選挙への布石となるため、「やはり解散か」と情報収集に走る議員もいた。
ダブル選の噂に信憑性を与えたのは、党首討論で衆議院の解散について質問した日本維新の会の片山虎之助共同代表に、首相が返した次の答弁だった。
「(解散は頭の)片隅にはないし、片隅にもない。まずはしっかりと党首討論においても議論をしていきたいし、どのように展開していくかということは国会の皆様にお任せしているので予測できない」
していくかということは国会の皆様にお任せしているので予測できない」
「片隅にはないし、片隅にもない」という珍妙な日本語のあとについた「予測できない」に、憶測が飛び交ったのは言うまでもない。
ところが一夜明けると会期延長も解散も雲散霧消。新聞の1面には、次のような見出しが踊っていた(下は、西日本新聞6月20日の朝刊紙面)。
ある野党議員は、苦笑しながら次のように話す。
「最後まで、官邸や自民党に振り回されたということだ。党首討論後、枝野さんが不信任案提出を匂わすような発言をしたとたん、突然の解散風。一瞬の風に過ぎなかったが、野党議員は縮こまってしまった。官邸は二ヤついていただろう。
野党は、解散総選挙が怖くて仕方がない。なんせ、候補者がいない。しかも、立憲の支持率はジリ貧。結党当時の勢いはなくなり、3%台だ。国民民主はさらに悲惨。0%台の支持率しかない政党から、立候補しようという奇特な人物は、まずいない。解散されて一番困るのは、旧民進党系なんだ」
■吉本芸人とのおふざけに興じる総理大臣
不甲斐ない野党に問題があるのは確かだが、この国を堕落させた張本人は安倍晋三首相だろう。
2013年の特定秘密保護法、14年の集団的自衛権の行使容認、15年の安保法と国の根幹を変容させる度に、国民の反対意見を踏みにじって「民主主義」を無力化した。沖縄では民意を無視して米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を強行。秋田でも、イージス・アショアの導入をゴリ押しする構えだという。「独裁」を言いかえたものが、「一強」ということだ。
独裁者の常ではあるが、安倍も都合が悪い話からは逃げ、大衆うけしそうな話題には飛びつく。
予算委員会は“国会の花形”と言われるが、今年3月から1度も開かれていない。未解決のままの森友・加計、老後の2,000万円、さらには外交の失敗と予算委で責められる材料が山積しているからだ。ようやく開いた党首討論も、全体で45分というお遊びに過ぎなかった。
正面からの議論を避ける一方で、首相は今年4月、大阪市内で主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会場を視察した後に吉本興業の常設劇場「なんばグランド花月」を訪問。お笑い芸人らと舞台に立った。(*以下、2件の画像は総理官邸のHPより)
そして今月6日には吉本新喜劇のメンバーが、総理大臣公邸に首相を表敬訪問。再びおふざけに興じ、関係者の顰蹙を買う事態となっていた。
国会審議を拒否しながら、昼日中からお笑い芸人と戯れる安倍首相――。この軽さ、無責任さが支持率4割につながっているのだとすれば、日本はいよいよ低俗化していることになる。