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問われる国民民主党“公認料返還誓約書”の法的効力

2019年6月19日 09:05

DSCN0944.JPG 先週14日、国民民主党福岡県総支部連合会(以下、「県連」)が、統一地方選挙の公認候補に異例の「誓約書」を提出させていたことを報じた。
 誓約書の内容は、事実上“公認料”で所属議員の政治的自由を縛るという非常識なもの。読者から「信じられない」「末期的」「憲法違反」などと同党県連に対する批判の声が寄せられたが、「離党したいが、返済できなくて困っていた」「誓約書に法的な拘束力があるとすれば、私は4年間も政治的な自由を奪われる」という切実な訴えもあった。離党予備軍からのSOSであることは言うまでもない。HUNTERの記者が、法律の専門家に話を聞いた。

■カネの力で離党防止
 問題の誓約書は昨年、統一地方選挙に向けて候補者擁立作業を進めていた国民民主党の福岡県連が、公認候補者に提出を義務付けたものだ(*下がその誓約書。画像の一部はHUNTER編集部が加工)。

誓約書.jpg

 公認をいただいたのち、公認料を受領する際には、当落に関わらず、選挙後四年間は党員としては勿論のこと、私人としても道義的・倫理的・人間的な忠義に則り、党倫理規則を遵守し、国民民主党の綱領に基づく政策の実現を目指した政治活動に邁進することを誓います。
 また、これらの誓約事項に反する行為を行った際には、受領した公認料をはじめ、国民民主党の公認候補として支援いただいた資金を全額返還いたします。

――同党関係者の話によれば、この誓約書は「離党防止」が最大の目的。昨年5月の結党以来、相次ぐ国会議員や地方議員の離党を防ぐため、福岡県連の幹部が独自に考えた内容だという。「統一地方選で落選するまで県連会長を務めていた元県議が、県議会での勢力維持を図るため高額な公認料で所属議員を引き付け、最終局面で踏み絵を踏ませた」(県連所属議員)という証言もある。
 
 誓約書に離党防止の目的があったことは確かで、統一地方選後に離党を示唆した議員に、「公認料は返してもらう」と言い放った県連の関係者もいたという。

 離党を視野に入れているというある地方議員は、困惑気味にこう語る。
「昨年から今年にかけて、国民民主党は迷走してきた。立憲民主党と国会議員の数を張り合い、慎重論を無視して自由党との合併を決めた。一体、誰のための政治なのか……。
 4月の統一地方選挙では、公認された県議や政令市市議に公認料として300万円も支給した。2015年(の統一地方選)の時の2倍以上。他の地方議員も、前回をはるかに超える公認料をもらったはずだ。高額な公認料とセットになっていたのが誓約書。提出しなければ、公認がもらえない。よく考えずに書いた人が大半だったのではないか。離党防止に利用されるとは思ってもみなかった。離党したいが、返すカネはないし、情けないが正直困っていた」

 HUNTERに寄せられた複数の問い合わせも、たしかに離党予備軍からのもの。その中の一人は、誓約書に関する配信記事を見て、「やっぱりこの誓約書はおかしい。法的な返金義務があるのだろうか」と考えるようになったという。

■違法性が問われる誓約書の内容
 政治活動の自由はもちろん、思想・信条までカネで縛ろうという国民民主の誓約書。契約関係に詳しい弁護士に、法的な解釈を聞いた。

Q:国民民主党の「誓約書」には、離党者に「公認料を返せ」と言える法的な力があるのでしょうか?
A:誓約書や誓約書に出てくる「倫理規定」も確認しましたが、離党した人が返金せず裁判になっても、国民民主党が公認料を取り返すことは難しいと思います。

Q:返金する義務もないと考えてよろしいのでしょうか?
A:順番に説明しましょう。まず、「公認料」というものの性格は何かということです。これは、党から候補者あるいは候補予定者に対する「寄附金」なんですね。政治的な寄附ですから、「公認料」は、政治活動や選挙運動に供させることを目的とした寄附。公認料をもらった側が、きちんと政治活動や選挙運動を行っていれば、何も問題はありません。もちろん、政治活動も選挙運動もしなかった――つまり詐欺なら話は別ですが、目的にかなった活動の実態があれば、問題はないと考えるのが妥当です。

Q:「忠義に則り」、「倫理規則を遵守」するための公認料ではないという解釈ですね。
A:忠義に則ることや倫理規則を遵守させるために公認料の返還を義務付けることや、返還を条件に寄附することができるのかという点について考えなければなりません。じつは、寄附するにあたって条件を付けること自体に違法性が生じるんです。

Q:「離党するなら返金しろ」という論法は成り立たたない?
A:成り立ちませんね。そもそも、誓約書のどこにも、離党すれば返金などという文言はありません。あれば、違法性が問われることが、分かっていたのかもしれませんが……。

Q:なるほど。あえて「離党」を入れなかったと――。
A:だから、この誓約書には「離党」という文言が出てこない。

Q:すると、この誓約書は「離党は許さない」という脅しの材料ということですね。
A:それは何とも言えませんが、HUNTERで書かれているように、お金の力で政治的な自由や思想信条を縛ることは、それこそ憲法違反に問われかねない。もちろん、先ほどから話しているように、離党しないことを寄附の条件にすることもできません。まともな考え方をすれば、こうした誓約書はあり得ないということでしょう。

 たしかに、何十年も政治の世界を見てきたが、こんな非常識な誓約書は見たことがない。カネで政治活動の自由を縛るという考え方自体が、間違いなのだ。法的な拘束力がない誓約書を盾に勢力維持を図るしかない国民民主党の焦りが、支持率0%台という現状を招いているのではないだろうか。



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