4月の福岡県知事選挙でも争点になった「宿泊税」の問題に、ようやくケリがついた。
24日、小川洋福岡県知事と高島宗一郎福岡市長が、懸案となっていた宿泊税の取り扱いについて協議。福岡市内に限って宿泊料2万円未満の場合は市税150円、県税50円を徴収し、2万円以上では市税450円、県税50円とすることで合意した。二重課税は全国初。福岡市以外の市町村では、県が一律200円を徴収する。
突然の合意は、「五輪を前に時間がない」が表向きの理由。しかし、水面下では早くから「市税150円、県税50円」を落しどころとする動きがあった。市と県が歩み寄るきっかけとなったのは、“県知事選挙”である。
■突然の「合意」、きっかけは知事選
宿泊税の導入で先行したのは県。2016年から新たな財源として導入に向けた検討を開始していたが、福岡市議会が18年9月に宿泊税導入の条例案を可決したことで、両自治体が対立する事態となっていた。
今年4月の福岡県知事選挙では、現職の小川洋知事に対抗して麻生太郎副総理兼財務相と県議会主流派が元官僚のテレビコメンテーター武内和久氏を擁立。高島市長は、市側に宿泊税の徴税権を譲るとした武内氏を支援していた。
保守分裂となった知事選は、投開票の結果約95万票の大差をつけて小川氏が勝利。高島市長の不利に働くものとみられていたが、統一地方選の後半戦が終わったあたりで県と市が急速に歩み寄り、実務者協議で合意点を確認し合う状況となっていた。小川知事と高島市長による、24日の合意内容をまとめるとこうなる。
宿泊税について、一歩も譲らぬ姿勢を見せていた小川知事と高島市長。知事選で激しくぶつかった後だけに迷走が続くものと思われていたが、あっというまの合意だった。皮肉なことに、きっかけとなったのは両者が敵対した“県知事選挙”。保守分裂が、思わぬところでプラスに作用したと言うしかない。
関係者の話によれば、高島市長と距離を置いてきた県議会の主流派が、知事選で敗戦濃厚となっていた武内氏支援に踏み切った市長側と急接近。「市税150円、県税50円」が協議のテーブルに乗ったことで、合意につながったという。ある県議会関係者は、匿名を条件にこう話す。
「昨年から、水面下で動いていたのは県議会側。情報収集を続け、市長の考えを探っていた。『市税150円、県税50円』でまとまるとみて、小川知事と市長サイドに合意案を提示したようだ。おそらく、知事選の告示日にあった武内の出陣式あたりがスタート地点。お互いに距離を置いていた県議会の主流派と市長が、初めて向き合った。あとはトントン拍子。タイミングの問題だった。
宿泊税の問題に政治生命をかけると約束した知事にとっても、武内惨敗で影響力低下が囁かれるようになった市長にとっても、渡りに船の話で断る理由などない。市も県も、市長も知事も、すべての関係者の顔がたったということだ」
これまで市長は、麻生財務相やその系列の政治家としか付き合いがなく、県議会主流派とは不仲だったという。麻生氏と近い北九州の県議が、福岡市政に影響力を持つ「異常事態」(ある自民党市議)が続いてきたのも確かだ。それが一転、保守分裂となった知事選の過程で県議会主流派と高島市長が手を組んだ形――。福岡県政界の今後の流れが、大きく変わる可能性が出てきた。