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【トランプ来日】屈辱のポチ外交とその先にある憲法改正

2019年5月28日 07:45

20150623_h01-01t-thumb-250x166-14381.jpg 25日、米国のトランプ大統領が新天皇即位後初の国賓として来日した。日程をみると、まさに「接待外交」。4日間の滞在中、正式な首脳会談はたった1回だけで、あとはトランプを喜ばすための“おもてなし”に費やされている。
 安倍晋三首相は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、独立国家としての誇りや我が国固有の伝統・文化の大切さを訴えてきたが、実際にやってきたのは米国追随のポチ外交。世界が白眼視する人種差別主義者・トランプを褒め称え、米国の“しもべ”であり続けることが政権の基本方針なのである。
 安倍が悲願とする憲法改正も、じつはアメリカの利益のためだ。

■大統領を接待漬け
 安倍首相とトランプ大統領の会談は、今年4月に続くもの。6月に行われるG20大阪サミットでも会談する予定で、3か月連続は異例なのだという。しかし、今回の来日で正式な首脳会談は1度きり。滞在中のほとんどを、“歓迎行事”で埋めた格好だ。
 
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 トランプ政権との蜜月を演出し、夏の参院選に向けて外交上の成果をあげる狙いだったが、懸案となっている通商交渉や北朝鮮問題については結論を先送りしただけ。大相撲の観戦ルールまで変えさせたポチ外交は、明らかな失敗だった。

■「かが」乗艦こそ最大の目的
 もっとも、ポチ外交の一番の目的は、海上自衛隊の護衛艦「かが」にトランプを乗艦させることだったのではないか。「かが」は同型艦「いずも」とともに、“空母化”が決まっている護衛艦。政府は、米国製のステルス戦闘機F35を100機購入し、うち42機を「いずも」と「かが」に搭載する予定となっている。
(下が護衛艦「かが」。海上自衛隊のホームページより)

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 護衛艦といっても「いずも型」は全長248m、全幅38mの巨艦。かつて世界一を誇った帝国海軍の「大和」の全長が263.0m(全幅:38.9m)だったことを考えると、いかに大きな艦船であるのか分かるだろう。その空母2隻を、集団的自衛権の名のもとに米軍の補助勢力として戦闘に参加できるようにしたのは安倍首相。「私はやりました」と胸を張りたかっただろう。わざわざトランプを横須賀まで連れ出し「かが」に乗艦させた安倍首相を見ていて、高価なおもちゃをひけらかす金持ちのボンボンを想起してしまった。

 ただの持ち物自慢なら可愛げがあるが、空母化された巨大艦が戦闘機を搭載して海外に出て行くということは、「専守防衛」という基本方針の放棄を意味する。国是を捨ててまでアメリカの言いなりになる日本が、本当に独立国家と言えるのか疑問だ。

■日本の国防費支出を喜ぶ米国
 なんでも言うことを聞く日本は、米国にとってのお得意さん。勧められたら、どんなに高額な戦闘機でも防衛装備品でも買ってしまうのだから、笑いが止まるまい。安倍政権は一昨年、地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」2基の導入を決めたが、費用は約6,000億円。前述したF35100機の購入費用に1兆円かかるとみられており、異常とも思える米国への大盤振る舞いが常態化しつつある。喜んでいるのは軍産複合体国家であるアメリカだけ。日本の納税者はたまったものではない。

 安倍政権を支持し、一強の政治状況を容認してきたのは国民だ。だからこそ、アメリカのためなら国民の意思や暮らしを平然と犠牲にする安倍政治が、6年以上も続いている。沖縄では、軟弱地盤の存在が明らかとなり本当に建設可能なのかどうか怪しくなっている辺野古新基地の工事を強行し、鹿児島では馬毛島(西之表市)を民間企業から強奪して米空母艦載機の陸上離着陸訓練場に充てる計画だ。アメリカのため、着々と進む戦争準備。その仕上げが「憲法改正」である。

■憲法を“押し付けた”米国にへつらう安倍首相
 政治家・安倍晋三が掲げてきたのは「戦後レジームからの脱却」。「憲法を頂点とした行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組みの多くが、21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっている」(安倍首相の公式ホームページより)から、「戦後レジームからの脱却」が必要であり、そのためには「憲法改正が不可欠」なのだという。

 安倍首相が改憲理由の第一にあげるのは、現行憲法が我が国独自のものではなく、連合軍総司令部(GHQ)=アメリカからのもらいものであるとする主張。いわゆる「押し付け憲法論」だ。根底にあるのは、個人の自由や人権の重要性を強調することが、日本の伝統・文化を破壊するという間違った考え方である。改憲を主張する極右の論客が、二言目には「国益」「国家」と口にするのはそのせいだ。

 一般的に、「戦後レジーム」とは第二次世界大戦後に確立された世界秩序の体制を言うはずだが、安倍首相がいう戦後レジームとは、前述したように「憲法を頂点とした行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組み」のことだ。アメリカに押し付けられた憲法を変えなければ、戦後レジームからの脱却はできないと安倍は説く。

 しかし、安倍の主張に無理があることは、中学生でも分かる。戦後の日本が憲法によって支えられてきたのは確かだが、ある時期まで内政や経済に専念できたのは、「日米安保条約」があったからこそ。日本は、アメリカの軍事力の傘の下で奇跡の復興を遂げたと言っても過言ではあるまい。ならばこの国における戦後レジームの主要な柱は日米安保条約。首相が本当に「戦後レジームからの脱却」を実現したいのなら、日米安保を見直した上で沖縄の基地をなくし、思いやり予算を国内の福祉や教育に回せばよい。憲法改正と戦後レジームからの脱却には、何の関係もない。

 現行憲法を「アメリカから押し付けられた」と言って否定する安倍氏が、歴代首相の誰よりもアメリカにへつらい、屈辱のポチ外交を展開してトランプの言いなりに武器や防衛品を購入するという現実――。滑稽と言うほかあるまい。



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