今、永田町で話題になっているのが政治団体「NHKから国民を守る党」(以下「N国」)の存在。4月に行われた統一地方選挙の後半戦で首都圏や関西を中心に47人を擁立し、26人も当選させたのだから当然だろう。NHK本社のある渋谷区でも区議会議員が誕生しており、現職13人から3倍増となる躍進ぶりだ。同党は、夏の参院選で国政進出を目指すという。
そのN国と、こちらも何かと話題の日本維新の会・足立康史衆院議員との間にバトルが勃発し、関係者の注目を集めている。
(右の画像は「NHKから国民を守る党」のHPより)
■躍進したN国
N国の主張は、「NHKに金を払わない、受信料を払わない人を応援する」というわかりやすいもの。NHKの集金活動に悩む人に対して、「NHK撃退シール」なるものを配るといった活動も展開している。ワンイシューがうけたのか、反NHKの主張が共感を集めたのか、4月の統一地方選挙後半戦では同党の候補者が大量に当選。これまで黙殺してきた大手メディアも、報道せざるを得ない事態となった。
首都圏を見ると、N国の候補者が当選して「日本維新の会」の候補者が落選している地域もあるほど。維新の会を離党して、N国に移動した議員もいたのだという。維新が強固な地盤を誇る大阪は別として、首都圏ではN国が確実に勢力を拡大している状況だ。
■バトル勃発
こうした現状に危機感を持ったは、日本維新の会の足立康史衆院議員。5月14日の衆議院総務委員会で、「“NHKから国民を守る党”という、よくわかんないグループがですね、いま東京などの地方議会で議席を獲得しています」「国民に促して、『受信料を払うな』という運動をしている政治集団ですね。私はこれ、大変問題がある。違法行為を促すね、視聴者に違法行為を促すような活動をしているこのNHKから国民を守る党。これ総務省、どうとらえていますか?」と問題提起。さらに踏み込んで、「この集団は何もよくわかっていない国民に違法行為を促しています。これもうユーチューブに出てますから。私はNHKから国民を守る党から国民を守るためにね、しっかりとこの国会で広く国民のみなさまに支持されるような放送と通信の大融合時代を作っていくために、しっかりと働いていくことをお誓いをしたいと思います」と宣戦布告した。
N国の支持者は一定数いるようで、足立氏のSNSには、「それだけNHKには不満を持ってる人が多いんだから、法律を何とかしろ」などと反論の投稿が次々に――。しかし、「炎上は意図的」と豪語するほどケンカ上手の足立氏は意に介さず、ツイッターでN国批判を続けている(下は、足立氏のツイッター投稿)。
足立氏とのバトルで益々注目を集めるN国だが、参院選の比例区に候補者を立てるには、比例と選挙区を合わせ10名以上の候補者を立てなければならない。そのために選挙区に7名、比例で立花氏を含め3名を立候補させるというのだが、選挙にはとにかくカネがかかる。
比例区の供託金は1人600万円、選挙区は1人300万円かかる。最低でも3,900万円が必要になるが、N国は統一地方選挙で公認候補として立候補し当選した人に一定額を寄附させ、参院選の資金に充てるつもりのようだ。他人の選挙費用を貢がせる手法もどうかと思っていたら、案の定、その寄附の徴収を巡って内輪もめが起き、拒否した数名が除名されている。
N国躍進の報道番組を見ていたある野党関係者は、ため息交じりにこうつぶやいた。
「安倍政権の批判では当選できないのに、NHKの悪口を言っただけで当選する地方議員がいるってことだよね。どうなってるのかな、この国は……」