高レベル放射性廃棄物(核ゴミ)の最終処分場誘致を巡って、様々な疑惑が噴き出す鹿児島県南大隅町。町政を歪めてきたのは、色欲まみれの町長・森田俊彦氏である。核ゴミ処分場誘致の約束と引き換えに、高級料理店やクラブで接待を受け、デリヘル嬢の派遣まで受けていたというのだから呆れた権力者というしかない。
昨年暮れには、初当選した2009年の町長選挙に際し、核ゴミ処分場推進派の仲間から1,000万円の現金を受け取っていたことが発覚。再び物議を醸す状況になったが、森田氏は「選挙ではなく、事業資金を借りただけ」としてお得意の嘘八百で逃げ切りを図る構えだ。(写真は南大隅町役場。円内が森田町長)
■カネは返さず、車を買って自宅を改装する神経
森田氏に1,000万円を用立てたのは、核ゴミ処分場の必要性を訴えてきた東京の会社代表や処分場誘致に賛成する町内の男性ら4人。2009年の町長選直前、森田氏の要請に応じ計1,000万円の現金を2回に分けて“選挙資金”として渡したという。貸し借りの形にしたため借用書も残っていたが、核ゴミ処分場の誘致が成功していれば帳消しになる可能性が高かった性質のカネで、事実上の賄賂だったとみられている。
新聞の金銭疑惑報道を受けて会見を開いた森田町長は、“選挙資金”ではなく「会社の事業資金として借りた」などと釈明。「返済しており問題ない」と強弁した。しかし、いかなる言い訳をしようとも1,000万円の現金を受け取っていたのは事実。本来なら進退が問われる事態であるにもかかわらず、森田氏は議会や町内の集まりで資金提供してくれた相手の実名を暴露して攻撃するという非常識な行動に走っている。“核ゴミ処分場推進派が、自分(森田氏)を陥れようとしている”という論法だ。さすがにこの与太話を信用する町民は少ないらしいが、助けてくれた相手を誹謗中傷する森田氏は、政治家である前に人として最低と言うしかない。
そもそも、森田氏が“借りたカネ”を返したのは昨年。「返済した」と胸を張っているが、町長の座に就いて10年もほったらかしにしておいたことを、威張れる神経は異常だ。信じられないことだが、森田氏は核ゴミ処分場推進派の仲間からカネを巻き上げたまま、町長就任後に自宅を改装し、新しい乗用車まで買っていた。騙された形となった資金提供者たちが、怒るのは当然だろう。
■「私は、このために町長になった」
ここでもう一度、森田氏が町長に初当選した2009年の動きを確認しておきたい。前提となるのは、提供された1,000万円がなければ森田氏は町長になっていなかったという当時の実態。選挙資金がなければ戦えないし、事業資金が足りない状況でも選挙には出れなかった。森田氏にとって不可欠なのは、「軍資金」だったというわけだ。
資金提供から東電訪問までが、一連の流れだったことは一目瞭然。“事業資金”だろうが“選挙資金”だろうが、背景に核ゴミ処分場の誘致問題があったのは確かだ。HUNTERのこれまでの取材によれば同年6月、森田氏にモーターボートを譲渡し400万円の資金提供を行ったとされる東京の会社社長ら町長一行7人は、核ゴミ処分場整備を進める立場の東京電力を訪問。森田氏が関係者の前で、「私は、このため(核ゴミ処分場誘致を実現するため)に町長になった」と明言したことを、複数の同行者が証言している。当時の話について、東電と関係の深い東京の会社社長にも確認しようと取材を申し入れたが、出稿までに連絡はなく、事実上の取材拒否となっている。
■町政刷新に新たな動きも
森田氏はこれまで町民に対し、モーターボート譲渡や飲食・デリヘル接待について「作り話」あるいは「でっち上げ」と説明。金銭疑惑については、カネを貸してくれた相手を「核ゴミ処分場誘致派」として攻撃し、町民の自身への批判をそらしてきた。さらに、事態を重く見て森田氏に辞職を迫った住民有志を「核ゴミ処分場のために私を攻撃している」などと逆に非難。正義派を悪者に仕立て上げて保身を図るという卑劣さだ。
問題は、町政トップの座に君臨する森田氏の嘘八百を素直すぎる町民が信じ、町政刷新への動きが顕在化しないこと。町議会は無自覚・無能の存在であり、まるで森田町政の追認機関。狭い町であることから、町長派の脅しに黙り込む住民ばかりだという。それでも、金銭授受問題と過去のデリヘル接待などがリンクし始めた現状に危機感を抱く住民は少なくないようで、HUNTERには「真相を知りたい」というメールが数多く寄せられるようになった。同町在住のある男性会社員は、こう話している。
「処分場反対、賛成に分かれて争っている場合ではない。賛成派も反対派も同じ町民。一番に考えなければならないのは、町の未来だろう。森田さんが町長になって、町はさびれるばかり。人口は減り続けているのに、彼は何も対策を講じていない。もともと森田さんは、熱心に核ゴミ処分場誘致に取り組んでいた人物。選挙目当てで変節しただけだ。私は選挙の時は森田さんに入れてきたが、この際、森田さんも含めた関係者を集めてもらい、町民の前で議論する機会を作るべきだ。私は、子供や孫たちに、みっともない故郷を押し付けたくない」