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広がった「6月3日解散、30日投開票」説 
衆参ダブル選挙に向けて走り出した永田町

2019年4月22日 09:10

ae5c744b009c5bfed1757198373d10896a2c08d2-thumb-230xauto-24801.jpg 安倍晋三首相の側近で自民党の幹事長代行を務める萩生田光一衆議院議員が、右翼系のネット番組に出演し、消費増税の延期を匂わせた上で解散総選挙の可能性にまで言及した。
 同氏の立場を考えれば、首相の意を受けて観測気球を上げたと見るのが普通。永田町は、一斉に衆参ダブル選挙に向けて走り出した。
 同時に広まったのが、衆議院解散と投開票の日程。改元直後に、この国の政治が大きく動く可能性が出てきた。
 
■波紋広げる萩生田発言
 18日、右派の論客や政治家が出演することで知られるネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した萩生田氏の発言が、政界を揺るがした。

萩生田吹き出し.jpg これまで政府が否定してきた“景気の落ち込み”をあっさり認めた上で、消費増税の延期に言及。さらには「信を問う=解散総選挙」という総理の専権事項にまで踏み込んだ。党の幹部とはいえ、萩生田氏の肩書は「幹事長代行」で、権限があってないような役職。加計学園疑惑で官房副長官を引かせるしかなかったため首相がゴリ押しして就かせたポストで、萩生田氏には何の決定権もない。時期的にも、首相の了解がなければできない発言だとみられている。

 ある自民党関係者の話。
「問題の発言は、官邸側が萩生田に頼んだことだと聞いている。萩生田は、首相にとって特別な存在だからだ。観測気球という見方は当たっているし、地ならしの意味もあるだろう。国民が増税延期にどう反応するのか、野党がどう動くのか――そのあたりを見極めたかったということ。増税延期も解散も、総理が決めることであって、総理との意思疎通がなければ、できる発言ではない。萩生田は政策マンではないが、議員秘書からの叩き上げで、そんなこと百も承知だ。“解散総選挙をやる”ということであり、つまりは衆参ダブル選挙になるということだ」

 前出の永田町関係者が言うとおり、首相にとって萩生田氏は特別な存在だ。下は、2013年5月に萩生田氏自身がブログに添付した写真。左端が安倍首相、右端でビールを片手にポーズしているのが萩生田氏。そして真ん中に立つ人物は、首相の“腹心の友”加計学園の加計孝太郎理事長である。

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 場所は首相の別荘。萩生田氏が自慢げに紹介したこの写真は、彼の立ち位置を示す証拠の1枚と言えるだろう。

■広まった「6月30日」投開票説
 ここ数日、多くの政界関係者にダブル選挙の日程が伝わってきたという。「6月3日解散、同月30日投開票」というものだ。もともと参議院選挙は7月4日公示、21日投開票が見込まれていたのだが、萩生田発言を機に出所不明の上、なぜ6月なのか判然としない情報が一気に広まった。主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が6月28~29日に予定されており、萩生田氏も「(解散総選挙は)なかなか日程的に難しい」と否定的に話しているにも関わらずだ……。ある野党の衆議院議員は、ため息交じりにこう解説する。
「おおかた、総理周辺が流した日程だろう。(ダブル選が)6月でなければいけない理由があるのかもしれない。例えば、重要な経済に関する統計結果が出てくるとか…‥。早くやった方が得なのは分かっている。野党は、準備どころか候補者がいない状況なんだから。衆参ダブルなら相乗効果が見込めるため、自民党が勝てると踏んでいるんじゃないか。たしかに、野党の足並みは揃っていない。これまで(の国政選挙)と同じパターンになるかもしれない」 

 たしかに、野党は準備不足。国民民主党と立憲民主党が勢力争いに現を抜かす状況が続いており、衆院選の候補者擁立どころか、早くから「夏」だと分かっていた参院選の野党間調整すら進んでいない。多くの有権者が野党に対する失望感を強めており、一時は勢いのあった立憲の支持率も下がる一方となっている。自民党の大多数の衆院議員が、「候補者がいない野党に負けるはずがない。やるならいまだ」と考えているはずだ。そこに萩生田発言――。そよ吹く程度だった「解散風」が、突風となるのに時間はかからなかった。

 萩生田発言後、菅義偉官房長官は18日の記者会見で「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、(消費税率を)10月に10%に引き上げる予定。政府の方針にまったく変わりはない」との見解を表明。麻生太郎副総理兼財務相も19日、「萩生田から初めて日銀短観という言葉を聞いた」と不快感をあらわにし、「リーマン・ショックのようなことがない限り、これまで通り(増税実施)」として菅氏同様に引き上げ延期を否定した。しかし、政治家発言の裏を読むのが永田町。関係者の間からは「麻生は本気で怒ったが、菅さんのは芝居。総理と腹を合わせている。実際、自民党の衆議院議員は選挙区に張り付いており、選挙用のポスターを発注した奴もいる」といった声も上がっている。

 衆参ダブル選挙に向けて走り出した永田町。自民党のある古参議員は「ここまで来たら、ダブル選への動きはなかなか止まらないだろう。総理は勝負に出るんじゃないか」と話している。



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