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「維新」が勢いを増す大阪の事情

2019年4月18日 08:30

DSC_0019--3.jpg 今月7日に投開票された大阪ダブル選挙は、大阪市長に松井一郎氏が、府知事には吉村洋文氏が初当選し維新の会の完勝に終わった。
 知事と市長を入れ替えるという選挙手法は、「大阪だから許される」(在阪のジャーナリスト)もの。「大阪都構想」の分かりにくさもあって、全国的には「なんだか訳がわからない選挙」と映っていたようで、首都圏周辺の県議選と政令市での市議会議員選に出馬した日本維新の会の候補者は、いずれも大差で敗れている。
 大阪で圧倒的な強さを発揮する一方、他の自治体ではほとんど影響力のない維新――。改めて、衆議院大阪12区の補欠選挙が行われている大阪を取材した。
(写真中央、マイクを握る吉村大阪府知事)

■大阪の特殊事情
 21日に投開票される首都圏での区議会議員選挙や市議会選は、定員30~50人。維新の会から出馬した候補者は各選挙区1~2名程度しかいないが、多くの当選者は見込めない状況だという。やはり大阪と首都圏では大きな違いがある。

 有楽町駅前で維新の会代表の松井氏が演説していても、それが松井大阪市長本人であると認識し、足を止める人は少ない。実際に統一地方選の候補者が、いわゆる二連ポスターで候補者と共に写真を出しているのは同党所属の石井苗子参議院議員か藤巻健史参議院議員で、松井市長と一緒に写っているポスターを作った候補者は一人もいない。松井氏の全国的な知名度が、低いということだ。吉村大阪府知事に至っては、大阪以外で彼の名前と顔を正確に知っている人はほとんどいないだろう。

 しかし大阪での両人の人気は別格。松井氏が街頭に立つと多くの観衆が集まり、立ち止まる。もっと驚いたのは、新しく知事になった吉村氏の人気の高さだった。衆議院大阪12区の補欠選挙が行われている現場を取材したが、選挙区である寝屋川市や大東市では、駅前に吉村新知事が登場すると、中高年のおばさま達が大挙して現れる。街頭演説が終わり、知事と候補者が観衆の中に入ると、握手をしたり写真に写ろうとする人たちに囲まれて身動きがとれないほどだ。吉村知事が43歳のイケメンということもあるが、やはり大阪特有の現象だろう。

 小泉進次郎衆院議員も自民党候補者の応援に入り、京阪電車の寝屋川市駅前で街頭演説を行って3,000人の観客(主催者発表)を集めたが、「行政書士会」など業界団体の旗がいくつも立っていたところを見ると、動員組の方が多かったと思われる。勢いは、やはり吉村知事と松井市長が一緒に街頭演説を繰り返している維新の候補者の方にある。

 特筆すべきは、各級議員の選挙で政党の街宣カーを運行させ、集会ごとに大量動員する公明党・創価学会の姿が見えないこと。国政選挙で関西の議席を維持するために、日本維新の会との全面対決を避けるためだと見られている。街中で見かけるのは、共産党の宣伝カーばかりだった。

 大阪で自民党や野党候補に勢いが見られないのは、先日行われたダブル選挙で、「反維新」を掲げ自民・公明・連合・共産が共闘する姿に違和感をもった有権者が多かったからだろう。

■大阪維新を支えているのは……
 夏の参議院選挙を目前に控え、公明党の協力が必要不可欠な官邸は同党との関係を何としても維持したい。一方で、首相悲願の憲法改正を実現するためには衆参両院で3分の2以上の賛成が必要。改憲に積極的な日本維新の会は、首相にとってこれまた重要なパートナーとなる。あちらを立てればこちらが立たずの状態で、官邸の動きも当然鈍くなる。

 日本維新の会は消費増税反対の立場をとり、選挙中もそれをアピールしている。表面上はともかくとして、公明党も本音では消費税増税に反対だ。大阪の選挙事情を眺めていると、参議院選挙で、安倍首相が「消費税増税延期」を打ち出して戦う可能性が高くなってきていることを実感する。安倍の本音は、“財政再建より憲法改正”。最後の最後は、公明を切って維新にかけることも考えるだろう。

 報道各社の選挙情勢調査によれば、大阪12区の補選は、先の知事・市長ダブル選の勢いそのままに維新の候補者がリードする状況だという。同補選は、自民党の北川知克元環境副大臣の死去に伴って親族が立候補した、いわゆる“弔い合戦”。普通なら自民党の公認候補が圧勝するパターンだが、大阪ではこれも通用しない。勢いを増す大阪維新に力を貸しているのは、じつは「官邸」なのかもしれない。



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