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聞いて呆れる「復興五輪」(政治家編)

2019年4月16日 09:25

joc-thumb-230xauto-26556-thumb-220xauto-26996.png 来年7月に開幕するオリンピックの東京開催が決まったのは2013年9月。この時の最終プレゼンで安倍晋三首相が世界に向けてアピールしたのは、「復興五輪」という開催趣旨だった。
 「東日本大震災の被災地の復興を後押しするとともに、復興を成し遂げつつある被災地の姿を世界に向けて発信する」――。誰もが納得する旗印だったが、自民党にとっての「復興五輪」が実効性のないただの謳い文句に過ぎないことを、「復興以上に大事なのは高橋(衆院議員)さん」――そう発言した桜田義孝氏が証明してみせた。
 
■問われる政治家の資質
 大臣が失言・暴言で問題を起こした場合、辞任するか否かに関わらず“言い訳の場”が用意されるものだが、桜田氏にはそれさえも許されなかった。一発退場。発言から数時間で更迭という、異例の対応だった。

桜田.jpg

 政権を揺るがす発言は今月10日、東京都内で開かれた高橋比奈子衆院議員(比例東北)の政治資金パーティーでのこと。日本語になっていない挨拶の前半部分はご愛敬として、「復興以上に大事なのは高橋さん」という締めくくりの一言が関係者を凍りつかせた。復興五輪の担当大臣が大勢の前でそう明言したのだから、“被災地に寄り添う”としてきた政権はたまったものではない。即刻、官邸に桜田氏を呼びつけ、詰め腹を切らせてしまった。

 即時更迭は当然だろう。東日本大震災は、2万人近くの死者・行方不明者を出し、福島第一原発の事故も招いた。被災地復興は遅々として進まず、5万人以上が避難生活を送る現状がある。福島第一原発の事故処理は、いつ終わるのかさえ分かっていない。そうした中、五輪の担当大臣が復興より仲間の国会議員の方が大事だと発言したことは、自民党の政治家が「復興五輪」の趣旨をまるで理解していないことを意味している。被災地に対する冒涜であり、多くの政治家が口にする「被災地に寄り添う」が言葉だけだということを証明した形だ。
 
 桜田氏は千葉県選出。千葉は東北との距離が東京より近く、桜田氏も東日本大震災の怖さを知っているはずだ。しかし、よほど記憶力が悪いのか、震災当時の国道などの道路被害に関して千葉県柏市の集会で「健全に動いていたから良かった」と事実誤認。今月9日には国会で、被災地の宮城県石巻市(いしのまきし)を国会答弁で再三「いしまきし」と言い間違えるなど、被災地をないがしろにする発言を続けていた。本来なら、大臣辞任と同時に国会議員を辞めねばならないほどのバカ殿ぶりである。なぜ桜田氏のような最低の人間が大臣をやっているのか――多くの国民が疑問を抱くところだろう。

■「(震災は)東北でよかった」と発言した復興大臣
 安倍内閣の閣僚が、“適材適所”で選ばれたのではないことだけは確かだ。2017年4月4日、福島第一原発の事故を受けて自主避難している人たちへの避難用住宅提供打切りについて追及された今村雅弘復興担当大臣(当時)は、「基本的にはやはり御本人が判断をされること」と自主避難者を切り捨てる発言をして顰蹙を買った。この時今村氏は、“帰れない人たちの実情が分かっていない”と詰められたところで切れて、記者に「出て行け。もう二度と来るな」と怒鳴りつけた。普通ならこの段階で更迭だろうが、安倍首相の我慢が、事態を悪化させる。

 同月25日、派閥の政治資金パーティーで挨拶に立った今村氏は、「(東日本大震災は)東北でよかった」と暴言を放ち問題化。厳しい批判を浴びて、辞任に追い込まれる。今村氏もまた、国会議員としての資質を欠く人物だったというしかない。今村氏と桜田氏の発言に通底しているのは、被災地を見下す差別意識。この両人が寄り添ったのは、被災地ではなく安倍晋三だった。

■復興や五輪の担当大臣はお飾り
 安倍政権下で復興大臣に就任したのは、根本匠(衆)、竹下亘(衆)、高木毅(衆)、今村雅弘(衆)、吉野正芳(衆)、渡辺博道(衆)の6人。在任期間で最も長いのは根本氏の21か月で、吉野氏が18か月で続き あとは9カ月から13か月という短さだった。下の表にまとめたが、「復興五輪」を担当する大臣も、在任期間は短い。復興大臣にしろ五輪担当大臣にしろ、2年以上務めた政治家は一人もいない。

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 失言・暴言で何度も政権を窮地に立たせてきた麻生太郎副総理兼財務相の在任期間が6年以上であることを考えると、復興や五輪を担当する大臣の椅子は、どう見てもただのお飾り。安倍首相に、被災地に寄り添う気持ちがあるとは思えない。やはり「復興五輪」は掛け声だけ。政権は、五輪招致に被災地を利用しただけだ。気付いていてこれを容認した国民にも、もちろん責任がある。

 




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