保守分裂となった注目の福岡県知事選挙は、現職の小川洋氏が自民党推薦の武内和久氏を大差で破って3選を決めた。小川氏の得票は自身最多の1,293,648票、武内氏はその約四分の一にしか過ぎない345,085票にとどまった。
事前に行われた情勢調査通りの結果だったが、「意外に選挙に弱い」「人気に陰りが出てきた」などと冷めた目で見られることになったのが高島宗一郎福岡市長。支援した武内氏の福岡市内での票は伸びず、勢力拡大を狙ってツーショット写真に納まるなどした市議選や県議選の候補者まで惨敗したからだ。
福岡市で、“高島一強”の状況に陰りが見え始めた。
■効果なかった“ツーショットポスター”
下は、福岡市南区で市議会議員選挙に立候補した無所属新人のポスター。高島市長が並んだデザインはひときわ目立っていたが、5,000票が当選ラインといわれる同区での得票は1,256票で、最下位に沈んだ。
市長が城南区で熱心に応援した新人の女性市議候補も、あえなく落選。市議会の最大会派である自民党市議団との不仲が続くなか、新人候補の応援に走り回ったものの、親高島派の大幅増にはつながらなかった。
下は、市議会の新しい勢力関係を示したグラフだ(8日現在)。条例の制定・改廃や予算に関する議決に異議がある場合、首長が再度議会に諮る「再議」で議会側に必要となるのは出席議員の3分の2以上。定数62の福岡市議会では42が求められるが、親市長派は改選前から一人増えて21人となったため、3分の2を阻むことは可能だ。
しかし、重要課題で対立が続き毎度「再議」ということになれば、多数決の原則が崩れるのも事実。21人の親市長派の中から、裏切り者が出ないとも限らない。「再議ができるようになった」と喜ぶほどではない微妙な数だということだ。反市長派を自認する自民党関係者は、次のように話す。
「親市長派といっても一枚岩ではない。市会議員にとって一番大事なのは、地元の住民であって市長ではない。案件次第で、執行部の案に反対せざるを得ないことだってある。数で優位に立っているのは、むしろ反市長派。ロープウェイの失敗でも明らかなように、高島人気にも陰りが出ている。これまでのような好き勝手は許さない」
■小川知事に負けた福岡市内の得票
自民党関係者が言うように、高島人気に陰りが見え始めたのは確かだ。3度の市長選挙で圧倒的な強さを誇ってきた市長だが、前述したとおり、市議選で全面支援した南区と城南区の候補は惨敗。南区の市議候補と同じように高島市長とのツーショット写真を使ったポスターで注目された市内中央区の県議候補も、当選ラインには遠く及ばなかった。下は知事選で惨敗した武内氏のポスターの一部分だが、高島市長の応援は、ほとんど効果がなかったとみられている。
応援した候補者は相次ぎ落選――高島ブランドの影響力のなさに、一番ショックを受けたのは市長自身だったのではないだろうか。さらに彼のプライドを傷つけたのは、敵対した小川知事が福岡市内で自分より票を集めたことだろう。投票率が違うため単純比較することはできないが、昨年の市長選と今回の知事選で高島氏と小川氏が福岡市内で得た票は、次のようになっている。
昨年、市長選史上最多の得票で3選を飾った高島氏だったが、小川知事の得票はそれを大きく上回るもの。この結果を無視して、宿泊税や子供医療費で自説にこだわり続けることはできないはずだ。さらに、知事選での強引な候補者擁立で、保守陣営を2分させた麻生太郎副総理兼財務相の求心力が低下しており、県内の後ろ盾がなくなる可能性もある。