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新聞購読料大幅値上げの背景

2019年4月24日 09:10

 今年1月の読売新聞に始まった購読料金の引き上げが、全国のブロック紙や県紙にも波及。九州では、佐賀新聞と宮崎日日新聞が既に値上げしており、5月には西日本新聞と南日本新聞も月ぎめ購読料を1割近く上げる予定だ。
 今年秋に予定される消費増税で、飲食料品同様の「軽減税率」が適用されることになっている新聞が、増税分以上を先取りするかのような大幅値上げ――。購読料に見合うだけの価値が、いまの新聞にあるのだろうか?

■値上げ相次ぐ九州の新聞 
 下の表は、九州地方を代表する新聞の購読料をまとめたもの(数字はすべて税込み)。長崎新聞と大分合同新聞を除く各紙が、すでに1割近くの値上げを実施、あるいは実施する予定だ。

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 昨日の配信記事で述べたように、新聞各紙が値上げに追い込まれた本当の理由は、年々減り続ける販売部数にある。2001年、2013年、2016年の九州7県の新聞販売部数を、表にまとめると次のようになる。

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 各紙の販売部数は、15年間で軒並みダウン。唯一例外となった佐賀新聞も、2013年からの3年間では6,000部減らしていた。熊本日日の落ち込みには熊本地震の影響がありそうだが、西日本、長崎、大分合同、宮崎日日、南日本各紙の部数減は、新聞業界が抱える構造的な問題に起因していると見るべきだろう。何が、新聞の衰退を招いているのか――。

■「面白くない」大手メディアの報道
 西日本新聞は、昨年1月から「あなたの特命取材班」という企画を始めた。《LINEなどのSNSを使って読者から情報を集め、双方向コミュニケーションで記事化を目指す、調査報道の実験的な試み》(同紙HPより)で、読者の間でも「あな特」で通るほど人気のある企画となっている。たしかに、読者が抱いた身近な問題への疑問に、新聞の取材手法で掘り下げて答えるという記事はこれまでになかったもの。SNSで読者とつながるという、新たな報道のスタイルを確立した意義も大きい。落ち込むばかりの新聞業界にあっては近年稀にみる成功例で、同様の試みをする他の地方紙も増えてきた。しかし、その西日本新聞でも販売部数の減少に歯止めがかからず、値上げに踏み切らざるを得ない状況だ。

 20代の若者で新聞を定期購読しているのは1割以下。調査によっては、5%以下という数字もある。年代が上がると購読率は高くなるが、それでも年々販売部数は減り続けている。原因は一つしかあるまい。「面白くない」からだ。

 2016年、日本国内における「表現の自由」の状況を調査した国連の特別報告者が、権力側の圧力で委縮する報道機関の現状に警鐘を鳴らした。報ずべきことを報じない日本の大手メディアには、海外からの批判が絶えない。そればかりか、産経や読売のように権力にへつらい、政府・与党の公表事項を垂れ流す御用メディアも存在している。「権力の監視」は報道に与えられた最大の使命だが、国内の大手メディアにはその自覚が欠けている。

 訴訟などのトラブルを恐れて、書くべきことを書かない新聞――。リーク情報欲しさに、権力側に媚びる記者――。ネットメディアや週刊誌を見下す新聞、テレビの傲慢体質――。インターネットを通じて様々な情報に触れる世代は、「公平・公正」やら「中立」とやらを盾に不作為を繰り返す大手メディアの欺瞞を感じ取っているのではないだろうか。つまり「面白くない」ということだ。

■「記者クラブ」の弊害
 元凶が、悪名高き「記者クラブ制度」にあることは言うまでもない。記者クラブは、主として国や地方自治体、業界団体ごとに「一般社団法人 日本新聞協会」加盟社(4月1日現在、新聞103社、通信4社、放送22社が加盟)及びこれに準ずる報道機関から派遣された記者によって構成される組織だ。歴史は古く、明治23年に帝国議会が開会した際、傍聴取材を要求する記者たちが「議会出入記者団」を結成したことに始まる。

 時代に合わせて名称や内規、運営方針を変えながら現在まで続いてきた我が国独自の“特異な”システムであるが、日本新聞協会は、公表した見解の中で《記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』》と定義、その役割については次のように謳っている。
《記者クラブの機能・役割は、(1)公的情報の迅速・的確な報道 (2)公権力の監視と情報公開の促進 (3)誘拐報道協定など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整 (4)市民からの情報提供の共同の窓口 ―である》

 ジャーナリストが集まっているはずの記者クラブだが、そこから発信される情報は、いずれも紋切り型。新聞各紙の記事はほぼ同じ内容だし、テレビ各局ののニュースもアナウンサーが違うだけだ。「面白くない」発表モノが、新聞の紙面を埋めつくし、ニュース番組を成立させている。「政府は~」「安倍首相は~」「○○県は~」「△△市は~」――大手メディアが流す記事の主語が、ほとんど権力側であることに気付いている人は少なくあるまい。この国のメディアの記者たちは、明らかに権力側の視点で記事を書いている。

 監視する側とされる側、おのずと付き合い方には一定の距離が必要となるはずだが、日本独特のシステムが、ともすれば両者の間に癒着を招き、真相を隠すための道具立てに使われてきた。仕事のできる“ジャーナリスト”が記者クラブを否定し、批判するのは、そうした実態を知っているからに他ならない。下は全国紙の購読料一覧。日経は別として、地方紙の販売価格も同じ水準だ。現状は、「面白くない」から売れない→販売部数減→経営難→購読料値上げ→販売部数減。新聞は、事の本質と真剣に向き合うべきだろう。本当に価格に見合う紙面になっているのか?

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