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劣化する政治 国会議員のお仕事は……

2019年4月10日 08:10

ae5c744b009c5bfed1757198373d10896a2c08d2-thumb-230xauto-24801.jpg 北九州市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)の事業化を巡って、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度した」と発言した塚田一郎副国土交通相が辞任した。
 “一強”の緩みということなのか、2月に競泳の池江璃花子選手の白血病公表について「本当にがっかりしている」と発言し謝罪したばかりの桜田義孝五輪担当相が、今度は東日本大震災の被災地・石巻市を「いしまきし」と繰り返し言い間違えて顰蹙を買っている。
 平成から令和へと時代が変わろうとする中、この国の政治は劣化する一方だ。 

■広がる政治不信
 忖度発言で副大臣を辞任した塚田一郎議員は、夏の参議院選挙改選組である。新潟県では3年前、自民党の中原八一氏と野党連合の森ゆうこ氏が激戦を演じた末に2,279票という僅差で森氏が勝利しており、自民党の公認というだけで議席が転がり込むような甘い地域ではない。自業自得とはいえ、3カ月後に選挙を控える塚田氏は、崖っぷちに追い込まれた形となっている。

 実際の予算は、国交省が検討を積み上げてきて出来上がるもの。副大臣の忖度でどうこうなるものではないのだが、政治家の発言としてはあまりにもお粗末だった。

 質の悪い国会議員が増えたせいか、日本財団が17歳から19歳までの若者を対象に意識調査を実施したところ、「国会は国民生活の向上に役立っていない」との回答が30.0%で、「役立っている」の20.9%を大きく上回ったという。「分からない」との回答が49.1%――。多く若者は国会に関心がないか、あるいは軽蔑しているということだ。

 国会は立法府であり、国会議員とは民意を体して国の法律を作る人たちのことだ。しかし、本気でそう思っている国民は皆無に近いだろう。「国の政策に対してどの程度民意が反映されていると思うか」という内閣府の調査に対して、「反映されていない」とする回答は1983年の51.1%から2015年には66.8%まで上昇している。有権者自らが選んだ政治家の不行跡で、さらに政治不信が募るという悪循環に陥っている。

■政治家の仕事は「金帰火来」と資金パーティー
 それでは国会議員は何をしているのか――。閣僚や政党幹部、あるいは参議院の比例代表選出議員を除く与野党議員の大半が、いわゆる「金帰火来」を繰り返す。衆参両院で常任委員会が開かれるのが火曜から金曜にかけて、本会議の定例日は衆院が火・木・金、参院が月・水・金なので、国会議員の大多数は火曜の朝上京して金曜の午後に帰郷することになる。

 議員たちが選挙区で何をするかといえば、選挙のための「票田回り」なのである。人が集まる場所なら、地元の運動会、祭り、豆まき、消防団の夜警周りなどなんでもOK。イベント会場や葬儀、結婚式などどこでも出席する。それができないときは秘書を代理で参加させるか祝電を送るなどの方法をとる。当然のことながら人件費や交通費、通信費などに多くの経費がかかる。

 そうした政治活動に必要な資金を集めるために、共産党を除くほとんどの政党の国会議員が政治資金パーティーを毎年開く。国会議員の関連政治団体が総務省や都道府県選管に提出した政治資金収支報告書を調べてみると、政治資金パーティーによる収入が全体の約7割を占めおり、年々増加する一方だ。

 問題は、大半のパーティー券購入者が分からないという、極めて不透明な仕組みである。政治資金規正法の規定で20万円以下の購入者が公表されないため、20万円以下に購入額を抑えることが当たり前になっている。

 大企業の場合、有力議員からパーティー券の購入を依頼されると、複数の関連企業に振り分けて数百万円分購入することもある。購入額を20万円以下に抑えているので企業名は公表されない。政治家にも企業にも都合の良い制度になっている。脱法行為に近いが、20万円以上のパー券購入がありながら、収支報告書に記載しない違法なケースも少なくないという。

 選挙のための活動と、その活動を支えるためのカネ集め――。政治家の日常は、この繰り返しであり、熱心に取り組む政策は「票とカネ」に直結するものばかりだ。下北道路を巡る国交副大臣の忖度発言を引き出したのは自民党の大家敏志参院議員だが、地元の大型公共事業ということで力を入れた結果だろう。

 選挙で勝つため、国会活動をおろそかにしてでも地元回りと金集めだけに集中する議員が年々増加している。質の悪い議員が増え、その議員に期待しない人が増加し無関心が広がるという悪循環を続けているのが今の日本の現実だ。民主主義の最大の敵は「無関心」なのだが……。



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