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新元号「令和」 ― 改元の政治利用に一言

2019年4月 4日 10:00

000039555.jpg 天皇陛下の代替わりにともなう新元号が決まった。
 「令和」がいいかの悪いのか分からなかったが、菅義偉官房長官による新元号発表後に行われた安倍晋三首相の会見の様子を見て、いっぺんに嫌いになった。改元(元号を変えること)を政治利用しようとする安倍の狙いが、明確になったからである。
 戦前、戦後を通じて、これほど皇室をないがしろにする総理大臣がいただろうか?
(写真は総理官邸の公式HPより)

■改めて「号法」とは
 若い世代が元号を使う機会といえば、役所絡みの文書を作成する時に限られるのではないか。通常使うのは西暦か元号か、周辺の大学生に聞いてみたところ、10人中10人が「西暦」という答えだった。たしかに、若い世代との会話で「昭和〇〇年頃」などと言えば、「西暦何年ですか」と聞き返されることがほとんどだ。

 時代とともに元号使いが少なくなってきたのは確かで、31年ぶりとなる改元で、改めて「元号」が認知されることは悪い話ではあるまい。どれだけ利用者が減っても、元号は法律で規定されたものであり、決してこの国からなくなることがないからだ。たった2条の「元号法」は、次のように定められている。
 
元号法.png

 「令和」は、この法律にある“元号は、皇位の継承があった場合に限り改める”という一世一元制度に基づき政令で定められたもので、来月1日から施行されることになる。

 ちなみに、「一世一元」を制度化したのは明治になってから。江戸時代までは、吉事あるいは凶事が重なるような場合に、天皇の代替わりの有無に関係なく、改元が行われていた。改元は確かに「歴史的」な出来事になのだが、江戸時代まではそれほど騒ぐ話ではなかったということだ。

■改元の政治利用
 翻って、いまの日本はどうか。1日の新元号発表以来、世間はまさに「元号狂騒曲」。テレビも新聞も、令和の解説やら、選定過程、背景などについてしつこいほどの報じ方だ。これに便乗して、改元を政権の支持率アップに利用したのが安倍晋三である。1日の会見冒頭、安倍はこう述べている。

 本日、元号を改める政令を閣議決定いたしました。新しい元号は「令和」であります。
 これは「万葉集」にある「初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す」との文言から引用したものであります。そして、この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております。
 「万葉集」は、1200年余り前に編さんされた日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人(さきもり)や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であります。
 悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、「令和」に決定いたしました。
 文化を育み、自然の美しさをめでることができる平和な日々に心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ちあふれた新しい時代を国民の皆様と共に切り開いていく。新元号の決定に当たり、その決意を新たにしております。
 5月1日に皇太子殿下が御即位され、その日以降、この新しい元号が用いられることとなりますが、国民各位の御理解と御協力を賜りますよう、お願いいたします。
 政府としても、ほぼ200年ぶりとなる歴史的な皇位の継承がつつがなく行われ、国民こぞって寿(ことほ)ぐことができるよう、その準備に万全を期してまいります。
 元号は、皇室の長い伝統と、国家の安泰と、国民の幸福への深い願いとともに、1400年近くに渡る我が国の歴史を紡いできました。日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるものとなっています。この新しい元号も広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根差していくことを心から願っています。

 強調したかったのが、“悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、「令和」に決定いたしました”のくだりだろう。前半は首相が大好きな「美しい国」を彷彿とさせる文言であり、“一人一人の日本人が~”は、政権の看板政策である「一億総活躍」につながるものだからだ。

 明確に「一億総活躍」と言わなかったのは、総理談話にこのキャッチコピーを入れた場合、改元の政治利用を咎められると考えたからではないのか。周到に計画を練ったらしく、短い記者団とのやり取りの中で、しっかりと安倍らしい主張を展開していた。偶然だったのとすればあまりに都合が良すぎるのだが、官邸記者クラブの幹事社は安倍の御用新聞である産経新聞。同紙の記者の質問に答える形で、安倍は次のように発言している。

安倍会見.jpg 安倍が一番訴えたかったのが、「働き方改革」や「一億総活躍」の宣伝であることは誰の目にも明らか。改元を政治利用したのは紛れもない事実だろう。都合のいい時だけ皇室を利用するこの男が、本物の「保守」であるはずがない。

 戦後、誰よりも憲法と平和を尊重してきたのは今上陛下である。だが、その陛下の思いを無視して現行憲法を否定し、平和国家の根幹を崩そうとしているのが他ならぬ安倍だ。沖縄では、辺野古の海を埋め立てて“悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然”をぶち壊そうと躍起になっている。
 
 令和の「令」について、多くの人が『巧言令色鮮(すくな)し仁』ということわざを想起するという。巧みな言葉を用いて、人に取り入ろうとする者には、誠実さ=仁の心が欠けているということだ。「令」はまた、命令、発令などお上が下々を支配する時の言葉でもある。 最終的に安倍が決めたという「令和」という元号、やっぱり好きになれそうもない。



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