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逆効果となった福岡市長の知事候補応援ブログ

2019年3月28日 08:50

DSCN0897.JPG 保守分裂となった福岡県知事選挙で、絶対的な集票力を持つ高島宗一郎福岡市長が、劣勢となっている自民党推薦の元厚生官僚・武内和久氏を応援することを表明。告示前日から、続けざまにその思いを自身の公式ブログに書き綴っている。
 ブログの記述によれば、市長が武内支援に踏み切った大きな理由は二つ。まず、武内氏が、県と市のどちらが課税するかで調整がつかなくなっていた宿泊税について、市側に譲歩することを約束したこと。次に、福岡・北九州の両政令市だけが高く設定されている子ども医療費の負担割合について、見直しを公約にしたことだという。
 一部の福岡市民が喜びそうな理屈なのだが、今度の選挙で選ばれるのは「県知事」。高島市長は、「知事」が福岡県内60市町村(平成30年10月1日現在)のトップであるという前提が理解できていない。

■剥き出しの地域エゴ
 宿泊税を巡っては、先行していた県を出し抜き、福岡市がバタバタと導入を決めたという経緯がある。自民党県議団は、福岡市との協議に行き詰っていた小川知事に「解決に向けて政治生命をかけろ」と圧力をかけ、実際にそう約束させたのだが、そうした動きの根底には人・モノ・カネが福岡市に集中することを嫌う他の自治体の思いがあったはず。市側に課税権を譲ることを表明した格好の武内氏を歓迎するのは、ごく一部の福岡市民であって、他の自治体の住民は嫌悪感しか抱かないだろう。高島市長の主張は、全県選挙を戦う上では逆効果にしかならない地域エゴに過ぎない。
 
 子ども医療費に関する議論も、同様である。高島市長は26日、28日とブログを更新。宿泊税にこだわれば市と対決姿勢を見せていた県議団を刺激すると考えたのか、いずれも子ども医療費の問題を取り上げ、武内支援の必要性を説いていた。少し長くなるが、26日は次のように記している。

【子ども医療費助成拡大のチャンスを逃すな!】現職の小川洋知事を激しく批判する内容だ

福岡市では子どもが病院に通院した時に医療費の補助が出るのは小学校卒業までです。

これを中学卒業までに拡大してほしい、もしくは自己負担を軽くしてほしい。これは議会の自民、公明の会派はもとより、野党の民主や共産系会派まで予算要望している内容です。

それが、今回の福岡県知事選挙で実現できる可能性が浮上したのです。

小川知事は、福岡市行政や議会がこの8年間訴えて続けてきた子ども医療費の格差是正に、残念ながら全く耳を傾けていただけませんでしたが、武内和久候補はその格差縮小を公約に掲げていただいたのです。

これは北九州市にとっても悲願です。

県の施設や道路などの整備は県内全体のバランスを配慮して、力をいれる地域など差ができるのは仕方ありません。しかし同じ福岡県民である子ども施策や障がい者施策は県内一律であるべきです。

福岡市民は個人県民税収入の4割近くを納めています。

にもかかわらずこの県の格差によって福岡市民は新たに11億円もの市民の税金を使って他の市町村との子ども医療費の格差是正に充てざるを得ない状況なのです。

このお金がキチンと戻ってくればまさに子ども医療費の対象拡大や自己負担軽減などの財源として活用できるのです。福岡市や北九州市の長年の要望が武内候補が知事になればまさに実現されるのです。

ちなみに自治体の財政力を測る指標として国が定めた「財政力指数」がありますが、もちろん福岡県内でも政令市よりも財政力が高い市町村も存在します。また制度としても各自治体の財政力が均衡するよう、地方交付税が交付されています。

ですから、人口の多い自治体=財政力があるというイメージを利用して補助金に格差を設ける理屈は成立しません。

私は福岡県知事選挙で武内和久候補を応援します。

福岡市長高島宗一郎

 これでは不足と感じていたのか、28日には【それでも今の県政継続を望みますか?】と見出しに入れ、《福岡市や北九州市の障がいがある児童生徒への小川知事のこの8年間の冷たい対応を知っていますか?教育の現場を預かっていた前福岡市教育長の痛切な思いに耳を傾けてください。法に則って小川知事が対応していただければ、その分福岡市は本来市としてすべき障がい者福祉向上などに予算を使えるのです》と踏み込んだ。元の部下を使って、現職の小川洋知事を激しく批判した格好だ。“大人気ない”というのが正直な感想である。(*下が、高島市長のブログの画面)

教育長.png

 前術したように、市長の言い分はただの地域エゴ。福岡市が良ければ、それでOKという考え方に基づいている。市長選なら通る主張かもしれないが、地域ごとに「格差」が大きい90市町村のトップを選ぶ知事選では、絶対に容認されないものだ。仮に、現職の知事が「福岡市に宿泊税の課税権を譲り、子ども医療費もすべての自治体を同じ負担割合にする」と言ったとすれば、政令市以外の自治体の住民はそっぽを向くことだろう。

 市長のブログを見たという、県南地区在住の50代会社社長は、次のように憤る。
「高島さんは、福岡市だけが栄えればいいという考えだ。アジアのリーダーとかなんとか言ってきたが、福岡市が九州の玄関口であるという自覚がない。福岡市の財政力と他の自治体のそれとでは、大きな違いがあり、子ども医療費の負担割合も、すべての自治体が同じというわけにはいかない。勝手な理屈で現職を貶めるのは間違いだ」

 誰もが知っているように、高島市長の後ろ盾は麻生太郎副総理兼財務相。その麻生氏が強引に自民党の知事候補に仕立てた武内氏は、惨敗必至の状況とみられている。武内氏は、高島市長が委嘱した福岡市の政策参与でもあったことから、焦る気持ちがあるのは分かる。だが、重ねて言うが高島流の武内支援は逆効果。票を減らしていることに気付くべきだ。



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