安倍政権が米空母艦載機の陸上離着陸訓練(タッチアンドゴー)に利用する目的で買収することを決めた「馬毛島」(鹿児島県西之表市)を巡り、同島の大半を所有する「タストン・エアポート」(旧社名:馬毛島開発)が今年2月に株主総会を開き、追放された格好となっていた元代表の立石勲・立石建設会長を、役員に復帰させる人事を行っていたことが分かった。
政府が謀略を巡らし、潰しにかけた相手が復活した形。関係者から登記の差し止めを求める仮処分申請がなされており、法務局で同社の登記簿謄本を取得することができない状況となっている。
■国の謀略で退任させられた前代表
馬毛島は、種子島の西方約12㎞に浮かぶ周囲16.5km(南北4.50km、東西:3.03km)、東京ドーム175個分にあたる面積820ヘクタールの島だ。鹿児島出身の立石勲氏が創業した立石建設のグループ企業が、同島の開発を手がけていた馬毛島開発を旧平和総合銀行から買収して「タストン・エアポート」に社名変更。滑走路を造成したり社員を常駐させるなどして維持管理を行っていた。
(*下の写真は、海上から見た馬毛島。立石建設所有の建物が確認できる)
2016年11月、タストン社と防衛省は米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意したが、滑走路の造成費やこれまでの維持管理にかかった経費を上乗せして400億程度の契約金額を提示した同社と、40億円台を主張する防衛省側との溝が埋まらず、交渉自体がストップする。
事が動いたのは昨年夏。国は、タストン社の債権者たちをあやつって同社を破綻寸前に追い込むよう画策。その上で立石勲氏を退任させ、今年1月に新代表との間で売買価格を160億円とする仮契約を結んでいた。
■本契約、来年度にズレ込む可能性
関係者の話によれば、タストン社の株を100%所有しているのは、立石建設グループの「日開企業」。今年2月にタストンの株主総会が開かれ、前代表である立石勲氏の代表取締役復帰が決まったという。昨年就任したばかりの新代表が事実上のクビを宣告された形で、防衛省との間に結ばれた仮契約書にハンコを捺した人物が、交渉の舞台から姿を消さざるを得ない事態となっている。年度内とみられていた本契約の時期が、次年度に持ち越される可能性もある。
あわてたタストン社の新代表らが登記の差し止めを求める仮処分申請を行っており、法務局の作業自体が停止している状態。今月に入って、登記簿謄本の閲覧や取得ができない状況が続いている。
タストン社の負債は約240億円。仮契約の金額160億円では大幅に返済資金が不足するが、国側はタストン社を破産させて幕引きを図る考えだとされ、立石建設の関係者から交渉内容への不満が高まっていた。