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戦闘機100機に護衛艦の空母化 危機煽る安倍政権

2019年3月 5日 10:15

0718_bouei-thumb-270xauto-25028.jpg 昨年末、政府が米国製のステルス戦闘機F35を100機追加発注することを決めた。購入予算は1兆円超。人種差別主義者であるトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦してしまうほどの安倍晋三首相が、対日貿易赤字解消を求められて応じた大量購入だ。
 目的は南西諸島の防衛であり、中国を意識したものであることは確か。しかし、1期100億円ともいわれる戦闘機が、本当に100機も必要なのか疑問である。 
 戦争準備に余念のない安倍政権だが、じつは意図的に危機を創出しているのではないか?

■空母化した護衛艦「いずも」にF35
 導入される100機のF35のうち、42機は垂直離着陸型のF35B型。“空母化”が進められることになった「いずも型」護衛艦にこれを搭載する予定だという。いずも型は2隻。同型艦「かが」も、空母化の予定だ。(*下が護衛艦「いずも」。海上自衛隊のHPより)

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 「空母」という呼称を嫌う防衛省は「多用途運用護衛艦」などと珍妙な呼び方を持ち出しているが、そんな話が国際社会で通用するわけがない。中国メディアは即座に反発、快資訊ほか複数の媒体が「日本が護衛艦を空母に改修し戦闘機を艦載すれば、戦力は『遼寧』(*中国海軍の空母)を超える」という記事を掲載し、危機を煽っている。中国は今年1月、「海峡問題解決のために軍事行動も辞さない」と台湾に進軍する可能性を示唆しており、「いずも型」護衛艦の空母化で、さらに緊張感が高まる状況だ。

 ちなみに、漢字表記の「出雲」という艦は、大日本帝国海軍の装甲巡洋艦。「加賀」は、真珠湾攻撃に参加したことで知られる航空母艦である。ひらがな表記と漢字表記の違いが分かるのは日本人だけで、先の大戦を経験したアジア諸国にとっては同じ読みの軍艦なのである。

■「空母化」がもたらす危機
 日本には最西端の「与那国島を守る」という大義があるが、沖縄本島からは遠い。南西諸島の防衛で急な出動ができるとすれば「いずも型」になり、それが空母化の理由だ。しかし、そうなると海峡紛争を想定しているような動きに見えてしまう。ある軍事専門家は、こう話す。
「比較対象にされた遼寧は中国初の空母で、ソビエト連邦時代の未完成母体をベースに建造したもの。型は古い。一方で中国は、2030年までに新型空母を4隻以上建造することを目標にしている。そのため、わざわざ古い型の空母を比較に出して『劣っている』という論調にしているだけだ。
 そもそも、いずもを空母化しても搭載できるF35は13機程度。中国の新型空母は高性能の戦闘機J15を32機以上も搭載可能だ。いずも型の2隻を空母化しても、戦力差は埋まらない。したたかな中国は、いずもの空母化を自国の戦備増強に利用しているだけ。日本政府が、危機を拡大している格好になっているのは確かだろう」

 防衛は国によって想定が違う。日本の場合、他国への進軍を想定しておらず、基本的に海上輸送路を確保するためのシーレーン防衛や、ミサイル飛来などに対応する近海防衛だ。だが近年、そこに「島嶼部奪回」など、陸地防衛を見据えた目的を加えており、中国側に「緊張する理由」を与えているという側面がある。ただし、いずも型護衛艦の空母化に対する中国の本当の懸念は「別のところにある」にあると見る向きもある。マレーシア在住の中華系アナリスト、李英臣氏は次のように解説する。
「中国が最も恐れるのは本土への直接攻撃です。洋上を自由に動ける空母で、かつF35が持つステルス性があれば、近海どころか、密かに山東半島を飛び越え、北京に巡航ミサイルを撃ちこむことだって可能なんです。さらに渤海に入り込めば天津付近の海岸に上陸することが可能で、ここから北京までは100キロ程度の近距離。途中、大河や山脈もなく一気に陸上に攻め入れば一週間を待たずに首都が壊滅するでしょう。もちろん、国際協定により都市攻撃は禁じられていますし、北京を灰にした所で日本に得るものはなく、配備する98万もの人民解放軍に押し返されるでしょうが、北京が攻撃される可能性は1ミリでも恐怖になるのが中国人なんです。専守防衛のはずの日本が、他国への攻撃を可能とする空母を持つことの意味を、日本人はよく考えるべきではないでしょうか」

 中国人の間に、先の大戦で残した悪い対日イメージが残っているのは事実だ。対日恐怖心がゼロになることはない。さすがに、中国メディアが「日本の北京攻撃」などという非現実的な話を持ち出して無駄なパニックを煽ることはないだろうが、そこは不思議の国中国。どう出てくるか分からないところもある。日本がいくら「あくまで自国防衛のため」を強調したところで、戦争準備に余念のない安倍政権の動きを見れば、緊張が高まるのは当然の流れなのだ。



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