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福岡知事選陰の主役 大家敏志参院議員の野望

2019年3月 1日 09:35

10f5f13cd0dea6baf33e9f03aaf25de8646afbc3-thumb-230xauto-26387.png 保守分裂が確実となった4月の福岡県知事選挙。小川洋知事の再選を目指す勢力と元官僚・武内和久氏を推す麻生太郎副総理兼財務相らの勢力がぶつかり合う構図だが、ここに来て、こわもての顔と態度で候補者以上に目立つ男が注目を集めている。武内氏を引っ張り出した張本人と言われる麻生派の参議院議員、大家敏志である。
 自民党県連の選対委員長として強引に武内推薦への道を開いた大家氏は北九州市出身。現在2期目だが、ここまで目立った活躍がなかった政治家だ。一体、何が彼を突き動かしているのか――?((写真は議場の大家氏。報道番組の画面より)

■政治活動=カネ集め
 北九州市出身の大家氏は1967年生まれの51歳。名門・久留米大学附設高等学校から北九州大学法学部に進み、卒業と同時に自民党福岡県連の職員となる。その後、参議院のドンと呼ばれていた村上正邦氏(KSD事件に絡んで2001年に受託収賄の容疑で逮捕。08年に有罪判決が確定)の秘書を経て、99年に福岡県議会議員に初当選。3期目の途中で国政に転じ、参院福岡選挙区で2010年、16年と連続当選している。

 国政の場で目立った活躍がなかった大家氏を有名にしたのは、昨年12月に参議院の本会議場で起きた“暴行事件”。議事進行が気に入らないとして野党議員を小突き、議長にも暴言を吐いたのだ。常軌を逸した行動に与野党の議員から批判が出て議運の理事を辞任したが、同情論は皆無。国会でも地元福岡でも、大家氏の評判は悪い。

 福岡選挙区で初当選した2010年の参院選では、「億単位の選挙資金が用意できる」と明言して自民党公認をもらっておきながら、実際はほぼ無一文。やむなく県連が政治資金パーティーを開いてカネ集めを行い、選挙費用を捻出したという。経済界でも「大家はカネに汚い」との評が定着しており、いきなり政治資金パーティーの案内状を送りつけるような強引な手法に批判の声が少なくない。

 確かに、大家氏の集金力は凄まじく、国会議員をやっているのは、「カネのため」としか思えない。大家氏の関連政治団体は資金管理団体「大家さとしを育てる会」と「自由民主党福岡県参議院選挙区第3支部」だが、下に参院議員2年目となった2012年から17年までの、それぞれの年の収入額をまとめた。

大家 表.png

 年々収入額が増え、2015年からは2つの団体の収入合計で1億越え。2期目の当選を果たした2016年には、1億6,000万円以上を集めていた。当選2回の参院議員にしては額が大き過ぎる。

 「大家さとしを育てる会」が総務省に提出した政治資金収支報告書によれば、平成27年の収入が約6,000万円(うちパーティー収入が約5,100万円、個人からの寄附340万円、医師会などの政治団体からの寄附約390万円)、28年が約9,000万円(パーティー収入約6,100万円、個人からの寄附650万円、医師会などの政治団体からの寄附約2,150万円)、29年が約7,000万円(パーティー収入約6,200万円、個人からの寄附90万円、医師会などの政治団体からの寄附約600万円)となっている。28年を除き年4回の政治資金パーティーが常態化しており、年中“カネ集め”に精を出している格好だ。大家氏にとっては、カネ集めこそが政治活動なのである。

 カネの集め方が乱暴なら、使い方も荒っぽい。大家氏を知る国会議員によれば、同氏の着ている背広や履いている靴は高級品ばかり。国会でも一二を争うファッションオタクなのだという。そうした靴や背広の購入資金の出所は不明だが、「飲食」に関する費用は、ほとんど集めた政治資金から支出されている。その額もけた外れ。2012年から17年までの飲食関連費は、次のようになる。

飲食.png

 支出先を見ていくと、鮨店、中華料理店、フランス料理店、クラブなどがズラリ。どの店も“超”のつく高級店で、1件ごとの飲食代も大きく、30万円台、40万円台の支出が数多く記載されている。昨年12月には加賀料理の店に97万8,200円という途方もない「会合代」を支払っていた。庶民性ゼロの高級店で、数十万円単位の飲食代を払って大盤振る舞いすることが、果たしてまともな政治活動と言えるのだろうか……。

 ちなみに、大家氏が特にひいきにしているのは、銀座の「鮨 石島」。夜は一人20,000円のコースからという高級店である。確認できる2015年、16年、17年には、それぞれ「221万3,670円」、「994,650円」、「209万3,431円」を同店の運営会社に支払っていた。同店利用は、ほぼ毎月。「女性と二人のことも少なくない」(同店利用者)のだという。

■力の源泉は「カネと権力」への欲求
 カネ集めにしか興味がなさそうな大家氏が、県知事選で武内氏に入れ込んだ理由は何か――。「麻生派所属」が、その理由の一つであることは間違いないのだが、ある県連関係者は「それだけではないよ」とした上で、こう解説する。
「大家は、県連の蔵内(勇夫)会長を引きずり降ろしたくて仕方がないんだ。自分が県連会長をやりたい。福岡6区の補選で、蔵内会長の息子さんを引っ張り出したのは大家。もちろん、善意なんかじゃない。負ける選挙であることを見越して、息子さんを県連の推薦候補にした。県連会長の責任を問わせるつもりだったんだが、蔵内会長はあっさり留任。計算が狂った。
 今度は知事選で仕掛けた。もともと、武内を見つけてきたのは大家。武内は久留米大附設の後輩なんだ。後輩の武内が知事になれば、何でもできると踏んだんだろう。麻生さんは、別の人物を知事候補にしたかったらしいが、最後に残っていたのが武内だった。昨年来の強引な候補者選定は、すべて選対委委員長である大家のリード。ただ、小川知事が出馬を辞退しなかったのは、誤算だったはずだ。
 選挙は小川さんの圧勝。誰もが認めてる。大家は、なんとしても蔵内会長に“選対本部長”を押し付けたい。負け選挙の責任をとらせるためだ。しかし、選対委員長として武内を選んだのは大家なんだから、選対本部長も大家がやるのが筋。県連所属の議員は、大家の動きを冷ややかに見ている」

 どうやら、大家氏が必死にしがみつこうとしているのは「カネと権力」。国民の暮らしを良くするために汗を流すつもりはないと見たが……。



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