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「3.11」と復興五輪

2019年3月11日 09:30

joc-thumb-230xauto-26556.png 今年もまた、この日がやってきた。東日本大震災から8年、毎年「3.11」の前後に大手メディアが特集を組むおかげで、揺れと津波の恐ろしさだけは人々の記憶に残り続けている。しかし、大震災が引き起こした福島第一原子力発電所の事故は遠のくばかり。安全神話が崩壊したはずの原発は次々に再稼働し、“原発反対”の声はしぼむ一方だ。
 そうしたなか、高まる東京オリンピック・パラリンピックへの期待感。「復興五輪」という理念は、本当に生かされているのだろうか――。

■閣議決定された「復興五輪」
 安倍内閣は2015年、「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」を閣議決定。その中で、今回の五輪を次のように位置付けていた。

【「復興五輪」・日本全体の祭典】
 大会の開催により、世界各国からアスリート、観客が日本に集まり、海外メディアにより広く報道され、世界の注目が日本に集まることになる。この機会を国全体で最大限いかし、「復興五輪」として、東日本大震災からの復興の後押しとなるよう被災地と連携した取組を進めるとともに、被災地が復興を成し遂げつつある姿を世界に発信する

 内外に向かって、「復興五輪」をアピールしたことは確か。こうも述べられている。 

 東日本大震災の被災地の復興を後押しするとともに、復興を成し遂げつつある被災地の姿を世界に向けて発信することは、この大会の大きな目的の一つである。被災地の方々の声を十分に聴きながら、被災地を駆け抜ける聖火リレー、被災地での大会イベントの開催や事前キャンプの実施、被災地の子どもたちの大会への招待等について取組を進めるとともに、被災地における取組を世界に伝えていくことを通じ風評被害を払拭し、産業面を含めた着実な復興へとつなげる。

 震災から8年経って、世界に誇れるほど復興が進んだのか――。「復興五輪」は来年に迫ったが、NHKが行った岩手・宮城・福島の被災者に対するアンケートでは、6割近くの人が「五輪は被災地の復興の後押しにならない」と答えたことが報じられている。避難者は、いまだに4万人超。ゆっくりとしか進まぬ東北の復興に比べ、東京は開発ラッシュの状況だ。復興をだしに使ったのも同然だろう。そもそも、復興など不可能な地域があることを忘れているのではないか?

■コントロール不能、フクシマの現実
 2016年8月、オリンピック招致の最終プレゼンテーションで安倍晋三首相は、福島第一原発の影響について次のように明言した。

あべ五輪.jpg

 現実はどうか。大量の放射性物質が、港湾の外にまで垂れ流されていたことは周知のとおり。溶け落ちた核燃料の冷却などで生じる福島第一の放射能汚染水は、浄化装置で一定程度の濃度を下げられるが、除去できないトリチウムを含んだ処理水は増え続ける一方だ。しかも、その処理水の最終的な処理方法は決まっていない。東京電力によると、貯蔵タンクにたまった処理水は今年2月21日現在で112万2,901トン。2020年までにタンクを増設して処理水約137万トンを貯蔵できるようにする計画だが、それも数年先には満杯なるとみられている。

 汚染水以上に問題となるのが「燃料デブリ」。燃料デブリとは、メルトダウンによって融解した核燃料が原子炉の中の他の金属や構造物などと混ざり固まったものだが、これをどうやって処理するかという肝心の課題が解決していないのだ。取り出すことが難しくなった場合は、旧ソ連時代に事故が起きたチェルノブイリ原発同様“石棺方式”で閉じ込めるしかないが、先はまったく見通せていない。

 非営利の民間研究機関「公益社団法人 日本経済研究センター」は今月7日、福島第一の事故処理費用が今後40年間に35兆~80兆円に上る可能性があるとする試算結果をまとめ、公表した(⇒「事故処理費用、40年間に35兆~80兆円に」。廃炉・汚染水処理だけで51兆円、賠償に10兆円、除染に20兆円かかるという内容である。これまでに経済産業省が明らかにした試算額は22兆円。4倍かかる計算だ。お先真っ暗という事態だが、政府はダンマリを決め込んでいる。安倍首相は、フクシマの何をコントロールしているというのだろうか。

 東日本大震災は、地震と津波の怖さを教訓として残した。「3.11」が巡ってくるたびに、日本人は記憶を呼び覚ますことだろう。全国各地で、対策を講じることも可能だ。だが、原発に対する警戒感は、日を追うごとに薄れているのが現状である。きょう一日、企業のCMがテレビから消えた当時のことを思い返してみたい。  



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