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福岡・高島市政に重大疑惑 業者選定で評価点水増し

2019年3月29日 06:50

91b05f379e30189855b71448b89462db0ff1adea-thumb-245xauto-21547 (1).jpg 福岡市が進める大型公共事業の業者選定を巡って、重大な疑惑が浮上した。
 HUNTERが福岡市に情報公開請求して入手した文書から、公共施設のPFI事業者を選定する過程で、受注を決めた企業グループの評価点が水増しされ、落札結果が覆っていたことが分かった。
 事業費総額は40億円以上。落札した企業グループには高島宗一郎市長と関係の深い企業が複数含まれており、市政を揺るがす事態に発展する可能性がある。(写真は福岡市役所)

■事業費約40億円 総合評価の差は「0.5点」
 疑惑が持たれる業者選定が行われていたのは、福岡市が2021年の開館を目指して進める「早良地域交流センター(仮称)」の整備事業。市は、和白、雑餉隈、野芥、今宿・周船寺の4地区に、区レベルの行政サービスを補完するための施設として地域交流センターの設置を進めてきたが、早良区中南部のみが未整備となっていた。

 このため市は、同区四箇田団地内の約10,600㎡の用地に、福岡市総合図書館の分館を併設した文化・交流拠点(床面積約 5,200 ㎡)として「早良地域交流センター(仮称)」を整備する方針を決め、2018年4月にPFI事業者の公募を開始。2018年9月25日に入札及び提案書類の受付を締め切り、11月20日にプレゼンテーション審査を実施して、翌21日に落札者を公表していた。応募したのは二つのグループ。落札したのは、ビル管理大手「日本管財株式会社」の九州本部を代表とするグループである。

 問題は、業者選定の折の評価方法。市が公表した資料によれば、次のような結果となっている。

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 40億円もの公費が投入される事業だというのに、提案内容をみる“性能評価”は両グループとも493点で同点。入札価格も、わずか972万5,914円の違いでしかない。しかし、この価格差が決定的な意味を持つことになり、「0.5点」という前例のない数字の差で日本管財を代表とするグループが落札していた。この入札は結果発表直後から問題視され、市議会でも質疑が交わされていたが、疑念を残したまま議会承認を得た形となっている。

■注目したのは「評価個票」
 HUNTERは、落札したグループの構成企業に注目。業者選定時の評価にも疑問があったため、関連文書の開示請求を行っていた。請求にあたり、所管課である市民局コミュニティ施設整備課に対して特に注文を付けたのは、事業者選定委員会の委員が採点を行った際に残された「評価個票」(以下、「個票」)の開示。何らかの“操作”があったとすれば、個票にその形跡が残っている可能性があると考えてのことだった。
 
 今月27日に開示された資料の中にあったのが下の個票。5人の選考委員が記入した評価個票の内、一人の委員による個票だけが活字データを出力したもので、全2枚4ページ中3ページにおいて手書きで5か所もの修正が加えられていた。下が、その個票である。

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 まず、Aグループの「設備計画」で当初“B”と評価していたものを“C”に落とし7.5点をマイナスに――。一方、Bグループの提案には「基本方針」の“D”評価を“C”に上げて5点を、「地域社会への貢献」を“D”から“C”に上げて25点を、「諸室配置・外構計画」をこれも“D”から“C”に上げて17.5点を、さらには「ライフサイクルコスト」の“C”を“B”に変えて10点を加えていた。Bグループへの加点合計は57.5点。Aグループは7.5点がマイナスになっているため、トータルで65点もの違いが生じていた。性能評価における修正前の数字と、修正後を比較するとこうなる。

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 ある一人の選考委員が、Aグループの評価点を下げ、Bグループの評価点を不自然に上げたことで、性能評価が同点になり、入札価格の差「0.5点」が大きくモノをいう形となって結果が逆になったということ。もちろん、Bグループこそが、落札した日本管財を代表とするグループである。

 不正な評価修正ではないのか――。市コミュニティ施設整備課に確認したが、同課の担当は「不正はなかった。規定に従って業者選定を行った」と繰り返すばかり。不自然な修正についての合理的な説明はなく、不正がなかったことを証明できない状況となっている。

 これまで市が、資料請求を行った市議会議員などに渡していたのは、選考委員ごとの評価点をまとめた「集計表」(下参照)。HUNTER以外に個票を開示したことは「ない」と明言しており、意図的に個票を隠していた疑いもある。

001.jpg 業者選定で落選したAグループの関係者は、問題の個票について「初めて見た。信じられない」と絶句。「こんなことがまかり通れば、市が行うPFIにはどこも参加しなくなる」と話している。

■グループ構成企業と市長との特別な関係
 この不適切極まりない業者選定は、「疑惑」から「事件」に発展する可能性がある。事業を落札したBグループの構成員・協力企業として名を連ねた複数の会社に、高島宗一郎福岡市長との深いつながりがあるからだ。(*下がBグループの構成)

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 次週の配信記事で、業者選定の不審点をさらに詳しく分析し、疑惑の背景を検証していく。



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