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選挙を道具にする「維新」のアンフェア

2019年3月20日 09:00

大阪維新.png 「選挙」が民意を問う有効な手段であることは確かだが、現職=権力側が勝手に任期を縮め、恣意的に日程を決めた場合は話が変わる。突然の選挙は、現職以外の準備期間を奪い、支援組織の体制づくりも許さない不公平な状況をもたらすからだ。対抗馬擁立さえままならぬ事態は、結果として投票率を下げ、民意が歪められることになる。
 大阪で「維新」がやっていることは、まさに民主主義の自殺行為。選挙を施策実現の道具にする同党の手法に、疑問を抱く国民は少なくあるまい。(写真は「大阪維新の会」HPより)

■勝つまでジャンケン
 またしても「都構想」を争点にしての選挙――。しかも、首長が任期途中で職を投げ出し、再出馬して民意を問うのが3度目というのだから呆れてものが言えない。大阪では「勝つまでジャンケン」と言うのだそうだ。

 大阪都構想の住民投票実施を巡る公明党との協議が決裂したことを受け、大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会代表)と吉村洋文大阪市長(同政調会長)が、今月8日にそろって辞任。来月の党一地方選挙に合わせる形で、松井氏が市長選に、吉村氏が知事選に臨むことになった。いずれも任期を8か月残してのこと。無責任との批判は免れまい。

 維新にとっては都構想が「一丁目一番地」。実現できなければ組織の存在意義は失われるだろう。しかし、それは維新の主張が受け入れられなかったことの裏返し。都構想以外の課題を抱える自治体の首長を勝手に辞め、都合の良い選挙日程を決めて対立候補の準備期間を奪うというのは間違いだ。アンフェアが得意の維新とはいえ、身勝手が度を越えている。

 都構想実現のためという理由で、維新の首長が任期途中で辞職して民意を問うのは、これが3度目。改めて、都構想を巡る経緯を確認しておきたい。

都構想.png 地域政党「大阪維新の会」が発足し、都構想が公表されたのは2010年。橋下徹氏が大阪府知事だった頃である。橋下氏らは同年9月に国政政党「日本維新の会」を結党し、同党の人気は全国区に。一躍都構想が注目を集めることになったが、当時の維新の勢いをもってしても、実現は困難を極めた。

 11年11月には、都構想に反対していた当時の大阪市長に対抗するため橋下氏が任期を3か月残して知事を辞任。橋下氏が市長選に、松井一郎氏が府知事選に出馬してダブル選を戦い、両人とも当選する。

 しかし13年、都構想で再編対象とされた堺市の市長選において、維新に反旗を翻した竹山修身氏が当選。この時点で、大阪と堺という二つの政令指定都市を廃止し、20の特別区を設置するという本来の構想が破綻する。広域行政のメリットが消えたことで都構想は終わっていたのだが、維新は一丁目一番地にこだわった。

 14年2月、橋下氏は都構想の協議が進まないことを理由に、任期を2年7か月も残して市長を辞任。民意を問うとして出直し市長選に打って出る。橋下が市長辞任を表明した2月3日から告示(3月9日)までは、約1か月。自民党をはじめとする各党は、対抗馬擁立を見送った。泡沫候補相手に再選を決めた橋下の任期は、辞任しなかった場合の2015年12月18日。無駄な選挙であることは、明らかだった。

 15年5月、大阪市民を対象に、大阪市を廃止して五つの特別区を設置する大阪都構想(堺市の離脱で、当初の構想から大きく後退)の是非を問う「大阪市特別区設置住民投票」が実施されたが、維新案は僅差で否決。橋下氏は任期満了で政界を引退していた。大阪で根強い人気を誇ってきた維新だが、都構想実現への見通しは立っていない。

■大阪市長選は新人がリード
 それでも、都構想にしがみつく維新は、再び選挙を道具に使う。大阪知事選の告示は21日、市長選の告示日は24日だ。松井・吉村両人の辞任は今月8日。両人に対抗して、それぞれの選挙に出馬するとすれば、準備期間は2週間前後しかない。知名度で劣る新人が勝利を得るのが、かなり困難な状況であることは確かだろう。

 「いい加減にしろ!」――。そうした声が聞こえてきそうなものだが、大阪の有権者はよほど寛容なのか、慣れっこということなのか、維新の暴走を咎める声は少ないという。統一地方選と重なったことで反発が弱められているのだろうが、それでもやはり批判はあるらしく、直近の情勢調査では自民党が擁立した松井氏の対立候補が4ポイントほどリードしているのだという。

 繰り返されるアンフェア。「維新」を巡っては、「維新の党」分裂後に設立された「おおさか維新の会」(現・日本維新の会)が、余った政党交付金を懐に残すため、「なんば維新」というペーパー政治団体を設立して“ロンダリング”を行っていたことが分かっている。



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