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福岡知事選情勢調査 告示前10日で「68.2対16.1」

2019年3月12日 09:50

武内a.jpg この数字を聞いて、驚く自民党関係者はいないだろう。
 今月9日と10日の2日間に自民党本部が実施したとされる福岡県知事選情勢調査の結果は「68.2対16.1」。先月(16・17日)同様、現職の圧勝を予想させるものだった。
 1か月経っても縮まらぬ差。小川洋知事の再選を支持する勢力と元官僚・武内和久氏を推す麻生太郎副総理兼財務相らのグループによる保守を二分する争いは、21日の告示に向けて激しさを増している。
(写真左が武内氏、右が小川知事)

■7割近くが「小川支持」
 前回の調査結果が「66対14」。それぞれが2ポイントずつ支持を積み増した形だが、差は歴然としており、告示まで残り10日となったこの時期の数字としては、かなり厳しいものといえるだろう。4月7日の投票日までに武内陣営がどの程度詰められるかだが、選挙の最前線から聞こえてくるのは、ため息交じりの声ばかりだ。ある自民党関係者の話。
「挨拶まわりの先で、『あなたは小川さん、武内さん?』と聞かれる。“小川さんです”と答えると『じゃ、いいよ』ですもん。“武内さんをよろしく”とは言えない雰囲気ですね」

 他の立候補予定者も同じような場面を経験しており、「武内さんをよろしく、と言うと露骨に顔をしかめる有権者が少なくない」とぼやく。

 麻生太郎副総理兼財務相のあまりの不人気に、戦術転換を余儀なくされた武内陣営。立候補予定者本人が単独で街頭活動を行うなど、“麻生隠し”に懸命となっているが、いまのところ効果は出ていない。武内陣営の有力支援者も、あきらめ顔だ。
「武内さん本人が、どうのこうのじゃないんだな。麻生さんの評判が悪すぎる。“麻生が担いだ武内、とんでもない”――そんなとこだね。小川支持が7割というんじゃね……。武内さんには気の毒だけど、どう負けるかという話になってきた。負け方次第で彼(武内氏)の将来が大きく変わるから。夏の参議院選挙(に出馬する)という話もあるらしいが、惨敗ならそれも無理になる。出来る限り小川(知事)の票に近づくよう、頑張ってやるしかない。心配なのは、武内陣営が具体的な政策をしっかりと打ち出せていない点。何もかも弱い。人気のある高島(宗一郎)市長が全力で応援しても、情勢は変わらないだろう」
 
 情勢調査のポイント差を証明するように、保守両陣営の動員力にも差がついている。9日、北九州市内で小川陣営が開いた支援組織の設立総会には2,000人以上が参加したが、同日に河野太郎外相を招いて行われた武内陣営の集会に集まったのは500人前後。空席が目立ったとされ、自民党市議団が支援に動く北九州でも、武内陣営に勢いは見られない。ただ、小川氏寄りとみられていた岸田派の山本幸三衆院議員が、武内支持の姿勢を打ち出しており、北九州では若干の底上げが期待できそうだ。

■対照的な二人の候補者
 3期目を目指す現職と、若さが売りのTVコメンテーター。挑戦者は自民党推薦候補だ。しかし、自民党本部が行った3度の情勢調査は、すべて現職の圧勝を予測する内容となっている。1月末が「57対11」、先月が「66対14」、そして今回が「68.2対16.1」。それぞれが支持を積み増ししているが、大差は縮まらない。「小川さんがかわいそう」「自民党が知事をいじめている」――そういった声があるのは確かだが、原因はそれだけだろうか?

 保守陣営を二分して争う二人の出馬予定者は、ともに霞が関官僚出身。麻生太郎と麻生渡前知事に担がれて初出馬という点も共通している。だが、決定的に違うのが経歴だろう。

 小川知事は京大から通産省に進み、特許庁長官、内閣広報官を経て知事になった人物。退官までに中小企業庁、産業政策局、基礎産業局、資源エネルギー庁、近畿通商産業局と様々な部署を経験している。役所の在職期間は30年以上だ。

 一方、武内氏は東大から厚労省に進んだが、在職期間は20年ほど。大半を医療・福祉畑の部署で過ごしている。早期退官して民間の一流企業に再就職し、昨年春からは地元民放局のコメンテーター。政策立案の経験値という点では、小川氏に軍配を上げざるを得ない。「68.2対16.1」という数字は、“判官びいき”だけが原因ではないのかもしれない。

 



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