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「ふるさと納税」返礼品競争の是非

2019年2月28日 09:00

総務省HP.png 「ふるさと納税」の返礼品競争が過熱したことを受け、政府が、「調達費が寄附額の30%以下の地場産品」としてきた返礼品の規制を地方税法を改正する形で強化する。基準を守っていない自治体を制度から除外し、寄附者が税優遇を受けられないようにするのだという。
 ふるさと納税の返礼品を規制するのは、商品券や家電など「30%以下の地場産品」とは言い難い過度な返礼品で寄付を集めるのを防ぐ狙い。制度を利用する自治体は、改正地方税法の成立後に総務省に申し出を行い、同省から適正と認められた自治体だけが対象に指定されることになる。
 ふるさと納税と返礼品について、改めて考えた。

■ふるさと納税は「寄附」
 ふるさと納税は、第一次安倍内閣の2007年に、当時の菅義偉総務大臣(現・官房長官)が官僚の猛反対を押し切って創設した制度だ。応援したい自治体に寄附すると、所得税や住民税の還付・控除が受けられる上、税の使い道を事実上国民が選べるという特徴がある。官僚主導の予算配分より、国民自身が使い道を選ぶという面では遙かに健全な制度だといえるだろう。官僚が反対した理由は、国や自治体が徴収して配分する権利を国民に渡すことに抵抗したためだといわれている。国の役人の中には、「税の公平性の観点から問題があり、絶対利用しない」という職員もいる。

 ちなみに、「納税」と名前は付いているが、あくまでも自治体への寄付。税金ではない。現職の国会議員にも知らない人が多いらしいが、政治家や候補者が当該選挙区内の自治体に寄付することはご法度。全国区の参議院議員や候補者には、ふるさと納税自体が禁止されている。

■規制強化に地方の反発
 規制を強化しようとする政府の方針には確かに一理ある。ルールは守られるべきだ。だが、「30%」という線引きの基準が本当に妥当なのか、「地場産品」を巡って自治体側から「定義が曖昧」との指摘があるように原材料から製造・流通まで複雑に絡む「地場産品」に具体的かつ明確な基準を作れるのか、といった疑問も残る。当然、疑問解消を後回しにした厳しい規制強化に、地方自治体は反発する。

 政府の規制案に対抗した大阪府の泉佐野市は、返礼品とアマゾンのギフト券を送る「100億円還元」キャンペーンを開始(下が同市のHPの画面)。これに総務省が猛反発し、石田真敏総務大臣が会見で「身勝手な考えだ」と批判する騒ぎになっている。

泉佐野市.png

■揺らぐ制度の理念
 返礼品のルールを守った自治体で、寄附額が激減している現状も見逃せない。3万円以上のふるさと納税で地元コシヒカリ30キロなどの返礼品を送っていた福島県広野町では、限定1,000個の返礼品がすべてなくなるほど好評だったという。だが、返礼品の割合が5割を超えていたため総務省の指示に従って返礼品の割合を3割以下に下げたところ、寄附が大幅に減少。大きな痛手となっている。東日本大震災の被災地である福島県の自治体にとって、ふるさと納税の減少は深刻な問題なのだ。日本経済新聞が行ったアンケート調査によれば、7割を越える自治体で寄附額の減少を見込んでいるという。

 ふるさと納税は、どんな小さな自治体にも販路開拓のきっかけを与えてくれる制度でもある。返礼品に指定されたおかげで、地場産品の売り上げが大幅にアップしたケースは少なくない。ふるさと納税に関するサイトも増えるなど、全国的に新たな企画や事業が増えているのも確かだ。

 “過激な返礼品競争”と批判を浴びてきたが、各自治体は赤字を出してまで返礼品を用意しているわけではない。実際にふるさと納税によって税収を増加させている自治体は、マーケティングによる努力をして成果を出しているところが大半だ。そもそも、寄附を受けた自治体が、返礼品を出すか出さないかは自由。返礼品が適切かどうかを決めるのは、寄附を受けた自治体と住民が財政状況から判断すれば良いのであって、総務省が全国一律の規制を行うのは余計なお世話でしかない。

 ふるさと納税は、地方自治体に力をつけさせるための制度だろう。明らかに地場産品であれば、曖昧な30%規制には再考の余地があってもいいはずだ。商品券などの金券を返礼品に使うのは論外だが、返礼品に幅を持たせるのは悪いことではあるまい。安倍政権は「地方創生」を叫んできたが、地方を信じて権限を与えなければ具体化などできないのである。



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