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ゆがむ鹿児島・三反園県政(上) 中央駅西口体育館構想への疑問

2019年2月 5日 09:20

dbcab93bf5ee60df12d0b2f26573207047e2f751-thumb-260xauto-21727.png 昨年、明治維新から150年という節目に、大河ドラマ「西郷どん」で沸いた鹿児島県。私欲とは無縁で時代を駆け抜けた西郷隆盛と周辺人物たちの生き様に注目が集まったが、現代の薩摩隼人は真逆の人間ばかり。最高権力者である県知事とその側近が、無理やり巨大な公共事業を創出し、自らの利権にしようとする動きを見せている。
 代表例が、鹿児島中央駅西口に計画される総合体育館と複合商業施設「ドルフィンポート」周辺の再開発。歪む鹿児島県政の実態を検証する。(写真は、三反園訓鹿児島県知事)

■土建屋県政
 鹿児島では絶対的な存在と思われていた伊藤祐一郎氏が知事選で敗れるきっかけとなったのが、2013年10月から始まったに知事への解職請求(リコール)運動。リコールの理由の一つとして挙げられたのが鹿児島市本港新町にある複合商業施設「ドルフィンポート」を壊し、跡地に総合体育館(スーパーアリーナ)を整備するという構想だった。唐突な計画表明だったことに加え、鹿児島―上海間の航空路線維持のために2億円近い公費を使った職員研修を計画していることも明らかとなり、県民の猛反発を受けた。

 当時の総合体育館構想は、人気の商業施設ドルフィンポートを壊して必要性が乏しい体育施設を整備するという非常識なもの。300億円ともいわれた事業費の巨大さにも批判が集中した。上意下達の伊藤県政に県民の厳しい視線が注がれるようになったところに登場したのが、テレビのコメンテーターとして顔が知られていた三反園訓。2016年の知事選では、川内原発の即時停止と県政刷新を掲げて戦い、伊藤氏を破る。
 
 その三反園が打ち出したのが、新たな総合体育館(アリーナ)構想とドルフィンポート周辺地区の再開発。伊藤知事時代に一つの事業だったものを、わざわざ二つに分けて規模を膨らませ、巨額な税金を投入するのだという。三反園が主張した「県政刷新」とは、伊藤知事時代をはるかに超える土建屋県政の実現だったということだ。県内には、サッカー場や野球場の建設計画もあるのだが、本稿では総合体育館とドルフィンポート周辺地区の整備計画について検証する。

■鹿児島中央駅西口に「総合体育館」
 まず、総合体育館の計画から確認してみよう。県への情報公開請求で入手した資料によれば、建設予定地は鹿児島中央駅の西口。下の図にあるように、県工業試験場跡地(1万㎡)と日本郵便の所有地(約6,000㎡)を合わせた約1万6,000㎡の土地に、総合体育館を整備する計画だ。

鹿児島中央西口 001.jpg 約4,000万円の予算を計上し、民間のコンサル業者などに3件の業務委託を発注して調査を始めているが(下の表参照)、“なぜ鹿児島中央駅の西口なのか”という疑問に答える資料は1枚もない。まさに唐突に、西口での体育館構想が浮上した形だ。

鹿児島業務委託.png

■交通量調査はたった1日
 「西口ありき」で始まった計画だけに、無理が目立つ。鹿児島中央駅周辺で一番の問題となるのは交通混雑。現在でも駅周辺は車が混み合っており、解決策さえないのが実情だ。比較的車の出入りが少ない西口といえども、一時的に多数の人が集まる体育館が建設されれば、より大変な事態になるのは目に見えている。どのような調査を行ったのか県の担当課に確認したところ、建設コンサルが調査したのは1日だけ。満足な交通量調査も行っていないのに、『問題はない』と判断していた。開いた口が塞がらない。

 そもそも、鹿児島中央駅の西口に体育館を整備するという計画は、三反園知事とその周辺が言い出したもので、鹿児島市や経済界などとの十分な話し合いを経たものではない。地元事情通によれば「鹿児島市や経済界は西口の体育館構想に反対」。県の構想に賛成しているのは、利権にありつけそうな一部の県議会議員だけだという。一体なぜ、こうしたバカげた計画に予算がついたのか――。取材していくと、三反園県政の歪んだ実態が浮き彫りとなる。
                                                        (以下、次稿)

 



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