週明け、自民党本部が実施したという情勢調査の数字が、福岡県政界の関係者に衝撃を与えた。
4月の知事選を巡って、小川洋知事の再選を支持する勢力と元官僚・武内和久氏を推す麻生太郎副総理兼財務相らのグループがぶつかり合う福岡県。保守分裂が確実となるなか、16、17日の両日に自民党本部が実施したとされる情勢調査の結果は、小川氏の圧勝を予想させるものだった。
関係者は、この数字をどう見たのか――。
(写真左が武内氏、右が小川知事)
■戦略の再考迫られる武内陣営
「小川66ポイント、武内14ポイント」。自民党本部が16,17日の両日に実施したという情勢調査は、同党の推薦を得た武内陣営を打ちのめす結果となった。告示を1か月後に控えた今の時期に、5倍近くの開き。しかも、1月末に行われた情勢調査の数字「小川57、武内11」より差が開いている。党本部の推薦決定や麻生渡前知事の後援会長就任が、マイナスに作用した格好だ。武内氏のメディア露出が増えた後だけに、陣営の衝撃は大きかった。
「66対14」の現実を前に、ある自民党関係者はこう話す。
「武内が露出を増やせば増やすほど、逆に小川さんへの支持が増えることになるだろう。“失言、暴言の麻生太郎がゴリ押しで決めた武内”という構図が、すっかり固まっているからだ。『小川さんが気の毒』。どこに行ってもそんな声ばかりなんだから。武内は完全に悪役になっている。(武内推薦を強引に進めた)麻生さんと大家(敏志・参院議員)は、どう責任をとるんかね」
別の自民党県連関係者からは「戦略の練り直しが必要」といった声も上がっている。
■冷ややかな野党
独自候補の擁立を決めている共産党を除き、野党各党は自民内の争いに冷ややかだ。いったん小川氏の推薦を決めながら、ゴタゴタを受けて推薦決定を取り消した立憲民主党の関係者は、いずれも冷静にこの数字を受け止めているという。「66対14?まあ、そんなもんでしょう。うち(立憲)の関係者は、7対3とみてます。もちろん小川知事が7。所属議員は、ほとんど小川支持ですから」(同党関係者)。
麻生財務相の主地盤である飯塚市・嘉穂郡から選出されている吉村敏男県議が県連代表を務める国民民主党県連。「自主投票」になっているが、過去2回の知事選で小川氏を支援した同党の県議たちは大半が小川支持となっており、明確な武内支持は「一人もいないんじゃないか」(同党関係者)というのが実情だ。「数字は聞きました。ずいぶん離れましたね。こと知事選に関しては、もう結果が出ていると言ってもよい。地方議員は自分の選挙で精一杯。わざわざ有権者から嫌われる候補者を推すバカはいないでしょう。武内さんは“名誉ある撤退”を考えるべきかもしれませんが、やっぱり退かないだろうなぁ」(同)。
■洞ヶ峠の自民福岡市議団
「やっぱりそんな状況か……」。数字を聞いた自民党のある市議会関係者は、ため息交じりにこうつぶやいた。同党福岡市議団は、知事選対応をどうするか、結論を出せずに迷走中。いったん市議団会長が「自主投票」を公言したが、その直後に取り消すなど態度が定まっていない。
「このまま統一地方選に突入する。我々が(武内氏を)推薦してもせんでも、結果は同じ。この時期に66対14じゃ、話にならんでしょ。有権者が、武内推薦の過程に嫌悪感を覚えている証拠なんやから。武内をやらな公認を外すなどという話も聞こえてくるが、武内をやって自分の票が逃げたら元も子もない。大義名分のない知事選は他人事。我々は、洞ヶ峠でよかろうもん。麻生さんと大家(敏志・参院議員)が勝手に走ればいい。」(前出の市議会関係者)。
福岡県知事選の告示は3月21日(投開票は4月7日)。どこまで小川陣営に迫れるか、麻生元総理の力が試される1か月となりそうだ。