4月の知事選を巡って、小川洋知事の再選を支持する勢力と元官僚・武内和久氏を推す麻生太郎副総理兼財務相らのグループがぶつかり合う福岡県政界。保守分裂が確実となる中、自民党の推薦を奪い取った形の武内陣営に、早くも足並みの乱れが生じていることが分かった。
自民党県議団所属の議員は41名。知事選の候補者選定に関する本音を探るためアンケートを実施したところ……。
■造反者が複数
HUNTEERは先々週、自民党県議団所属の議員41名全員に、知事選に関するアンケート用紙を郵送した。質問事項は以下の通りだ。
1、公募で武内氏を選んだ県連の候補者選定過程について、どのように考えておられますか?
ア 何の問題もない
イ 問題がある(問題があるとしたら、具体的に)
ウ 答えられない2、1で「ア 何の問題もない」と答えた方にだけお尋ねします。小川洋知事の、どのような点が推薦候補に相応しくないとお考えですか?
3、武内氏の推薦を強力に進めた麻生太郎副総理兼財務相の行動について、どのようにお考えですか?
ア 何の問題もない
イ 問題がある(問題があるとしたら、具体的に)
ウ 答えられない4、貴殿は、知事選でいずれの候補を支持されますか?
アンケート発送直後、知事選に関する取材やアンケートへの対応を控えるようお達しが出たことで、回答してきたのはわずか10名。しかし、「無記名も可」としたため、同県議団にとっては表面化させたくない実態をさらけ出す結果となっている。回答書への主な記載内容を、「小川支持」と「武内支持」に分けて下にまとめた。
党の方針は「武内推薦」。名前を明記してこの方針を是認したのは吉松源昭(糟屋郡)、川端耕一(門司区)、松尾統章(八幡西区)の3人の県議だけで、あとの7名は無記名だった。無記名の内の4名が「武内支持」で、10人中7名が「武内支持」ということになる。
一方、無記名で「小川支持」を打ち出した県議が3名。いずれも推薦決定過程に疑問を呈しており、事態を主導した麻生氏に批判的な意見だった。回答に出てくる「私怨」「遺恨」という言葉は、“小川降ろし=武内氏の推薦”が、麻生氏の個人的な恨みに起因しているとの見方を示したものだろう。
■面従腹背
県政界の関係者が最近よく口にするのが「面従腹背」。たしかに、少ない回答の中にも、そうした状況をうかがわせるものがある。“知事選でいずれの候補を支持されますか?”という問いに、「武内和久」と明記した7人の内、無記名の3人は“県連の候補者選定過程”や“麻生太郎副総理兼財務相の行動”について、「問題がある」を選択しているのだ。
「知事選に対しては、有権者の自民党に対する厳しい状況を感じる結果になっている」「なぜ小川ではダメなのについて、きちんとした説明がなされていない」「武内を選んだ県連の決定は明らかにおかしい」――。「武内支持」と明記しながら、この3人の思いは、取材で感じる有権者のそれとほぼ同じ。党人として決定に従う姿勢を見せながら、納得はしていないことが分かる。知事選は県議選と同じ投票日。疑問を抱いた県議らが、真剣に武内氏を支援するとは思えない。ある県議会関係者は、こう解説している。
「面従腹背の方が多いんだよ。まともな人間なら、武内推薦を決めるまでの過程がおかしいことは分かってる。どうみても麻生さんの無理押し。加えて、(県連)選対委員長の大家(敏志・参院議員)の傲慢さには、誰もが辟易している。アンケートの回答に出てくる大家も中村(明彦県議・小倉北区)も麻生の子分。(アンケートで)武内支持を明確に打ち出している吉松も松尾も川端も、そうだろ。ばかばかしくて、付き合っていられない。
失言や暴言を繰り返してきた麻生さんを見てれば分かるが、彼には世間の常識が通用しない。知事選は、小川が強いに決まってる。そんなことは、ほとんどの県会議員が理解しているよ。麻生さんは『負けてもいいから武内で(選挙を)やらせろ』なんだから……。言いたいことは山ほどあると思うよ、みんな」
「武内支持」が大勢を占める自民党県議団だが、アンケート結果でも明らかな通り、造反者がいるのも確か。14日には、県議会の代表質問で“踏み絵”を踏まされた福岡市中央区選出の岳康宏県議が、退会届を提出する騒ぎとなっている。ちなみに、岳氏は今回のアンケートに回答しておらず、新たな造反者が出るとすれば、それ以外の県議ということになる。