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麻生財務相の“四面楚歌”

2019年1月24日 07:25

ba5ffcc55c90ef8caa15a0e641083beda34eeecc-thumb-200xauto-24279.png 今年4月に予定される福岡県知事選挙の推薦候補者選定を巡って、麻生太郎副総理兼財務相が四面楚歌の状態に陥りつつある。
 武田良太衆院議員や山崎拓元自民党副総裁など小川洋現知事を推す勢力と、テレビコメンテーターで元官僚の武内和久氏を県連の候補として選んだ麻生陣営の争いは、「推薦」の決定権を持つ党本部の裁定を待つ展開に――。情勢調査は「小川57、武内11」という結果だったとされ、麻生派以外の国会議員や県議らは冷ややかな目で推移を見守っている。それでも「今月28日に武内の党推薦が決定する」と強気の構えを崩さない麻生氏。元総理が暴走する理由とは……。

■危うくなった「28日推薦決定」
 「28日」に武内氏の推薦が決定するという麻生氏の主張には、何の根拠もない。今月27日は山梨県知事選の投開票。選挙戦は、自民、公明が支持する長崎幸太郎元衆院議員と立憲民主、国民民主両党が推薦する現職の後藤斎氏による事実上の一騎打ちとなっており、両候補の競り合いが続いている。自民党幹部によれば、この山梨県知事選の結果を待って他の選挙の方針を決める予定で、28日にいきなり「小川か武内か」の結論が出るわけではないといい、来月10日に予定される党大会まで選考がずれ込む可能性もあるという。

 「28日に武内推薦が決まる」という麻生氏の主張が崩れた場合、どうなるのか。ある自民党県連関係者は、次のように話す。
「北九州市長選も、県知事選も、そして夏の参議院選挙でも候補者擁立に失敗したことになる。麻生さんの求心力は著しく低下するだろう。それでは困るから武内を推薦無しでも知事選に出すと言っている。負けても知名度が上がるから、無所属でも参院選が戦えると考えているんだろう。世の中はそんなに甘くないのに……」

 別の県連関係者は、28日に武内氏の推薦が決まらなかった場合のことについて、こう語る。
「麻生さんが、『党本部の武内推薦は大丈夫だ』というから、県連はここまで付き合った。28日が来月10日以降に延びたとしても、党本部が“小川知事推薦”ということになれば、麻生さんに責任を取ってもらわなければならない。県連と党本部の対立を煽ったのは麻生さんであり、みんな元総理の面子を立てただけ。県連としては党本部の決定に従うのが筋で、それに逆らって武内を支援する議員はいないだろう。党本部が小川知事の推薦を決めるということは、麻生さんが(小川氏を推す)菅(義偉)官房長官や二階(俊博)幹事長との権力闘争に敗れたことを意味する。中央での求心力も落ちる一方となるだろう」

■孤立する麻生
 老いた実力者のわがままが自民党組織を振り回している構図だが、じつは福岡県内でも麻生氏は孤立している。麻生派以外で武内氏を推す派閥はないのだが、地元でもその横暴ぶりに批判の声が強まっており、県医師会や農政連は小川氏支持。麻生氏にとっては、厳しい事態となっている。そもそも、福岡県内11選挙区で議席を持つ自民党議員のうち、麻生派は本人を含めて3人しかいないのだ(下の表参照)。

選挙区.png

 石原派は小川知事を支持する山崎元副総裁が創業した派閥。岸田派の実質的なオーナーは、やはり小川支持の古賀誠元幹事長だ。反麻生の急先鋒である武田氏と6区の鳩山二郎衆院議員は、早い段階で「小川支持」を打出した二階幹事長の派閥。9区の三原朝彦衆議院議員も小川支持である。ぞれぞれの代議士と関係の深い系列県議が、麻生氏の言いなりに「武内支持」で動く可能性は皆無に近く、仮に武内氏が無所属・無党派で知事選に出馬しても、表立って支援するのは少数の国会議員と県議ということになる。中央でも地元でも孤立する麻生氏――。まさに「四面楚歌」といったところだろう。老いた権力者が、晩節を汚す姿は哀れでもある。
 
 



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